エメク──。
ケイ・カインゼルとヤビー・コルボは立ちあがると、二十人のカインゼル達が一斉に座り、それぞれの持つ武器(ソードだったりメイスだったり、中にはマジック・スタッフを持つ者もいた)を自分の前に置いた。
「どうやら彼らには、抗争の意思は無い様じゃぞ?」
ヤビー・コルボはそう、ケイ・カインゼルに耳打ちすると。
「………」
ケイは少し考えて背負っている愛用のシミターを自分の前に置いた。
「これが、アノ噂に聞いたシミター…」
ケイの前に座っている、カインゼル達が羨望のまなざしで、ミナ・シェリルからもらったシミターを見つめる。中には涙を流す者達さえいた。
「…これは一体何がどうなって…」
ケイ・カインゼルがそう言い掛かったその時、カインゼル達の奥から現れた人物を見て。ケイは本当に声を失った。
「いょうケイ・カインゼル、お前さんとは久しぶりじゃのう」
二十歳程年をくったヤビー・コルボが、カインゼル達の奥から現れたのだった。
「アチョー‼」
ケイの隣で事の推移を見守っていたヤビー・コルボが、『奇声』を上げて立ち上がると。カインゼル達に囲まれたヤビー・コルボもまた。
「キョウエエエー‼」
と言う叫び声を上げて『徒手格闘』を始めだした!
ケイ・カインゼルが半ば呆れて見ていたが、ソレは二十人のカインゼル達も同様らしく。
『──ああ、こいつらは本当におれの同類なのだなぁ』
と、心の奥でケイ・カインゼルはそう思った。
「ゼイハアゼイハア、ケケ、ケイ! ワシの『徒手格闘戦』について来られるココ、こいつは。間違いなくワシ本人じゃ‼」
クリンチの体勢で息を切らしている、ヤビー・コルボの内六十七歳を今年迎える。ケイの知っているヤビー・コルボがそう言った。
「アンタら二人が弱いだけだ…」
ぼそりと、そうつぶやいたケイ・カインゼルに、回りに居るカインゼル達もただうなずいた。
黒や焦げ茶色を基調とした、血なまぐさいリビング兼実験室の中で。裸体をさらすミナ・シェリルの猿ぐつわを取って、【魔王】エメクは芝居がかった言葉と動きでこう言って見せる。
「いかがですかミナ・シェリル・サリアン、貴女の『子宮』をここまで使いこなせるこの私の腕前は?」
そう言うと【魔王】エメクは何がおかしいのか、かん高い声で大笑いをして見せた。
「私の体を、『子宮』を! こんな猟奇的な事に使う何て! おまえはやはり狂っている!」
ミナ・シェリルは何とか吐き気を収めると、涙を流して“自分の腹を痛めて”強制的に産まされた“子供の死体を見ながら、【魔王】エメクを罵倒した。
「残念です。この私の人生をかけた、この壮大な不死の実験を理解されないとは」
【魔王】エメクはそう残念がって、自分の足元を見つめた後。白い手袋を着けた右手でミナ・シェリル頬を叩いた。
灰色のローブに付いているフードを深く被り、やや早口で【魔王】エメクは喋り出す!
「いいですか姫。これらは『部品』です! この私の寿命を延ばす為のただ捨て去る部品の一部にすぎません!」
「人の死体を『部品』呼ばわりするなぁあ‼」
ミナ・シェリルは両目に涙を浮かべてそう叫んだ!
「おや。望んで産んだわけでも無い『子供』に、あいちゃくが湧いたとでも言うのですか?」
【魔王】エメクの言葉にはせせら笑いが込められていた。
「──それの何処が悪い!」
「──それの何処が悪い!」
ミナ・シェリルはそう言った。そう言って涙を流した!
ミナ・シェリルにとって【複製】の意味が解らない。だが、アノ子供の亡骸は『自分の子ども』に違いは無かった!
「──羨ましい限りです──」
【魔王】エメクはどこか落ち込んでいるように見えた。
だが、そんな数旬な対度は次の瞬間消え去って、喉の奥から湧き出る様な笑い声が。【黒い実験室】に響き渡る。
「では御見せ致しましょう、いま『貴女の息子』が何処にいるのかを!」
そう言って【魔王】エメクは、自分の着ていたローブをはぎ取った!
ミナ・シェリルは最初その行動が分からなかったが。エメクのからだを観察し続けると、ある事に気付いた。
エメクのからだには、無数のぬい傷で埋められていた。そしてその肌の色は赤褐色!
「あ、あなたはまさか?」
ミナ・シェリルは震える声でそう聞いた。
「その通り、私こそ全ての“カインゼル達”の始祖! エメク・カインゼルだよ『お母さん!』」
その言葉を聞いたミナ・シェリルは、また静かに『気絶』した。
まぁ、大体の人ならば「気づける」話の展開ですね。
この後ももう少し付き合っていただけると幸いです。
では、皆さん又お会いしましょう。




