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その手にツルギがある限り!  作者: さんごく


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最初の冒険。

 ──翌日──

 東の空がゆっくりとオレンジ色に変わって行く。

 あの大爆発と、その後に起こった数百の塔の大崩落は。塔の中に居る人々と、塔の下で暮らしていた人々を分け隔てなく圧し潰した。

 だが人と呼ばれる生物はしぶとかった。

 東の空から太陽が昇った時、生き残った人々が見たのは。もはや機能していないであろう【軍】の惨状だった。

【王塔】の下で『スファ―ク国への進軍』を待っていた。ランダルファ王国軍は王塔の真下におり、【王塔崩落】の直撃をくらってしまったのだ。

生き残った元ランダルファ王国軍人達は、呆然と昇る朝日を見ていた。そんな彼らの【腹の虫】が小さく鳴る。完全武装の彼らが【暴徒】と化すのは、間違い用も無い必然であった。


「大丈夫ですか、師匠様?」

 ケイ・カインゼルが、ミナ・シェリルに覆いかぶさった状態でそう聞くと。ミナは半ば呆然とした顔でこう言った。

「…ええ、不思議な事に生きているわ…」

 ケイ・カインゼルがホッとすると、裸のミナ・シェリルにこう言った。

「ちょっと待っていてください、この瓦礫をどかしますから!」

 ケイがそう言うと、瓦礫が複雑に重なった為に出来た。小さな空間をケイ・カインゼルは、力を入れて全身で持ち上げる。

 大きな岩が震えるように動き出す。ダンジョンを構成していたその岩が上に持ちあがって行くと、その岩の半分にも満たない少年が。大きな岩を下から両手で自分の上に高々と上げる。

 ケイ・カインゼルはその大岩をヒョイと、誰もいない場所へと放り投げた!


 大きな地響きを上げて転がって行く岩を見て、ミナ・シェリルは感嘆の声をあげた。

「スッゴイ、もう私の教える事はないわ!」

 そう言ってケイ・カインゼルを見たミナ・シェリルは、ケイが赤褐色の肌をさらに赤くしているのを見た。

「…これ、そこに落ちていた白衣。ボロボロだけど…」

 ミナは自分が下着も付けていない事を思い出すと、その白衣を受け取った。

「ありがと」

 ミナ・シェリルは、白衣を着てこう聞いた。

「ケイ君…欲情した?」

 ケイ・カインゼルが、湯気でもあげそうに真っ赤になってこう言った。

「! バカ‼」


「フハハハハハ‼ そうだ、お前達は大バカ者だ‼」

 ケイ・カインゼルがその声を聴いて。奇跡的にキズもついていない、シミターを拾い上げる!

 他のカインゼル達も、次々と武器あるいは武器に成りそうな物を、拾い上げて構える!

「よくも、よくもまあ私の【実験体】の分際で【造物主】である私の計画を潰してくれたなぁ!」

【魔王】エメク・カインゼルは、水晶製の空飛ぶ玉座に座って。大きく崩れ去ったこの大部屋の天井から睥睨していた。

 ボロボロになったローブから見える、意外にも発達した筋肉は。実験体の『名も無きカインゼル達』の筋肉を縫い付けたモノであった。

「くっ、アノ高さでは白兵戦用の武器では届かない!」

 ケイ・カインゼルがそう言うと、ライトクロスボウとショートボウの矢が【魔王】エメクに向かって放たれる。

「クッ鉄の矢先か!」

 【魔王】エメクが苦々しくそう言うと、その後ろに乗っていた、元ケイ・カインゼルの部下最後の一人。十代のはずなのに白い髪を持つ【まじない師】キャリー・マスが、こう進言した。

「【魔王】エメク様。私は一旦引いた方が良いと愚考します」

 エメクはキャリー・マスをチラリと見て、その案に乗ろうと考えたその時。この場に一人の老人が入って来てこう言った。

「ふうーやれやれ、何とか生き残ったわい。むむ? あれはワシの【航時機】ではないか?」

 ヤビー・コルボはそう言って、更にこう続けた!

「何故じゃ! エメクの【航時機】のパーツを、かすめ取って作っていた物に。何故エメクの奴が乗っておるんじゃー‼」

【魔王】エメクは、破顔しながらこう言った。

「そうか‼ この見慣れない完成された【航時機】は、貴様が造っていたのか! ヤビー・コルボ‼」

「【魔王】エメク様、ここは【時間】を越えて『再起をはかった』方が賢明かと──」

 エメクは、ニヤリと笑ってこう言った。

「どうやら此処で戦うのは分が悪い様だ! 私は『過去』へ戻る事にするよ! では諸君、さらばだ‼」

 そう言うと【魔王】エメクは【呪文】を唱えて消えてしまった。


 あとに残された、ヤビー・コルボを除く人間達は、顔色を青くする。

【魔王】エメクが【過去】で何をするか、薄々解かっていたからだった!

