対立5 クマになーれ!!
〔自分は、いつの間に寝てしまったのだ。寝ている時間が長かった……その間に天敵が力を付けたら魔視効果が出来ぬまま、魔窟星に帰れなくなる。早く、あ奴を倒して地球人の嫁にして持って返ればな……〕
クリナが治療し看病したお陰でフェンは、早く回復したのであった。
「クリナ、すまぬな。ん? お前、所々痛んでいるじゃないか? 修理は良いのか?」
「マスターフェンが休まれている頃、天敵がパワーを上げてる模様と察し、索敵しておりました」
「馬鹿野郎。変な気は起こすな!!」
「申し訳ございません」
「強靭の爪と牙を開発してやる。次は、負けぬぞ。タタナ!! ハハハハ……」
多荼奈は、猟銃マニアの銃器コレクターの針生潤と出会った。
同学年同士の学生で狙った獲物は逃さないタイプだ。
「針生くんチって、銃器だらけでも、何か悪くないわ」
「美人の多荼奈さんに言われると、照れちゃいますよ」
「猟銃の撃ち方、ちゃんと教えてね」
「ああ、判ってるよ!!」
銃器とは言うもののBB弾とペイント弾だから危険性はない。
「玩具のでも、BB弾は威力あるの?」
「本物とは断然違うって。まあ、射撃練習してみてよ」
腕前の凄さに見とれてOKサインをもらった多荼奈。
一応、長物包装用の袋とセットで借りて持ち帰ったのだ。
某月週末。土曜日は休校なので、多荼奈は山歩きがてら例のモデル猟銃を用意してきた。
ガサゴソと草むらが騒ぐので、クマかと思えば、例の天敵だったのだ。
「なーんだ。クマじゃないんだ? なんだ女ったらしだよ……」
フェンの脳裏が『なんだ女ったらし』の言葉が繰り返しよぎった。
「なめるな!!」
「ん!?」
「なんだとはなんだ。なんだとはっ」
何となくモデル猟銃を構えもった多荼奈。
「女ったらしと言ったんだよ。なんだと言って、何が悪いのよ!!」
「タタナ、言って良いこと悪いことあるだろー!! ワイルドクロウー!!」
最初の一波も虚しく、射撃出来ずに左のこめかみをクロウ攻撃で被害をこうむった。
「フフッ。どうやら女ったらしは本当らしいわね」
「ああ、そうさ。女ったらしのどこが悪い。自分はヘンタイだよー!!」
「開きなおるな、超どヘンタイ!!」
言いながら射撃を成功させた。だが、BB弾だと効果は薄かった。
「なんじゃこりゃ? 玩具だったのか!?」
「こうなったら……クマになれ!!」
「ウォー、ウォー!!」
近くの樹木をワイルドクロウで伐採後、自分の方に切り倒されて頭が激突されたフェン。
「クマ撃退……じゃなくて、フェン撃退。ああ、気持ち良いなぁ♪」
多荼奈は、モデル猟銃をしまって森林を下った。
そして、針生に猟銃を返しに行ったという。