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その手にツルギがある限り!  作者: さんごく


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59/60

刻まれる時間。

 その樽の大きさは高さ一メール(約一メートル)程の物であった。

 そしてその中には、とても危険な薬物がいっぱいに詰められており。樽の下では巻き上げられたゼンマイと歯車が、その時を待っているかのように時間を刻んでいた。


「それでは諸君、作戦の最終確認を行なう」

 もうすぐ深夜になる時間。【時空戦闘部隊】司令官グラント・ノアがそう言うと、ランダルファ王国【軍人】達がいっせいに司令官を見る。

 酒に酔いつぶれているのは、トム・ハックス率いる【時空戦闘突撃部隊】と言う。長ったらしい名前で呼ばれる、事実上の【自殺部隊】員だけだった。

 グラント・ノア司令官は、酒に酔いつぶれた彼らに、一瞬侮蔑のこもった視線をおくると。何事も無かったような顔で、頼もしい【部下】達を見る。

 カートが付いた黒板が、グラント・ノアのもとに運ばれて来る。

「これより各部隊の【時空を超えて】向かう場所と、何年かを伝える心して聞くように」

 全員に聞こえる声でそう言うと、グラント・ノアは自分の直轄部隊員にうなずいた。


「それではこれより、わたくしレイリー・ハートが。部隊長とその部下が送り込まれる【時間】と【場所】を説明させて頂きます」

 遠くまで聞こえる澄んだ声で【女性士官】が、紙をめくりつつ【部隊長とその部下達】を指名して行く。

「ポール・ルッツ指揮官とその部下五百人は、今より二十年前の【第一王位継承者誕生の二日前】に、時空を飛んでいただきます、よろしいですね?」

 ポール・ルッツ指揮官は、左目に付けた眼帯をなぞるようにさわった後。右手で無頼漢溢れるが、寸分の迷いも無く力強い【敬礼】をして見せた。

「ルータル・ハッシュ指揮官とその部下五百人は、今より二十五年前の【現在の国王と王妃の婚礼の儀】の最中に、跳んでいただき【現王】か【現王妃】のどちらかを殺していただきます」

 ルータル・ハッシュ指揮官はその言葉を聞くと。数年前から段々と薄くなってゆく、こげ茶色をした髪を張り付けた。オールバックのひたいに優美な敬礼を送った。

「では、続いて──」

 こうして此処に集まった十人の指揮官と、その部下五千人は。隣国スファ―ク国の歴史の転換点。あるいはいまのスファ―ク国をかたち付けた『事件の現場』を改変するために、その時間に介入させる【軍人】達を指名していった。

 もちろんその中に【時空戦闘突撃部隊】も含まれていたが。彼らはあくまでもその時代で行われる、【戦争の最前線で消費される】捨て駒でしか無かった。


 金色の髪と青い瞳を持つ(逆に言えばそれぐらいしか魅力の無い)トム・ハックスは、腹を立てていた。何故なら自分の【時空戦闘突撃部隊】が、十分割されてしまったからだ。

『これでは我々の活躍がかすんでしまう』

 トム・ハックスは何か言おうと思ったが。内心で、『ソレを口に出せば確実に自分の寿命を短くしてしまう!』と言う予感がしていた。

「なんだ? これは、これじゃあおれ達【時空戦闘突撃部隊】が。目立たねぇじゃないか?」

 トム・ハックスの隣で、酔いつぶれ無いようにチビチビとワインを飲んでいた。トム・ハックスの部下にして。『いっぱしに戦略を語れる』男。──いや、青年のルイズ・バスクが。

そう大声を出した。

 ランダルファ王国の軍人の中から、舌打ちが響く。

「私が説明し…──!」

 次の瞬間。炸裂する重低音が下から響き、大きく塔を揺らす!


【樽】の中に入っていた“薬物”の名前は【火薬】と言った。

 火薬が発見されたのは、いまから約三千年も昔の事だった。

 さる【錬金術師】が、いつもの時代と同じように【不老不死】の薬を作ろうと、【硫黄】と【木炭】そして【硝石】の粉を混ぜ合わせた時に、偶然出来上がった物だった。

【マジックアカデミー】で、意気揚々と自分の『発明』を。教卓上から解説し終わった彼に送られたのは、在る地での軟禁生活だった。

 実のところ【火薬】の存在は、彼が『発見』する更に三千年も昔から【マジックアカデミー】は把握していた。

 そして【火薬】は【使用禁止薬物】として認定して。作るどころか、所有をにおわすだけで。個人には軟禁。国家には【マジックアカデミー】からの『宣戦布告』と言う、恐ろしい結果が待っていた。

 では、三千年前の【錬金術師】が何故【火薬の父】と呼ばれるのか?

 それは彼の勇み足が遠因であった。

【活版印刷機】によって彼が作りあげた五千部の本!

【マジックアカデミー】がその本の存在を知った時には、その本はすでに売り切った後だった。


【樽】の中で炸裂した【火薬】は【黒色火薬】では無かった。

 より炸裂能力の高いTNT火薬だった!

 三千年。その中で火薬もより進化を続けていたのだ。

 最初、この国で最も目立つ【王塔】の直下で炸裂した。樽のカタチをした時限爆弾は、直径十キ・メール(約十キロメートル)の露天掘りで出来た。クレーターを取り囲むように立つ塔の根元を破断する様に、【西の王塔】から北と南に分かれた後。東にある【教会塔】の根元で合体する。

 ただしこれが、タダの爆発であれば何の問題も無かった。

【魔法】で出来た建材の強度はダイヤモンドに匹敵する。

 そう、ただの爆弾であれば。ただ揺さぶられる程度ですむ。

【鉄!】

 この樽の中には爆薬と、【鉄屑】が押し込められていた!

『鉄は全ての魔法を無散させる』

 これは全ての魔法に適応する。どれ程硬くても、どれ程重くても。


【教会塔】の真下にある、【魔王】エメクの実験ダンジョンでは。今まさに大爆発によってすべての物が揺さぶられ、剥がれ、天井から落下していった。

「伏せるか壁か柱に張り付いて頭を守れぇぇ‼」

 カインゼルの誰かがそう叫ぶと、ちょっとした運動場並みの大きさを持つ、この部屋の壁や柱にカインゼル達や、チルドレンギャング達が背中を押し付ける。


「ミーシャ! フェミール! 伏せろおおぉぉぉ‼」

 一人の女性に対して二人の【愛人】の名前で叫ぶと。ラハス・バレンツはシーツを体に巻いて引きずるように進む、右側は黒く、左側は赤い二色に分かれた。独特な髪の毛を持つ女性に覆いかぶさった。

「あなたはだぁれ?」

 何処か人工的なしゃべり方をする女性に、ラハス・バレンツはこう言った。

「後でいっぱい教えてやる。だからわたしの下に居ておくれ!」

「うん、わかった」

 

「全塔の落下! 今‼」

 アラン・カインゼルがそう叫ぶと、カインゼル達は強く両目を閉じた!

 遠くから地響きが聞こえはじめる、そのあらゆる物を破壊して行く轟音が、いま自分達に襲い掛かって来る!


「────────‼」

 ケイ・カインゼルは何かを叫ぶ。だが、何と叫んだのかは解らなかった!


次回、最終回!

お楽しみください!

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