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その手にツルギがある限り!  作者: さんごく


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55/60

小大人対道化師。

 かん高い金属音が、この大きなドーム状の部屋に響いた。

 ケイ・カインゼルの真上から、身体ごと振って来た【道化師】の一撃に。ケイは思わずヒザを付く!

「今は貴方とやり合う気は無い!」

 ケイ・カインゼルの言葉を聞いても、【道化師】はその青銅製のブロードソードで、切りかかるのを止めなかった。

 ケイの真上からの攻撃は、【魔法】で底上げされた『視力』で防がれた。

 ならば。と、【道化師】は三歩後ろにバックステップすると。普通片手で使うブロードソードを両手で構え直すと、ケイ・カインゼルの右胴体へ殴り付ける様に振るった。

 勿論の事、『視力』を強化されているケイにとって。その攻撃は『視えて』いた。だが、その体は今だ“普通”の速度でしか動いてくれない。

『もっと早くうごけぇ‼』

 ケイ・カインゼルの脳はそう命令を出す、だが。そう簡単には行かない!

 彼の動きは、『人の限界』に近かった。

 これ以上の速さは、身体に余計な負荷をかける!

 再び、かん高い金属音が響いた。

 ケイのダマスカス鋼で出来たシミターが間に合ったのだ‼

 その瞬間ケイ・カインゼルの体が熱くなる。

 空中を飛び回る【マナ】が、ケイの体に集まって来る。

 ケイ・カインゼルが、集まって来た【マナ】を呼吸するかのように、体の中へと吸い込む。

【マナ】は体内で【オド】へと変化する、【オド】とは言わば【魂】である。

【魔術】を使う者達は自ずと【マナ】と、【オド】の扱いに長けるようになる。

 それどころでは無く。全ての生物は生き続ける為に、【マナ】を吸って【オド】に変えて生きていた。

【魔術】とは【魂】を削って【この世の理を書き換える】行為だった!


「ウオオオオオオオオオオ‼」

 ケイ・カインゼルが咆哮を上げる。

 次の瞬間、ケイの体が変化を始める!

 彼の皮膚は、青銅製のヨロイとなった。

 彼の骨は鉄よりも固くなった!

 そして彼の筋肉は、その体を動かすのに最適な“モノ”へと変化した‼


「どけぇ! ラハス・バレンツ! 勇者でさえ無くなった貴様に、用事は無い‼」

 ケイ・カインゼルはそう言うと、【道化】…ラハス・バレンツの腹部を蹴りあげた‼

「グッ!」

 軽く三メールは吹き飛んだラハス・バレンツは、背中からその怪しげなパイプの張り巡らせた機械に突っ込んだ。

「グハァ‼」

 銅製の素材が【道化師】の左わき腹を掠める。

「そこでしばらく寝ていろ」

 ケイ・カインゼルはそう言った。


【道化師】の衣装を着せられた、ラハス・バレンツの目に『殺意』の念が灯る。

 これ程の殺意は久しぶりだった!

「このわたしに『しばらく寝ていろ』だと? ふざけるな!」

 ラハス・バレンツは、傷口をさわる。

 大したけがでは無い。皮膚が少し裂けただけだ!

 ラハス・バレンツは体の姿勢を変える。

「グッ!」

 銅製の金属素材が、傷に触れる──だが、それだけだった‼ 即死する程のけがでは無い。

 ラハス・バレンツは自分の武器である。【青銅製のブロードソード】で【道化師】の衣装を切り裂いた。

 

 ケイ・カインゼルは、銅製のパイプを足場にして。スルスルと、このおかしな機械を登って行く。

『ミナ・シェリルには返したくても、返し切れない恩がある! おれに【剣術】と【魔術】を教えてくれた事──そして!』

 ケイ・カインゼルはこの時、【オド】を止めるのを“あえて”行わなかった。

 ミナ・シェリルが拘束されているベッドと鎖が、【鉄製】である事を知っていても。移動出来る距離の方が大切だと思っているからだ!

 ケイ・カインゼルが行ったこの時の考えは、【魔法使い】としては落第だったが。【冒険者】としては正解だった。

 ケイの耳に風切り音が聞こえた‼ ケイ・カインゼルは、背中に背負っているシミターを抜いた!

 三度目の金属音が響いた。

 ケイ・カインゼルは思わずこう言った。

「しつこいぞ! ラハス・バレンツ‼」


っという事で、55話でした。

色々と、複線をばらまいていますが、今更回収は不可能か?

では皆さん、次はいつになるかは分かりませんが。

次回お楽しみに。

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