対立8 愛になーれ!!
〔明日はバレンタインデー。意中のあの方に絶対本命をあげなきゃ〕
多荼奈の一途な思いは進路を決める意思とそれとなく似ていた。
一方、鏡嶽では。
クリナが何か手作りの食事を用意していた。厨房を覗いたフェンが首を突っ込んだ。
「おい、サイボーグごときのクリナが一体何を作ってやがる」
「明日には判明します。しばしお待ちください」
「くだらん!! ヒト真似をしてさ、女型だからと何うかれてるのだ」
「あなた様には理解不能でしょうが、わたくしは、これが仕事の一貫です」
「だーっ。判りたくない!!」
翌日。
「マスターフェン、昨日言ってた秘密のものです。包装紙を剥いで見てください」
「一応は、受け取ってやった。確認は判らんがな。それよりも、また地上に降りるから、留守を頼む!!」
「早く食べろよ。馬鹿」
「何か言ったか?」
「早めに確認すること……以上」
「おかしなクリナだ」
一方、多荼奈は本命の相手に手作りのチョコを渡す準備中だった。
相手のシルエットを確認すると、飛び出して行ったのだ。
だがその瞬間……タイミング悪く大敵のフェンが出現しだした。
「おのれ!! 人が渡すタイミングを邪魔するな!! フェンごときの
奴なんていなくなれば良いのに~」
「一か八かのカケをしようぞ。フフフフ……」
「気味が悪い奴っ」
「タタナ!! 好きだ!! 自分の嫁になってくれ!!」
「どさくさ紛れに敵がコクるたぁ、何かの作戦? 策略か!?」
「さあて、弱ったところで、タタナを鏡嶽まで連れてやる。やっと捕まえた!!」
「え!? あたし……『コイツ』に捕まっちゃうの!? 嘘ーっ!!」
ラグビーボールを抱えこむようにフェンに捕まった多荼奈。
もがいても離れられない。
万事休すのところ、包装紙のリボンらしきものを発見した少女。
リボンの紐を引っ張ったら、包みからこぼれた愛のチョコ……いや、錬金調合で失敗したガマガエルぽい怪生物が現れた。
「キャアアアア!! カエル嫌い!!」
その時、多荼奈の能力は溢れだして抱えたフェンの腕が千切れたようになり解放できた。
空中から跳びはねて陸地に着地した彼女は、公園に置き去りにしたバレンタインチョコを持って……意中のカレに渡そうとした――だが、フェンと絡んだせいで見落としたのだった。
気を取り直そうと自分んチに戻り、チョコをヤケ食いした多荼奈だった。
一方、クリナは、チョコと失敗した錬金調合生物と間違えて渡したことをガッカリしたらしい。