私はとても幸せになりました。
ジャンルを詩にしましたが、正直詩なのかも不明な自由すぎる形態の詩です。
私は一番幸せな人間です。
私のもとには苦しんでいらっしゃる人々がいます。
私は一番幸せな人間です。
同情する余裕があるのですから、大変幸せなことなのです。
始まりは私が生まれたことでした。
真っ白い病室で私だけが幸運でした。
私は24時間つきっきりで惜しみのない愛を貰って育ちました。
ある日、学校で親がいない子と話しました。
「あなたは幸せだね」
彼女はそう言ってくれたのに、私は何も言うことができませんでした。
私は一番幸せな人間です。
今まで悲しいことに合ったことがありません。
私は一番悪い人間です。
ただ頷くこともできない人間です。
それから幾年が経ちました。
私はいまだに幸せに暮らしておりました。
いじめられて泣いてる子と出会いました。
私は大丈夫、大丈夫とその子を慰めました。
「私はあなたみたいに強くないんだ」
そうその子は言いました。
失恋をして家でふさぎ込んでいる子を励ましました。
「あなたは悩みがないからいいよね」
そうその子は怒って言いました。
私は一番幸せな人間です。
誰よりも強かったんです。
私は一番強い人間です。
胸を張って歩いています。
やがて私の足場は崩れました。
信じていた人に裏切られ
たくさんの罪を背負って
食べるものにも困りました。
ぼろ切れを着るようになり
その日の糧をゴミの中から得て
汚れた水を飲み干しました。
日が昇り、光を浴びて動き出し
日が沈み、闇と一緒に眠ります。
この手は固くなり
この髪はすりきれ
この顔はこけていき
痛みは私と共にあるのでした。
さらりと手のひらをふるえば
もはや皮膚を撫でるだけで
ヒリヒリとした痛み
毛の逆立ったときのような感覚。
かつての方々は立派な服を着ていらっしゃいました。
大丈夫かと、優しく手を差し伸べてくださいました。
「悲しいでしょう」
「痛いでしょう」
「苦しいでしょう」
「辛いでしょう」
「助けてあげる」
優しく微笑んでそう言ってくださった。
そこでやっと
私は自分が悲しいと思っていることに気づいたのです。
今、私は椅子に座っています。
もう少ししたら、買い物に出かけようと思っています。
昨日はお仕事で街に出かけました。
そこでかつて言葉を少しだけ交わした方に会いました。
その方はとても暗い目をしていました。
「あなたは幸せだね」
私は、はい、と答えました。
私は一番幸せな人間です
私の下には私のせいで苦しむ人々がいます。
私は一番幸せな人間です。
この心にあるのは同情だけです。
私は幸せな人間なのです。
だから胸を張って言えるのです。
あなたたちはとても可哀相だと。