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身の程知らずの王座~妻の実家を私物化したクズ夫の末路~  作者: 猫塚ルイ


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第17話

刑務所の面会室


「……母さん、来てくれたのか。よかった……」


透が涙を浮かべて顔を上げたが、そこにいたのは、彼を憐れむ母親の姿ではなかった。


父の会社の顧問弁護士と、憔悴しきった表情の母親。


そして、二人の間に置かれた一通の書類。


「透……私、もうあんたの母親をやめることにしたわ」


「え……?何言ってるんだよ、母さん。俺がここを出たら、また二人で……」


「無理よ。あんたが作った借金、そして私の家を担保にしてたせいで、私はすべてを失った」


「それに今、私は美咲さんの実家が運営している支援施設に身を寄せているの。……美咲さんは、私に生活の場を与えてくれた。あんたが壊した人生を、あの子が拾ってくれたのよ」


透さんは絶句し、目を見開いた。


自分が「無能」と見下し、「家政婦」と呼んだ女が、自分の母親の命を繋いでいる。


その事実は、透さんの歪んだプライドをこれ以上ないほどに踏みにじった。


「佐藤さん、本日伺ったのは、お母様との親族関係を事実上断絶する手続き、および、お母様からあなたへの『扶養義務の放棄』に関する最終確認のためです」


弁護士が淡々と告げる。


それは、出所後に透さんが母親に泣きつき、寄生する道を完全に断つことを意味していた。


「……待てよ!じゃあ、俺はここを出た後、どこに行けばいいんだ?住む場所も、家族も、金も……何もないじゃないか!」


「それはご自身で考えられるべきことです。あなたが美咲さんに強いた『月5万生活』、あるいはそれ以下の生活が、これからのあなたの現実です」


弁護士はそう言い残し、立ち上がった。


母親は一度も振り返ることなく、弁護士と共に部屋を出て行った。


「母さん!母さんッ!! 待ってくれ! 俺を見捨てないでくれ!」


透さんがアクリル板を叩き、叫び声を上げる。


しかし、重厚な鉄扉が閉まり、静寂が訪れるだけだった。


独房に戻された透さんは、冷たい床に膝をついた。


これまでの人生、彼は常に誰かの上に立ち、誰かを利用することで自分の価値を証明してきた。


だが、今、彼の手元には何もない。


高級時計の代わりに、手首には作業の汚れが染み付いている。


高級外車の代わりに、歩けるのは数歩の独房の中だけ。


そして、愛する妻や家族の代わりに、壁の向こうから聞こえるのは、他の受刑者の罵声だけ。


「……あああ……。美咲……美咲……!」


その名前を呼ぶ声は、もう怒りではなく、惨めな哀願に変わっていた。



────────────────

────────────


私はその頃


新しくオープンした女性専用マンションの屋上庭園にいた。


「美咲さん、次回の運営会議の資料です」


スタッフから渡された資料には、かつて私が苦しんだような女性たちが


次々と自立していく記録が記されていた。


私は、透さんが決して手に入れることのできなかった


「本当の信頼」に囲まれて生きている。

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