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その手にツルギがある限り!  作者: さんごく


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カインゼル達。

「エメク・カインゼル…。それが【魔王】エメクのフルネームなのか」

 ケイ・カインゼルが腕を組みながら、まるで牛の様に名前を反芻する。

「こう言っちゃなんだがケイよ、偉く簡単に信じるのう?」

 今から二十年分年を取った、頭の禿げた代わりにあごひげを伸ばしたヤビー・コルボがそう言うと。外見は十代前半に見えるケイ・カインゼルが、回りを見わたしてこう言った。

「此処にいる俺とよく似た“カインゼル達”を見ていると──信じざるを得ないだろう?」

 その言葉に回りに座っているカインゼル達も『そりゃそうだろう』と口々に言い合う。

「それで、エメク・カインゼルの目的は何だ? まさか若い時の自分を集めて閉じ込めて、『此処こそ私のハーレムだぁ!』と言いたいのなら、ヤビー。医者として【診察】が必要だぞ?」

 半ば本気でそう言うケイ・カインゼルだった。

「確かにそんな事の為に、此処まで大それた【魔法】を使って要るのなら。カウンセリングを受けた方が良いが勿論違う! 【魔王】──エメク・カインゼルの目的は【不死】の研究じゃ‼」

「【不死?】あいつのなりたいのは【アンデッド】なのか? それがおれ達を作る事と、どうつながるんだ?」

 ケイ・カインゼルの疑問に、『頭髪の薄くなった』ヤビー・コルボが答える。

「別に【アンデッド】になるだけが【不死】の研究じゃ無い。アイツが欲しいのは“古くなった体を補強する”材料じゃ! ケイ、お前なら『家』が古くなって住むのに困ったらどうする?」

 ケイ・カインゼルは、しばらく考えて『ハッ』とする。そして自分の回りに居る『カインゼル達』を見て言葉を発した。

「まさか、エメク・カインゼルの目的は。【魂の引っ越し】だと言うのか⁉」

 今年八十七歳になる、年を取ったヤビー・コルボが。黙って首を立てに振った。


「げせんな。」

 六十七歳になるヤビー・コルボがそういうと、二十一人いる『カインゼル達が』一斉にその発言をした、『若い』ヤビー・コルボを見る。

「確かにソレで話は通る。──じゃが、その研究は『結果的に』失敗したと聞いているぞ?」

 六十七歳のヤビー・コルボは、少し気をされつつも。八十七歳のヤビー・コルボに向かってこう言った。

「──たしか、『複製時の──何とかの劣化が、起こって──』とか何とか書いておったような?」

 ヤビー・コルボは専門外の資料を、思いだそうと試みるが上手く出来ない。

「複製時の『遺伝子の劣化』のため、二十世代でこの研究は放棄する」

 八十七歳のヤビー・コルボが、その研究結果を暗記していた為に。事無を見た──いや、『暗記』所では無く──。

「『著者、ヤビー・コルボ』ワシが二十年前に書いたモノじゃ」

 と言うとんでもない爆弾を破裂させた。

「何じゃと? ではワシは自分の『論文』を読んでおったのか? しかも『他人の研究』を盗作して──」

 若いヤビー・コルボが、年老いたヤビー・コルボに。非難めいた視線をおくる。

「やめてくださいヤビー・コルボさん。アノ頃のヤビー爺さんは、まだ幼かったおれ達を救い出して。国から国へと渡り歩く日々が続いて──」

 そう言い出したのは、二十歳ぐらいのカインゼルだった。

「すまん、ヤビー・コルボ。ワシはお前の顔に泥を塗りたくってしまった…」

「…」

 六十七歳のヤビー・コルボが、バツの悪そうな顔をする。

「仕方が無いよ【ドクター・カタストロフ】何て二つ名が付いているんじゃ、【魔術師】として雇ってもらうのはむずかしいよ」

 ケイ・カインゼルまでもが、年老いた方のヤビー・コルボを掩護に回る。

「仕方が無いのう、──まぁ、あの【二つ名】が在っては。雇う人間は少ないからのう」

 ついに六十七歳のヤビー・コルボが許す事にした。

「すまぬ!」

 そう言って老人のヤビー・コルボが、贖罪の涙を流した。


「それよりも気になる事がある!」

 ケイ・カインゼルが頭をひねりながら疑問を口に出す。

「今のカインゼル──、え?アレク⁉ それはどうも御親切に。──アレク・カインゼルさんの口ぶりだと、おれ達はあっちこっちの時間と地方に、飛ばされている様だが。ソレは一体何故なんだ?」

 ケイ・カインゼルの質問に答えたのは、やはりこの人だった。

「【魔王】エメクは実験が露呈するのを嫌って。過去へ自分の【複製】を送ったのじゃ。それもまだ不完全な【転移魔法装置】を使ってなぁ」

 そう言って年老いたヤビー・コルボが説明した。

「その為に過去へ送り出したが、自分の元へ帰って来たものは二割に満たず。この計画は失敗したからじゃ」

 老ヤビー・コルボが饒舌にしゃべる。どうやら“このヤビー・コルボ”は、【医者】だけでは無くこの分野でも、プロフェッショナルであるらしい。

「──なんでそんなにも色々と詳しいのじゃ?」

 六十七歳のヤビー・コルボが、そう疑問をぶつけてくる。

「いくら何でも詳しすぎないか? 過去に居ながら現在のワシの知らない事を⁉」

 ケイ・カインゼルはハッとする。そもそも過去に居る時点でおかしい『ヤビー・コルボが二人いる』何て話は、聞いた事が無い!

「──そうじゃなぁ、もう隠しておく意味も無い。ワシは今この世界の住人では無い。時空的にちょっとズレタ世界からやって来た者じゃ‼」


ヤビー・コルボの存在が、此処まで大きくなるとは。

謎解き回なので、まだ続きます。

それにしても、ラハス・バレンツが可哀そう。

きっと良い日があるさ!

では、次回お楽しみに。

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