 静まり返った壊れたダンジョンの中で、ヤビー・コルボは大きな声で叫んだ。

「あのバカタレ、本当に行っちまったぞぉぉぉ‼」

「──え?」

 全員の頭の上にクエスチョンマークが出て来た。

「ワ────ハハハハハッハッハ!」

 突然。六十七歳のヤビー・コルボが走って来て。頭の禿げた八十七歳のヤビー・コルボの手を取ると、二人でダンスを踊り始めた!

「エメクのバカタレめ! あいつならこの手に引っかかると思っておったワ!」

 

 混乱している此処にいる【全員】を代表して、ケイ・カインゼルが質問をする。

「ええぇぇと、お二人さん? 何で笑って居られるのでしょうか?」

 外見が十五歳程度にしか見えない、二十八歳のケイ・カインゼルが。ワルツから情熱的なサルサを踊り始める、二人のヤビー・コルボに話しかける。

「なんじゃ、解からんのかケイ・カインゼル?」

 まさにその通り! っと言わんばかりの顔でケイ・カインゼルはうなずいた。

「つまりじゃなぁ、あいつの乗っていた【航時機】は、ワシが乗っていた物なんじゃ」

 八十七歳のヤビー・コルボがそう言う。確かにエメクの野郎もそんな事を言っていた。

「【魔王】エメクの【航時機】は、大なり小なり破損しているのに。ワシが乗って此処まで来た【航時機】は一切の破損個所が無かったら。お前ならどう思う?」

「おれならばまず疑って視て本当に、本当に調べあげてから。この国を脱出するのに使うかもしれない──ア⁉」

 調べに調べた後? まさか⁇

 二人のヤビー・コルボが大笑いを始めた。

「外見上まったく損傷がなくとも、『中身』を書き換える所までは。時間的に調べるのは無理だった。と、言った所じゃのう‼」

「──ソレであの二人はどうなるんだ‼」

 二人のヤビー・コルボがばか笑いを続ける中。ケイ・カインゼルはそんな疑問を持った。

「『時空演算機』に手を加えたから、少なくとも一万年は過去に向かうんじゃないかのう?」

 一万年前。最早伝説でしか伝わらない、【真魔王】が世界の三分の一を支配していた時代。その様な時代に送り込まれたら、おれでも生き残れるか分からない。

「恐ろしい事を考えるなぁ」

 ケイ・カインゼルは、苦笑交じりでそう言った。


 外へと脱出したカインゼル達と二人のヤビー・コルボ。そしてミナ・シェリルは、外へ出ていちべつし、それぞれがこう思った。

『あぁ、この国は本当に終わったんだ』と。


「よっこいしょっと‼」

 そう言ってヤビー・コルボは、三人のカインゼルとチカラを合わせて。ダンジョンから大きな荷物を運び出した。

「ヤビー、それは何? もしも『火事場泥棒』でもしようものなら──」

 ミナ・シェリルはそう言うと、両手の指をこねるようにポキポキと鳴らした。

「なんて事を言うか! これはお前さんが散々探し歩いた【子宮】じゃ‼」

 ヤビー・コルボはそう言うと、大きな銅製の入れ物をそっと地面に置いた。

「それは本当なの? ヤビー!」

 ミナ・シェリルは一瞬動きを止めると。ヤビー・コルボに詰め寄った。

「落ち着かぬか! 今見せてやるわい‼」

 そう言うとヤビー・コルボは、シーツで隠していたソレを、此処にいる全員に見せた。

「──、これが私の【子宮】?」

 ミナ・シェリルは尻もちをついた。

「どうだい、綺麗なモノだろう?」

 ミナは大粒の涙を流して首肯した。ミナ・シェリルはこの時を、どれ程待った事か! そしてどれ程の悪夢で悲鳴を上げたか‼

「では、さっそくお前の体に戻そうかのう」

「ぇえ⁉ 今ここで‼」

 ヤビー・コルボのその言葉に、ミナ・シェリルは慌てた!

