事件―12
なんか変な感じだ。志賀くんが、
自分から何かするっていい出すなんて。
私達は、電車に乗り込むと、横掛けの席に並んで座った。
「ありがとう」
「ああ…」やっぱり、
志賀くんは余計なことは言わない。
一緒に電車に乗っていたのは、たいした距離じゃないけど、彼はやっぱり最後まで無駄なことはしゃべらないで、私の隣で黙って静かに座っていた。
とっても気まずいから、何でもいい…相槌でもいいから何か言って欲しいな…なんて、横目で見ながら、駅に着いた。
「あの…志賀くん」
スーツの端を引っ張ろうと思ったのに、志賀くん歩くの早すぎて、失敗。
ここで、大丈夫だからって伝える前に、彼は、さっさと駅の改札を出てしまった。
私が出てくるのを、早くしろという目で見て、改札の外で待ってる志賀くん。
このまま人の流れにまぎれて、見逃してくれないかな。
無理だ。出てきたのは十人もいない。
「どっち?」
志賀くんが、口を開いたのはそれだけ。
私は、無言で家の方面を指さす。
何度も話しかけるのが、面倒になって、
私を先に行かせて後を付いてくる志賀くん。
何で一緒に歩いてるのか分からなくなった。
なんか話しかけたほうがいいかな。
じゃないと、変に見えるよね。
知り合い同士、なのに無言で縦に並んで歩くって。




