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身の程知らずの王座~妻の実家を私物化したクズ夫の末路~  作者: 猫塚ルイ


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13/20

第13話

取り調べ室の無機質な白い壁が、透をじわじわと追い詰めていた。


「……ですから、あれは接待だったんです。僕は会社のために…」


「佐藤さん、往生際が悪いよ。相手の女性、リカさんだっけ?彼女の供述とは正反対だ」


「彼女は『自分は御曹司だと嘘をつかれ、結婚を餌にブランド品を何点も買わされた』と言っているよ。立派な結婚詐欺の疑いだ」


刑事の声はどこまでも冷たい。


透はガタガタと震えながら、必死に頭を回転させていた。


しかし、彼が頼みにしていた「嘘の城」は、すでに根底から崩れ去っていた。


「さらに、君の銀行口座の履歴。……これ、何だ?」


刑事が突きつけたのは


会社からの給料とは別ルートで入金されていた、奇妙な大金の記録だった。


「……っ!」


透の顔が、さらに土気色に染まる。


実は透、経費横領だけでなく


会社の重要な顧客リストを競合他社に売り渡して「裏金」を作っていたのだ。


彼が月5万という過酷な生活を私に強いていたのは


私に贅沢をさせないためだけでなく


自分の「不自然な支出」を隠し、裏金をすべて自分の遊興費に充てるためだった。


───────────────

───────────


その頃


私は父の事務所で、弁護士の先生からその報告を受けていた。


「美咲さん。ご主人の闇は、想像以上に深かったようです。顧客情報の流出は、会社にとっては致命的な背信行為。これは単なる横領では済みません。実刑も免れないでしょう」


「……そうですか」


不思議と、涙は出なかった。


あんなに好きだった人の面影は、もうどこにもない。


そこにあるのは、見栄と虚飾にまみれた「空っぽの怪物」の残骸だけだ。


すると、私のスマホが震えた。


警察署から、透が「妻にだけは会わせてくれ」と泣きついているという連絡だった。


私は、最後のお別れをするために、接見室へ向かった。


アクリル板の向こう側に現れた透は、見る影もなくやつれていた。


あの高級時計も、パリッとしたスーツもない。


支給された薄汚れたスウェット姿で、彼は私を見るなり、板を叩いて叫んだ。


「美咲!助けてくれ!俺が悪かった!全部白状するから、お前の親父さんの力で、告訴を取り下げさせてくれ!このままだと、俺は刑務所行きだ!」


「透さん。あなたは私に『月5万でやりくりしろ』って言ったわよね」


「……え?」


「刑務所の中なら、家賃も食費もかからないわ。あなたが大好きな『究極のやりくり』ができるじゃない。あなたの身の丈に、これほどぴったりの場所はないわよ」


「……何、を…お前、正気か!? 俺は夫だぞ!」


「いいえ。もう、他人よ」


私はカバンから、透が判を押さざるを得ない状況で署名させた、離婚届の控えを見せた。


「あなたの実家の借金も、顧客リスト売却の損害賠償も、すべてあなた一人が背負ってね。さようなら」


私が席を立とうとすると


透は発狂したようにアクリル板を殴りつけ、警官に取り押さえられた。


「美咲! 美咲ィィ! 待て、置いていかないでくれ!なあってば…っ!!おい!!!」


叫び声が響く廊下を、私は一度も振り返らずに歩いた。


足取りは驚くほど軽かった。

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