「当然じゃないか。こんな重い物をサリアン王国まで、持って行けるわけが無い」

 当たり前、と言えば当たり前なその言葉に。ミナ・シェリルは赤面する。

「では行くぞ【お前の元々の居場所へもどれ】どうじゃ?」

「え」

「ミナ、お前さんの体に戻った【子宮】はどうだ。と聞いておる」

 ミナ・シェリルは簡単に【空間移動】と【結合】を、やってのけた二人のヤビー・コルボに驚いた。

「【術】は成功しておる、何か感じるか?」

 ミナ・シェリルは自分のお腹をさする。そしてこう言った。

「あ、何だかとても暖かい。あと、少し重いかな?」

 ミナ・シェリルがそう感想を述べると、二十人以上は確実にいる。カインゼル達が暖かい拍手を送った。


 真っ暗なダンジョンの中を、ケイ・カインゼルより背の低いチョッポは歩く。

「ちくしょう、ちくしょう。あともう少しで【航時機】の秘密を手に出来たのに!」

 チョッポは真底、カインゼル達を罵倒する。

 あれ程の発明品は、これから後数百年は出て来ないだろう!

 中々隙を見せなかった【魔王】エメクが、今日この日を薄暗いダンジョンの中で、座っていられる訳が無い! 

 何らかの形で、このダンジョンを出るだろうと考えていた。

「ケイ・カインゼルの発達不良者め! ヤビー・コルボのアルコール依存症者めぇ!」

 チョッポはそう言うと、地団駄を踏む。

「ぬ?」

 チョッポはピタリと、暴れるのを止めて自分の後ろを見る。

 チョッポの瞳孔が青く光る。

『ドワーフはその目の中で、光を数百倍に増幅させて暗闇を見る。対して妖精達は熱──正格には、熱が放つ【赤外線】を見る』

 チョッポの父親は【妖精のゴブリン】である為、【赤外線】を視る事が出来た。

「…気のせいか…」

 そう言うとチョッポは前を向いて歩き出す。

「今回は失敗したが、次こそは『このどん底の人生』から這い上がってやる‼」

 そう決心を付けて、暗やみの中を前へ前へと進んで行った。

 ちなみにチョッポの感は当たっていた。

 彼の身体から出ている少量の血が。洞窟の猛獣である、ジャイアントバット共を引き付けていた。

 その数はチョッポが歩けば歩く程に増えていった。


 太陽が朝日で回りを照らす中。ミナ・シェリルとカインゼル達の、別れの時間がせまって行く。

「何かあれば呼んでください。何処にいてもすぐ駆け付けますから」

 二十代前半から中辺りのカインゼル達が、次々と握手をしていく。

「ありがとう、何かあればお世話にさせてもらうわ」

 そういったミナ・シェリルは、逆に力強く手を握り返した。

「お母さん…」

 そう言った後何も言えずに涙をながす。十代前半から後半辺りのカインゼル達を、ミナ・シェリルは一人ずつ抱きしめた。


 その光景を複雑な気持ちを抱いて、ケイ・カインゼルは見守っていた。

 実年齢ではこの中で一番、齢を取っている自分だけ『おれは此処に残る』とは、言えなかったのだ。


「ではミナ・シェリル母さん、我々は自分達の生活に戻ります」

 カインゼル達のリーダーを務めている、アラン・カインゼルはそう言った後。ふいにケイ・カインゼルを見てこういった。

「ケイ・カインゼル。我々の母様に何か在れば、何時いかほどの事で在ろうとも。我らを呼べ、良いな?」

「──な──」

 ケイ・カインゼルが絶句していると、アラン・カインゼルは、ケイ・カインゼルにこう続けて言った。

「今日この日に我々が集まって来たのは偶然では無い。おまえが呼んだのだ!」

 混乱するケイ・カインゼルに、八十七歳のヤビー・コルボが説明する。

「お前さんも気が付いておるだろうが? お前さんの中で眠るもう一人の人格を!」

 ケイ・カインゼルはうなずいた。

「…ああ、知っている。おれの中で眠っている、おそらくは【魔王】エメク…」

 そう言いかけてケイ・カインゼルは。指と頭を横に振る二人のヤビー・コルボを見た。

「ちがうんじゃなあぁ、いい所まで来とるのに」

 え…ち、違うのか? じゃあアレはなんなのだ⁉ ケイ・カインゼルの頭は、パニック寸前になる。

「良いかなケイ・カインゼルよ、お前さんは言ってしまえば【カインゼル量産型一号機】なんじゃよ」

「【カインゼル…量産…が…】えええ⁉」

 ケイはドンドン自分が削り取られて行くのを感じた。

「簡単に言ってしまえば【指令機】と言った所じゃ!」

 つまり、おれ──おれ達は【先入兵器】として造られた。って事か⁇

「そうですその通りです」

 そう言ったのは、アラン・カインゼルだった。

 ア、思考を読まれた! これじゃあかくしごと、何て出来やしない!

