番外編 誕生日プレゼント
※空が薬で大きくなる前のお話です。
空の匂いフェチが若干加速してるので、苦手な方はご注意ください。
自宅で、空が見たいと言った映画を一緒に見ていた時だった。
来客を告げるチャイムが鳴り、志岐は玄関へ向かう。どうやら宅配便のようだ。
「なんか頼んだっけ?」
受け取って差出人の名前を見ると、大島空と書かれていた。
「え? 空ー」
なぜ空から荷物が届くのか。志岐はすぐそこで映画を観ている空に声をかける。
「なあに?」
「なんか、荷物届いたんだけど」
「! 来た!」
空は映画を一時停止にすると、クッションの上に立ち上がる。志岐が隣に座ると、足の上に乗っかってきた。
「これ何?」
「開けてみて」
届いたのは、B5くらいの大きさの薄い箱。凄く軽い。
開けると、綺麗にラッピングされた箱が出て来た。
「⋯これって」
「ふふ。誕生日プレゼント。ちょっと遅れちゃったけど。志岐、なんで誕生日教えてくれなかったの?」
志岐の誕生日は、ちょうど1周間前だった。大人になってからは自分の誕生日なんて割とどうでもいいイベントだったのだけれど、空にとってはそうではなかったらしい。
「別に隠してたわけじゃないけど。ごめん」
「ほんとはケーキも用意したかったんだけど、ちょっと今日は急だったから」
ラッピングされた箱を開けると、中から出て来たのはハンカチのセットだった。
「ハンカチ⋯」
「なんか微妙な顔してる」
「してないよ。ありがとう」
「急いで用意したからしょうがないでしょ。志岐が教えてくれなかったから!」
ちゃんとお礼を言ったのに、空はぷくっと頰を膨らませている。
「悪かったって。すごい嬉しいよ。だからそんな可愛い顔しないで」
「⋯かわいいならいいでしょ」
「俺はいいんだけどね。空が怒ってるから」
頰を突くと、空はすぐに機嫌を直したようで笑顔になった。
「今度ちゃんとお祝い行こうね」
「そうだな」
それにしても、プレゼントがハンカチというのは、空にとってはある意味自分のためでもあるのかもしれない。
空は何度か、志岐が使ったハンカチを借りて帰ることがあった。この前まとめて返してもらったが、結局1枚戻って来てないのがある。汚してしまったから返せないと言っていた。洗って落ちない汚れなのだろうかと疑問に思ったが、深くは訊かないでおくことにした。
✦✦✦
それから、改めて志岐と一緒にお祝いするための店を予約した。
そろそろ発情期が近づいてきてしまっているので、行くのはその後だ。
新しいハンカチをプレゼントしたので、代わりに志岐が使っていたハンカチをまた拝借してきた。
「ほんとはシャツとかの方がいいんだけどな⋯」
しかし、シャツだとさすがに空には大きすぎるので仕方がない。
発情期の時に、志岐の匂いが染み付いたハンカチにくるまっているとすごく安心出来るのだ。
変な目で見られそうなので絶対に言わないが、なんとなく志岐にはバレているような気がする。
まあでも、何も訊かないでいてくれているので良しとしよう。
空は借りてきたハンカチを抱き締めて、大好きな人の香りを思い切り吸い込んだ。
END.
ここまで読んでくださりありがとうございました。アルファポリス様でラブシーンありの番外編も掲載していますので、もしよければそちらも覗いてみてください。