事件-13
幸い、いい感じでお酒が入って、
気分よく駅からアパートまで歩いた。
気温も暖かくなって、何か話しかけたい気分だし。
それに、何となく手持ち無沙汰で、
後ろを振り返って志賀くんに話しかけてしまった。
無視されたら、されたでもういいやって。
「志賀くんってさあ、
こうやって女の子送ることよくあるの?」
「いいや」
無表情。
「じゃ、今日みたいのは珍しい?」
「初めて…」
無表情2。
「そうなの?じゃあ、お礼言わなきゃね」
「いいよ。そんなの。つっかえるから早く歩いて」
終了…
絵梨は、営業の小野君と付き合っていて、今日の飲み会も、絵梨と小野君が中心になって開いてくれた。
私だって、小野君と西田君ともお酒の席では、よく話す。
でも、志賀君とは?記憶にない。
本当にない。
「志賀君と話したの、
ほとんどなかったっけ記憶がないな。
志賀君てさ、話すのは、苦手なのかな。どうしてかな?」
同級生の女の子に話しかけられるシチュエーション。
「別に、どうでもいいし」
さようでございますか。
「どうして?話せばいいのに、楽しいじゃない」
笑顔が引きつる女子学生
「俺のことは、いいから真っ直ぐ歩け」
「はい…」終了…
じゃあ、なんで送るなんていうのよ。
話しかけたことを後悔した私。
明かりの消えた商店街を歩く。
無言で。一列に並んで。
途中で横道にそれて、
住宅街をしばらく歩くと、アパートが見えてくる。
よかった。着いた。