「大丈夫、『思考を読まれない』ようにするのは。簡単ですから」

「──全然簡単じゃあない!」

 ミナ・シェリルと二人のヤビー・コルボ、そして二十人以上は確実にいる、カインゼル達は大いに笑った。


「あいつも死んだか逃げ出したか」

 黒い軍服に黒いズボン【士官用ヘルメット】を左脇に抱えた、ケイレル教官は黒いオールバックの髪を整えてキジ撃ちを終えると。『小休止』している自分の馬車にもどる。

「さて、今度の【勇者】は何処の誰にするか」

 そう言ってファイルを開くと、…ふと、誰も座っていないはずのソファーに目を凝らした。

 誰もいないはずのソファーに、ピエロが座っていた。

「そうか、生きていたのか」

 ケイレル教官は、まったく動じずにそう言うと。ティーカップに注がれたまま、ぬるくなった黒茶を飲んだ。


「今回の騒動は、何処までが『お前』の計画だったのだ?」

 薄汚れたピエロが、ケイレル教官に質問する。

「初めからだよ。ラハス・バレンツ」

 対して面白くも無い話題のように、ケイレル教官はしゃべった。

「……初めから……」

 しばらく絶句していた、薄汚れたピエロがそう言った。

「もちろんすべてでは無い、だが。まだ十代にもなっていないお前の名前を、ファイルに入れたのは私だ」

 そう言うとケイレル教官はポットから、熱い黒茶を注いで。ティーカップをあごの下へ持って行くと、思いっきりラハス・バレンツに投げつけた。

 熱い黒茶がラハス・バレンツにかかるが、その様な事は初めから解かっていた。

 ケイレル教官とラハス・バレンツは、腰に下げているキドニーダガーを引き抜いた。数瞬後、右手を赤く染めた薄汚れたピエロが。森の中に入って行った。

 怪しげな影を見た【警護兵】が、ケイレル教官の馬車に駆け寄り、馬車の中を見て腰を抜かした!

 のどを切り裂かれたケイレル・ケント教官は、馬車の中を真っ赤に染めてこと切れていた。


 小さな丘のてっぺんに生える大きな木の下で。右半分の髪は黒く、そして左半分は赤い髪を持つ。とても珍しい女性が、自分のあるじの帰りを待っていた。

 すでに太陽は空の真上にあり、女性はとてもお腹をすかしていた。

 だが、女性はあるじの命令に従っていた。二人で食事をするより三人で食べた方が、楽しいからだった。

 あれ? 私は一人なのになぜ三人で考えるのだろう? まぁ、どうでもいい事だ。

「ア、あるじ様ぁ!」

 女性は駆けだした。悩んでいた事なんて何処かへ吹き飛んでいた!

「あぁ、ただいま」

 そう言って、あるじ様はピエロの【仮面】を取ると、輝くような笑みを浮かべた。

 そのほほ笑みを見た女性は、思わず気絶しそうになる。

「大丈夫かい? 君に何かあるとわたしは、生きる意味が無くなってしまう」

『──あ、だめだ。意識が飛んでしまう──…キュウ』


「それでは私達は、南を目指すのですね?」

 食事を終えた後に、考え込んだラハス・バレンツは。唐突にそう言い出した。

「イヤかい?」

「いいえ! あるじ様がそう決めたのならば、私達に依存は有りません」

 緊張の糸を一本取ったラハス・バレンツは、大きく深呼吸をする。

「ですがあるじ様、私達はあるじ様に質問が有ります。私達はあるじ様の何なのでしょう?」

 この唐突な質問に、しばらく思案していたラハス・バレンツは、指を一回鳴らすとこう言った。

「わたし達は昨日の夜に『家』を出て駆け落ちした、新婚夫婦じゃあないか!」

 私達の心臓が早鐘を鳴らす! 嬉しい、嬉しい、嬉しい! 過去の記憶が殆んど無い私達は、とても嬉しかった!」

「だから君達も、わたしの事はあるじ様では無く『あなた』と、呼んでほしい」

 私達は涙でくしゃくしゃになった。こんなにも嬉しい事があるのか! 最初に起きて以来『あるじ様』としか呼ぶ事が出来ない『相手』が、人生のツバサだと言ってくれたのだ!

 消え去った私達の記憶では、“三人”の関係は分からない。

 もしかすれば『倫理的』に許されない『結婚』なのかもしれない。

 だけどこのひとは、自分から『一対のツバサ』だと宣言してくれた!

 ならば何を悩む事がある?

