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緊張

「…ところで、さ」


ミルクティーを半分くらい飲み終えた辺りだろうか、今まで静かに香りや味を堪能していたアリシアが唐突に口を開いた。

きょとんと小首を傾げるエルスだったが、じっとこちらを見つめているアリシアに僅かながらに恐怖を覚え眉をひそめる。


少しの重い沈黙。

心臓の鼓動の音が嫌に大きく聞こえる。


エルスは困った顔でアリシアのことを見つめていたが、アリシアの表情は強張りなにか悩んでいるようだった。


そして沈黙を破ったのは真剣な表情へと変わったアリシアだった。


「あのさ…エルス、あんた…これ…」


一言一言がとても言い辛そうに区切りながらも、懸命に何かを問おうとするアリシア。

そんなアリシアが指差したのはエルスの制服、かと思いきやアリシアの指はすっと左に逸れ戸棚の小瓶へと向けられた。


「どっから手に入れてんのよっ?」


「はい?」


先程とは打って変わって、明るい声で問うアリシアに今まで何に緊張していたのかと馬鹿らしく思えたエルスは小さく溜息を吐いた(ついた)


「茶葉ならいつも…」


そうエルスが言いかけた次の刹那、開いていた出窓から1匹の黒猫が入り込んできた。

その黒猫は小さな茶色い紙袋をくわえていた。


「え、猫じゃん。こいつなに持って…?」


突然の訪問者にアリシアは目を丸くする。

エルスはクスクスと小さく微笑みながらその黒猫に近づく。すると黒猫はエルスの肩にひょいと乗っかり近付けられた彼女の手に紙袋をそっと置いた。


「この子が、茶葉を持って来てくれるのよ」


「へぇ…猫、すごいんだねぇ」


数回頭をアリシアに撫でられた黒猫は首輪の鈴を鳴らしながら外へと消えて行った。


「あの子、可愛いねー。んでんで?何持って来たの?」


「あ、聞くの忘れてたわ…でもきっとセイロンね。切れてるって言ってあったから」


「猫に伝わるもんなの?」


「あの子には伝わってるのっ」


にっこりと得意げな笑顔を浮かべ戸棚の中の空いていた小瓶に茶葉を移し替えるエルス。


「そっかそっか」


まるでお伽話を聞いたかの様に信じてない様子で笑ながら頷き、アリシアは少し冷めてしまったミルクティーを一気に飲み干した。

そして一度、大きく深呼吸をしエルスを見据えた。


「エルス」


「なに?」


先程より落ち着いた声色であったが、エルスは気にする事なく茶葉を移し替える作業をしていた。

しかし、


「なんであんたの制服、黒くなってるの?」


その静かな問いに、部屋の空気が張り詰めた。


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