カインゼル軍団。
ケイ・カインゼルを含む十人のカインゼル達は、六十七歳のヤビー・コルボと共に。【アースドラゴン】の巣へと向かった。
「アースドラゴンの間を通らないと、このダンジョンは絶対に突破出来ないのだな?」
ケイ・カインゼルの問いに、九人のカインゼルは。シンクロニシティ状態にでもなっているかの様に、首を立てに振った。
「えぇ。何処をどう移動しても【アースドラゴン】の巣に向かってしまうのです」
二十代中盤ぐらいの年齢のアラン・カインゼルがそう言った。
明日の深夜二刻にランダルファ王国はスファ―ク国へ進軍する。
八十七歳の頭の寂しくなったヤビー・コルボは断言した。
『別にワシはこの国を好きでもないし、何処で滅びようと関係は無い!』
そう言ったヤビー・コルボは、何処かさびしそうだった。
『だが』
『この国に住む、住んでいる人々が。無惨に殺されるのを見るのは忍びない』
そう言うとヤビー・コルボは、懐からパイプを取り出すと、今度はマッチを探し始める。
『ほれ』
そう言ってマッチを取り出したのは。六十七歳のヤビー・コルボだった。
『すまんな』
そう言うとおもむろに立ち上がった、ヤビー・コルボ(八十七歳)はこう宣言した。
『さて、これからは時間との勝負じゃ! 既に別の班がこの『クスリ』をこの都市の重要な場所に設置して回っている。明日の深夜までに【魔王】エメクを止めないと、【賢人会議官】がこの都市の査察に出向いてしまう! そうなれば、お前達の正体も露呈してしまい。【カインゼル】の複製であるお前達までも【封印対象】として。【厳重隔離対象】にされてしまい兼ねない!』
ヤビー・コルボはカインゼル達を見てこう言って来た。
『ワシはお前達を助けてやらねばならない! 何故ならお前達はワシにとって『孫』だからじゃ!』
「爺ちゃん」
十歳のカインゼルが思わずヤビー・コルボをそう呼んだ。
『そうじゃ! ワシはお前達の【お爺ちゃん】じゃ‼ だからこれからもお前達が静かに暮らしていける様に【魔王】エメクの野望を止めなければならない! いや、みんなの為に止めて見せる‼』
ケイ・カインゼルはその言葉を聞いて、無意識のうちに手のひらに爪が食い込む程、握りこぶしを作っている自分を感じた。
誰も大声を出さない、だが、全員の気持ちはひとつだった。
【魔王】エメクを倒す! ただそれだけが共通認識だった。
「ケイさんもう少しで【アースドラゴン】の巣に出ます!」
外見年齢は十五歳以下の少年だったが、『カインゼル達』の中では年長になるケイ・カインゼルは。二十歳になるアレク・カインゼル達の【先遣隊隊長】として、ケイ・カインゼルはその地位に抜てきされたのだった。
立三メール、横三メールの正方形だったダンジョンが、次第に大きくなって行く。
ダンジョンはお碗を伏せた様な空間で終わっていた、いや。この特異な部屋の先に、閂の掛かった木製の門が在る。
「あの門の先に【魔王】エメクがいる訳か。ならここには」
ケイ・カインゼルが、そう言ったその時にダンジョンが震えた。
大型や中型の生き物の骨が散乱している。この円形の部屋の中心部分が地面の下から盛り上がる。
「来ました!」
アレク・カインゼルがそう言うと。ケイ・カインゼルを筆頭に自分の武器を構える。
【筋力・瞬発力上昇! 感覚器官加速!】
ケイ・カインゼルがここ十ヶ月でモノにした、【身体強化の魔法】を自分の体に向かって掛けると。今着込んでいるレザーアーマーがギシリと音を立てる。
「やれやれ、また侵入者か」
【アースドラゴン】はそう考えると、土の寝床で身じろぎをする。
あの人間の雌に付けられた傷もまだ癒えていない。
だが、自分のあるじからの『命令』は絶対だった。
「さて、では目一杯派手な【出現】をして驚かすか‼」
【アースドラゴン】はそう思うと、背中の土ごと現れる様に土の中から浮上する。
大きく発達した前脚を使って立ち上がると、【アースドラゴン】は恐れおののいているだろう『人間達』を見る。
【アースドラゴン】の第一印象は、『やけに静かだな』と言うモノで。少しガッカリした。
だが、人間達のすがたを見た感想は『驚愕』であった!