 私達はくしゃくしゃの顔を拭いて、満面の笑みを送りこう言った。

「末永くよろしくお願いします、あなた」


 完全に倒壊し尽くした。ランダルファ王国を一望できる丘の上で、ケイ・カインゼルと、ミナ・シェリル。そして八十七歳のヤビー・コルボと。

 二十二人のカインゼル達と、六十七歳のヤビー・コルボが、別れの挨拶を交わしていた。

「お母さんは何処へ行くの?」

 十一歳の最も若いカインゼル。モーリー・カインゼルがそう聞いて来たので、ミナ・シェリルは包み隠さずに、こう言って安心させる。

「私はサリアン王国に戻ります。ウーン。身体の事は当分黙っておきますが!」

 計略結婚だけは避けなければならないし。──と、本気かどうかも解からない事を言った。

「ケイ兄たんはどうするの?」

 モーリー・カインゼルが中々クリティカルなところを攻める!

「おれは、とりあえず【騎士】を目指してみるよ」

 カインゼル達が、オオッとうなる!

「ケイ・カインゼル! お前、本気なのか⁉」

 そう言って来たのは、ケイの事を。実の親以上によく知っている、六十七歳のヤビー・コルボであった。

「簡単には成れないのは、良く知っているよ」

 そう言ったケイの顔は、何か付き物が落ちたように見えた。

「ケイ・カインゼル」

 そう言って来たのは、八十七歳のヤビー・コルボだった。

「お前が【騎士試験】に合格出来た時、ワシの話を聴いて欲しいのだが」

「カネは貸さないぞ‼」

 ケイは即答した!

「けっこうケチじゃな!」

 八十七歳のヤビー・コルボが、地面に落書きを始める。

「仕方ないだろう? 【騎士】になる為には、色々カネが必要なんだから‼」


「それじゃあワシ達とは、しばらくお別れじゃな」

 六十七歳のヤビー・コルボがそう言うと、ケイ・カインゼルは、以外そうにこう言った。

「何処かに行くのか? ヤビー・コルボ⁉」

「うむ、ワシは旅に出る」

 ヤビー・コルボ(六十七歳)は、ムネを張ってそう言った!

「何処へ向かうか、もう。決めているのか?」

 どこかさびしそうにケイ・カインゼルは。ヤビー・コルボを見る。

「うむ! ワシはかつての過去、そして、まだ見えない未来を視る‼」

 次の瞬間、丘の頂上に馬車よりも大きい。水晶製の【航時機】が現れた!

「ヤビー・コルボ! いったい何時の間に⁇」

 ケイ・カインゼルは、呆気に囚われる。

「あれはワシがあげたモノじゃよ」

 八十七歳のヤビー・コルボが、禿げた頭を叩くと舌を出した。

「それじゃあ、また会える日まで。さらば‼」

 つんつん頭のヤビー・コルボが【航時機】に乗り込むと、一瞬輝いてこの世界から消えた。

「知らねえぞ、どうなっても──」

 ケイ・カインゼルは一人でそう断言した。


「では、ケイ・カインゼル。何かが在ったらヤビー・コルボの前に集まろう」

 アラン・カインゼルはそう言って、他のカインゼル達と共に丘を下った。

「やれやれだぜ」

 ケイ・カインゼルがそう言うと、丘の中腹で座り込む。

「大変な十ヶ月だったわねえ」

 ミナ・シェリルがそう言うと、ボロボロの白衣にマント姿でケイの隣に座った。

「……なに…ミナ・シェリル…」

 ケイ・カインゼルがわざとツンケンに、ミナ・シェリルから距離を取る。

「わたし夢があるの」

 フ~ン、夢を持つのは良い事です。

「わたし昔っから自分の子どもに『ママ』って呼ばれたかったのよ」

「おれトイレに行ってくる!」

 サッと立ち上がるケイ・カインゼルだったが。そんな事で逃げ出せる、ミナ・シェリルではない‼

「お願い! 一回でいいから、私をママと呼んで‼」

「いーやーだー‼」


【魔法騎士】ケイ・カインゼル・バラン。その最初の冒険譚は、こうして幕を閉じるのでした。


お、終わった。

何とかお話しになりました。

ケイ・カインゼル。ミナ・シェリル、お疲れ様。

でも、最大の功労者は、ヤビー・コルボでした!

一回限りの出番、であったのに、いつの間にか主役級の大かつやく!

世の中何が起こるか解かりません。


最終回を読んでくれて、ありがとう。

ご意見、ご感想、星等々、なんでも ください。

それでは、またいつかお会いしましょう。

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