知らない子
「…こんな時間にこんなとこにいて、怪しい以外になにを考えればいいのかしら…」
「いや、そのほら…お祈り?」
「放課後でいいじゃない」
「まぁ、そうなんだけどさ」
「それよりさっさと姿を見せなさいよ」
エルスの声に渋々と祭壇の影から姿を現したのは、一人の男子生徒だった。
薄暗いなか、エルスは目を凝らしその男子生徒をつま先から頭まで舐めるように観察した。
そんなエルスの刺さるような視線に男子生徒はただ苦笑いしていた。
「…で、誰なの?」
「え…ちょ、俺の事知らない感じか…えー、まじか…」
「そもそもよく見えてもいないのに判断できるわけないじゃない」
「ん?じゃあさっきの刺さるような視線は?!」
「不審者を睨んでただけよ」
「ジーザス」
ガクリと膝から崩れ落ち、あからさまに沈み込む彼をエルスは楽しそうに見つめていた。
全ての発言は全てその場の思いつき、要は冗談であるがエルスの場合仮面のように笑顔が張り付き表情に抑揚がないためほとんどの人が間に受けてしまうのだ。
エルスもエルスで、それを自覚しており時折こうして”遊んで”いるのだ。
項垂れて居る彼の元へ歩み寄り、その足元にランプを置き視線だけを下に向けた。
「グレッグのルームメイト、アンドレ…」
「っ…やっぱり知ってたんじゃないかぁ!」
「あら、知らないとは言ってないわ」
「なにこの子…悪魔なの?」
もはや半泣きのアンドレにエルスはまたもや楽しそうに微笑みかける。そしてゆっくりと屈めばアンドレと目線を合わせ、潤んでいる瞳を見つめて優しく言い放った。
「メンタル、弱いのね」
その言葉にアンドレの表情は引きつり、固まってしまった。聖堂にはエルスの小さな笑いだけが響いていた。
公開可能な情報
アンドレ
グレッグのルームメイト
その他不明