『そんな馬鹿な【魔王】エメク様が二十人もいるだと⁉』
【アースドラゴン】は恐れおののいた! 当たり前だった‼
【魔王】エメクは本気で『命ごい』をさせた【人間】だったからだ‼
『この世に破壊と混乱を!』
母ドラゴンはその言葉と共に【自分】を育てた。
一週間に一回の食事には決まって人間が、生きたまま食卓に上がった。
【自分】は『効率良く』食事がしたいがため、簡単に殺す方法を使いたがったが、母ドラゴンはそれを許さなかった。
「人間は私達ドラゴンの敵。見つけたら真っ先に仕留めなさい!」
基本的に母ドラゴンは優しかった。──人間以外には──
──母ドラゴンの左前脚は脚首から先が無かった──
【アースドラゴン】はどうにかして逃げられる方法は無いかと考えた。
だが、そんなに都合のいい方法は見当たらない。
(カインゼル様が、二十人もいるだけで反則だ!)
【アースドラゴン】はそう考えてカインゼル達を見る。
「ん?」
ふとした疑問が震える目に入る。
「こいつら、私に脅えているのではないか⁉」
そう思って、改めて【カインゼル達】を見る。
やはりそうだ、カインゼル達の半数以上が私を見て脅えていた!
考えて見れば分かる事。【魔王】エメク・カインゼルが、こんなにたくさんいる訳が無いでは無いか! こいつらは「あの【魔王】エメクとは別のモノ!
確認のために、【アースドラゴン】は大きく吠えた!
疑念は確信に変わる。こいつらはアノ【魔王】とは別人だ! たった一回吠えただけで此処まで脅える奴が、【魔王様】の訳が無い‼
そう理解した【アースドラゴン】はその【ドラゴン族】としては大き過ぎる口を開いて、
口の中に【魔法陣】が浮かび上がる、その【魔法陣】は広い場所を焼き払う。【広範囲攻撃魔法陣】であった!
口の中で【魔法陣】が回転を始める、あと数瞬でこの【ドラゴンの間】全てを焼き尽くす、【ドラゴンブレス】が放たれようとした時。今年で十八歳になる【弓兵】カゲル・カインゼルが。【アースドラゴン】の口の中に【鉄製の矢先】が付けられた弓矢を放った!
『鉄は魔法を無散させる』
それは誰が使おうとも。【ドラゴン】だろうが。【妖精】だろうが。例えそれが【神】であっても。『マナやオド』で構成された【神秘】のチカラは、『鉄』に触れると構造を維持出来ない。
【ドラゴンブレス】であってもソレは変わらない。例え【ドラゴンブレス】が、今まさに放たれる瞬間であっても同じ事であった。
【アースドラゴン】がのたうち回っていた。
お碗を伏せた様なこの【ドラゴン】の住み家を、一瞬で【火炎地獄】と化す【ドラゴンブレス】が、吐き出されずに【アースドラゴン】の口の中で燃え広がったのだ‼ 無事で済むわけが無い‼
【アースドラゴン】は静かになった、死んでしまった訳では無い。だが、最早戦える状態では無い。胃の中や肺の一部が焼かれたのだ。死なないでいるのが不思議な状態だった。
何かが外れる音をケイ・カインゼルは聞いた。
ケイは辺りを見回す。
「どうかしましたか?」
アレク・カインゼルが、頭二つ分背の低いそれでいながら。最高齢のケイ・カインゼルの異変に気が付く。
「何かが外れる音を聞いたよう…あっ閂が外れている‼」
【ドラゴンの間】を塞いでいた門の閂が地面に落ちていた。
「つまりここは、『もう通っても良い』とゆう事でしょうか?」
アレク・カインゼルと同じ年の、アラン・カインゼルがそう聞いて来る。
「そう言う事──になるのだろうねえ」
ケイ・カインゼルはそう言った後にこう続けた。
「【アースドラゴン】は瀕死の重傷。後少しで殺せるそれならば門を開放して、【アースドラゴン】の命を守る、という事じゃあ無いかな?」
アレク・カインゼルは少し考えて、この【アースドラゴン】を一人で無力化したカゲル・カインゼルを呼んだ。
「お前に部下を三人つける、何かあったらこいつを殺して良い。此処の門を守ってくれ!」
カゲル・カインゼルは、『敬礼』をしてこう言った。
「何があっても守り抜きます!」
カゲル・カインゼルは、子宝に恵まれなかった何処かの国の、軍人の養子として育てられたのだと後で聞いた。
もっともその家も、最近起こった内戦によって断絶し。実子では無いという事で国から放り出された──との事だった。
そして今は、カインゼル・キャラバンで暮らしているのだとか。
「人生何が起きるか解かりません」
そう言った彼に頷くしか無いケイだった。
3455文字だそうです。
それでは皆さん、次回も読んで頂けると嬉しいです。
では、又お会いしましょう。




