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同じ土俵には立ちません

作者: こうじ
掲載日:2026/09/12

「聞いた? アンジェリカ」


「え、なんの話?」


「貴族学院の卒業記念パーティーで王太子殿下が婚約破棄を宣言したそうよ」


 それを聞いて私は一瞬だけ指を止めた。


「へぇ、それでどうなったの?」


「それがね、王太子殿下の婚約者と言われていたご令嬢はその場にいなかったんだって、しかも婚約もしてなかったらしいのよ、王太子殿下とその周辺が勘違いしてたみたいなんだって、自分の婚約なのに気づかなかったのかしら……。 その後入場された国王様に怒られて兵士に連れて行かれたんだって、その後は音沙汰は無いけど」


 どうなるのかなぁ、と友人は言っていたけど多分、表舞台には出てくる事は無いだろう。


 そして内心私はホッとしていた。


「王太子殿下はなんで婚約破棄しようとしたのかしら?」


「なんでも婚約者と思っていた令嬢の妹に恋したんだって」


 やっぱりか、と思った。


 直接会った事は無いけど予想通りだった。


 きっと今頃、元実家は大変な事になっているだろう。


 まぁ縁を切った私には関係ないけど。


 そう、王太子殿下の婚約者とは私アンジェリカの事だ。


 でも、それは過去の話で私はもう公爵令嬢では無いし平民である。


 どうして平民になったのか、と言えばお父様が再婚しようとしたから、というのが大きな理由である。


 お母様が亡くなった直後にお父様は再婚を宣言した、私にとっては受け入れられない事だった。


 話し合いはしたけどお父様の決断は揺るがなかった。


 なんでも長年の相手で向こうも未亡人となりお互い独り身だから問題は無い、と言っていたけど再婚相手は商家出身で貴族ではない。


 法律上はギリギリ許可はされているが私から見ればずっと私とお母様を裏切っていた訳だから到底受け入れる事は出来ない。


 なので、私は『お父様がどうしても再婚するのであれば私と縁を切ってからにしてください』と言ったのだ。


 そこから私は縁切りの準備を始めた。


 流石にすぐには無理なのでまずお母様の実家である伯爵家に相談をした。


 私の話を聞いたお祖父様とお祖母さまは勿論激怒、私の身元保証人になってくれる事になった。


 一番の問題点はやはり王太子殿下との婚約だった。


 王太子殿下との関係が良ければ私も籍を抜けるなんて考えはしなかったけど、王太子殿下は私に一切興味が無かった。


 ただ、一貴族から王家に婚約の解消をするなんて流石に出来ない。


 どうしよう、と悩んでいるのがわかったのか王妃様とのお茶会で婚約についてどう思っているのかを聞かれた。


 黙っていても仕方が無かったので私は胸の内を全て打ち明けた。


 叱責される事を覚悟していたが王妃様は私に同情してくれた。


『自分も似たような経験をした事があるのでわかる』と言ってくれたので王太子殿下との婚約の話も一旦保留という形にしてくれて将来的には解消とする、という話にしてくれた。


 私には問題は無く王家の都合、という事にしてもらった。


 そして独り立ちが認められている15歳の時に私は公爵家から籍を抜いた。


 当然、お父様からは反対されたが既に書類は提出済みで承認もされているし今更何を言われても問題は無い。


 貴族令嬢では無くなったので私は貴族学院には通える訳は無く庶民が通う国立学園に通った。


 卒業したら役人として働くつもりである。


 勿論、再婚相手とその娘には会ってはいない。


 わざわざ同じ土俵に立つ事は無いのだ。

 

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