音楽に国境はなし
此処は東京都新宿区のとある繁華街のとある店。深夜になってシャッターが閉まっている。その店先でギターを掻き鳴らしている男がいた。
彼の名前は木村 春樹。オクスフォードブーツにデニムパンツをロールアップし、パーカーの上にダウンベストを羽織っている。少し長めの髪を振り乱し、彼は自分の世界に浸っている。
(ゴキゲンだぜ!)
彼は気が付いていない。ご機嫌なのは彼だけであることに。そんな彼の演奏が佳境に入り盛り上がりも最高潮といった時、一台のトラックが突っ込んで来た。後に酔っ払い運転によるものと報道されるが彼が知る由もない。
勿論、即死である。もし、彼がこの事故で九死に一生を得ていたら、こう言っていたに違いない。
「ロックだぜ」
と。
*
気が付けば主人公こと木村 春樹は白く妙にふわふわした何かの上に、レスポールギターのネックを握ったまま立っていた。彼は少し、辺りを見回してみた。
青い、地面は白い。ふわふわ。青い。なんか青い。まるで絵本などで出てくる天国のようなところだ。
(ハッ! シィ~ット! とうとう神になっちまったぜ! )
彼の思考は何処までもゴキゲンだった。そんな彼の耳に小気味の良いビートと歌声が届いてくる。興味が惹かれ音のするほうへ歩いていく。
(ボーカル一人。打ち込みか?)
音の源に一人の男が立っていた。上裸にレザーパンツ。彫の深い英国顔の紳士。彼が春樹を一瞥するとマイクを握り占め歌いだした。
「メイディンヘブーン。メーイディンヘブーン ウェルカムトゥーハールキー」
春樹にはそのボーカリストに見覚えがあった。
「ここは天国だよん!アナザーワンバイツ! 」
・・・・・・フレディさんやんけ。
彼は瞬時に色々理解した。それはもう色々と。やけに上手な歌が妙に腹が立った。




