表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
身の程知らずの王座~妻の実家を私物化したクズ夫の末路~  作者: 猫塚ルイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/20

第6話

「美咲、本当にいいんだな?」


マンションの管理室で、従兄の健一がモニターを指さしながら私に尋ねた。


画面には、浮き足立った様子でデパ地下の紙袋を抱えてエントランスを通り過ぎる


透の姿が映し出されている。


「ええ。もう十分我慢したわ。彼が私の家を、自分の浮気の拠点にしようとしているのを見過ごすわけにはいかない」


私は冷たい紅茶を一口飲み、手元のスマホをチェックした。


透のスマホから「リカ」へ送った偽の招待状。


彼女は「今向かってるよ♡」とノリノリで返信してきている。


19時ちょうど


オートロックの呼び出し音が鳴り、透が鼻歌交じりに解錠する。


隠しカメラの映像に切り替えると


透が玄関でリカを迎え入れ、手慣れた手つきで彼女の腰を抱き寄せる姿が映し出された。


「わあ、やっぱり素敵なお家!透さん、本当にかっこいい暮らししてるよね…羨ましすぎる」


「はは、まあな。この辺じゃこれくらいのスペックの部屋は当たり前だよ」


透は、私がパート代を削って磨き上げた大理石のカウンターに


これまた私の食費1ヶ月分はするであろうヴィンテージのワインを置いた。


「えー、すごい!これ、一本10万円くらいするやつでしょ?」


「リカのためなら安いもんさ。あ、そこの美咲…じゃなかった、『家政婦』の作った汚い飯は捨てていいから。今日は一流シェフのケータリングを頼んである」


モニター越しに聞こえてくる彼の言葉。


私の料理を「汚い飯」と言い、私を「家政婦」と呼ぶその声に、怒りを通り越して乾いた笑いが出た。


彼は、リカに見せつけているそのワイン代が


実際には消費者金融からの借金で賄われていることなど微塵も感じさせていない。


「透さん、このマンションのオーナーさんとも仲良しなの?」


「ああ、親友みたいなもんさ。俺にずっと住んでてほしいって泣きつかれててさ、更新料もタダみたいなもんだよ」


嘘だ


全部、真っ赤な嘘。


父が善意で安くしていた家賃を、自分の実力だとすり替えて語るその厚顔無恥さ。


「……そろそろね」


私は立ち上がり、健一に目配せをした。


健一は頷き、管理会社としての「正規の手続き」を開始した。


私はエレベーターに乗り、15階へ向かう。


心臓の鼓動は静かだ。


ただ、手にしたスマホの録音ボタンを押し、ドアの前に立った。


中からは、楽しげな笑い声とグラスの触れ合う音が聞こえてくる。


私は、自分の家であるこの部屋の鍵を、ゆっくりと鍵穴に差し込んだ。


カチャリ、と無機質な音が響く。


「……誰!?って、美咲!?なんでお前がここに……!」


ドアを開けた瞬間の、透の顔。


獲れたての魚のように口をパクパクさせ


隣に座る派手な女を隠そうともがき、ワインを零すその無様な姿。


「あら、楽しそうね。……透さん、そのワイン代、まだ振り込まれていない督促状がカバンに入っていたけれど、大丈夫かしら?」


私の登場に、リカと呼ばれた女が怪訝な顔で私と透を交互に見つめる。


「え……家政婦さんじゃ、ないの?」


「いいえ。私はこの男の妻。そして───」


私は、管理会社から正式に発行された『立ち退き勧告・最終通知』をテーブルに叩きつけた。


「このマンションを管理している、オーナーの娘よ」


一瞬で部屋が静まり返る。


透の顔から、みるみると血の気が引いていくのがわかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