見慣れた、ダンジョン。
ケイ・カインゼルを含む十七人のカインゼルと、ヤビー・コルボは。閂の落ちた門から【アースドラゴン】の間を突破して、このダンジョンの奥へ突入する。
「う?」
「む⁉」
「く‼」
カインゼル達とヤビー・コルボは、門をくぐる瞬間。何とも名状しがたい『感覚』に襲われた。だが。
「……何ともありませんねえ。」
レク・カインゼルは自分の体をまさぐって、自分に何もない事を確認する。
「ああ……」
「何も無くしていない…なぁ」
二人の十五、六歳のカインゼル達もそれに同意する。
「減ってもいないし、増えてもおらん」
ヤビー・コルボは、水筒とは名ばかりの【酒ビン】を振って確認していた。
「危ない‼」
前方から十発の【吹き矢の矢】が、飛んで来る!
ラージシールドを持つ十八歳のロック・カインゼルがそう叫ぶと、その大きな盾を持って最前列で構える。だが、三メール(約三メートル)四方に広がるダンジョンすべてを防御は出来ない。
【風よ! 風よ! 前方で荒れ狂い我らを救いたまえ‼】
そう【呪文】を唱えたのは【特殊能力:大気操作】を持つ、純粋に【魔術師】としての才能を持つ二十歳の白いローブを着込んだ。カイン・カインゼルだった。
前方から飛んで来た【吹き矢の矢】は。大盾と、荒れ狂う風によって目標からはずれる。
「ちぃ!」
耳を澄ましても聞き取りづらい、その小さな舌打ちを聞いたのは、ケイ・カインゼルを含めても三~四人だった。
「貴様、チョッポか‼」
ケイ・カインゼルが暗闇に向かってそう叫ぶと、暗闇の中の人物達は気配を消し去って逃げて行った。
「アッあいつ逃げやがった!」
そう言うと二十歳のアラン・カインゼルが、追いかけようとするが。
「ダメだ! 追いかけては! 奴の思うツボになってしまう‼」
そう言って相手を、追いかけようとするアラン・カインゼルを止めたのは。見た目は少年のケイ・カインゼルだった。
「どういう意味だ?」
明らかに怒っている口調でケイ・カインゼルを見下ろす、アラン・カインゼル。だが、ケイ・カインゼルはダンジョンの砂の中から。『あるモノ』を見つけた。
「やはり、トラップを仕掛けていたか」
ケイ・カインゼルが小さな金属のかたまりを、アラン・カインゼルに投げてよこす。
「これは、まきびし⁉」
驚くアラン・カインゼルを無視して、ケイ・カインゼルはこう言った。
「あいつなら、ワナの在る方向へ逃げるだろうと思っていたが…。やっぱり、か」
アラン・カインゼルは、驚きと怒りで目が血走る。
「所で最後にこのダンジョンに突入した奴。今、自分達がどこに居るか確認したか?」
「エ……」
最後に【アースドラゴン】の間から、このダンジョンに入ったカインゼルは、突然話題をふられて困惑していると、前にいるカインゼル達の視線を受けた。──いや、彼らの見ているのは自分の後ろだった。
彼は恐る恐る後ろを見る。
「エ……」
最後尾のカインゼルは、一分前と同じ言葉を発した。
だが、意味合いが違っていた。
あるべきものが無かった。それは門。ついさっきくぐった門が無くなっていた!
「──そんな!」
数人のカインゼル達が、手に持っている武器を、無くなった門の代わりに存在する岩の壁に振るった。
だが岩の壁は。その程度の攻撃では崩す事は出来なかった。
「さっき感じた違和感は、【空間転移】の【魔法】を受けてのモノじゃったのか‼」
ヤビー・コルボは納得したようにうなずいた。
「いやいや、納得されてもこっちが困るのですよ?」
アレク・カインゼルが今、自分達に起きている事を指折り数えて指摘する。
「第一に、出口が消え去ってしまった事。第二に、そもそも此処が何処なのか解からない事。
第三に、いま我々の用意している食べ物は。節約しても三日分しか無い事! 他にも問題はたくさんあります。これでは安心出来ません‼」
「なるほど、お前さんの言いたい事は解かった。だがな、ソレはこの第一点で全てが大した問題では無くなるのじゃ!」
ヤビー・コルボは、ケイ・カインゼルを指さしてこう言った。
「あの、最近出たとこ勝負しかしていないが。本来神経質な男がまったく慌てて居ない。この一点だけでワシは安心できる。どうじゃ? まだ不安か? だったらケイ・カインゼルに直接聞いて見ればよい! あの男はおそらく此処が何処なのかも解かっておるぞ!」
ヤビー・コルボの指摘で、思わず息を飲んだアレク・カインゼルは。ケイ・カインゼルに歩み寄る。
「ヤビー・コルボさんから聞いたのだが、ケイ。君は此処が何処なのか知って居るのか?」
外見だけはまだ少年のケイ・カインゼルは、小さくうなずいた。
「最初は半信半疑だったが、かつておれの仲間だったチョッポがいて確信した。此処はかつておれの仲間と暮らしていた、ダンジョンの地下三階だ」
ケイ・カインゼルはそう言うと、小さく胸を張った。
1週間以上のお疲れ様です。
中々書けなくって、こんなに間が空いてしまいました。
これからも、不定期で書く事になりそうです。
そんなお話しですけど、読んで頂けると幸いです。
では、また次回で、(いつになるやら解かりませんが)
お会いできるのを楽しみにしております。




