血縁と怒り。
「ヤビー・コルボ。いくら何でもそんなお話しを信じる程、おれはバカじゃ無いぞ!」
そう言ってケイ・カインゼルは、両手で赤褐色の頬をつたう涙を拭きとって。ヤビー・コルボを睨んだ。
「解かっておるわ! 大体アノ時の少年は、今のお前より年上じゃった‼」
ヤビー・コルボはそう言うと、改めてダンジョンの床に座り直して考え始める。
「──何故あの少年……いや、青年が。四十年後のお前さんと同じ顔をしているのか。フン、答えなど一つしか無い。お前さん達は血がつながっておる。それしか無いでは無いか!」
ヤビー・コルボはさも、簡単な事の用に結論を付けて見せる。
「つまり何か? “こいつら全員”おれの血縁関係者。だと言うのか⁉」
ヤビー・コルボがランタンの明かりを強くする。
広いその部屋の中に入って来る、二十人程の“カインゼル達”が。眩しそうに眼を細めた。
その年齢は、幼い者で十歳。最も年上で三十歳前半ぐらいの幅があったが、全員に特徴として見えるのは。赤褐色の肌と癖の強い髪の毛だった。
ラハス・バレンツは、フェミール・アインの遺体をやさしく寝かせると。赤い髪の毛を一本引き抜き、その髪をペンダントの中へやさしく入れる。
「あなたと一緒の旅は忘れ無いわ」
ミーシャ・クロノスも、フェミール・アインの髪を一本抜くと。ペンダントの中へ入れる。
三人の持つペンダントの中身は同じ物だった。
それは、三人一緒に描かれた小さな『細密画』だった。
誰が欲しがったのかは忘れた。だが、フェミール・アインは嬉しそうに微笑んでこう言った。
「これで、三人いつまでも一緒だね!」
何が三人いつまでも一緒だ!
「一番喜んでいた奴が、一番はじめに行くなよ!」
ミーシャ・クロノスのくちから、嗚咽がこぼれる。
「やってくれ、ミーシャ」
『やってくれ、ミーシャ』
ラハス・バレンツの声には、感情らしいモノは感じ無かった。
そしてミーシャ・クロノスも、淡々としてそれを行った。
【炎はフェミール・アインの亡がらを、骨まで燃やしつくす!】
別に【火葬】にしなければならない【宗派】に、ラハス・バレンツもミーシャ・クロノスも入信している訳では無い。
ダンジョン内で死ぬ事は、『高確率』でモンスターの餌になってしまう為に【火葬】するのだ。
更に言えばここの悪質な【ダンジョン・マスター】が。フェミール・アインの【死体】で、【アンデッド・モンスター】を作らせない為でもある。
かつての『記憶』は無くとも、仲間と戦うのは避けたいものだ。
「おいおい、そんな簡単に仲間を【火葬】するモノじゃないぜぇ」
ラハス・バレンツが、ゆっくりと後ろを振り向く。
そこに居たのは、十代中盤ぐらいの顔を持ちながら。身長はラハス・バレンツと同じ百八十セチ・メール(約百八十センチメートル)の身長を持つ。
パンパンに筋肉が張った大男。ハンス・ログと、彼の直轄の部下である『アイアン・マッスル団』十人と。
「ええ、簡単に殺してしまうのは。面白くありません」
細長い手と足を持ち、背中まである黒い髪も含めて全身を覆う服まで。青白い顔以外は『黒』で統一している。
レクター・ドルフと、彼の親衛隊である『ブラック・ナイツ』八人の。
合計二十人が、にやつきながら部屋の中へ入って来る。
ラハス・バレンツはこう聞いた。
「お前達は、ケイ・カインゼルの部下か?」
その問いに二十人の青年達が笑い出し、この二つのボスである『ハンス・ログと、レクター・ドルフ』が答えた。
「あの年を取らない化け物は、もう我々の上司では無い」
そう言ったのはレクター・ドルフであり、そのつづきを言ったのはハンス・ログであった。
「次の仕事仲間は、【魔王】エメクと言う【魔術師】様さ‼」
ハンス・ログは。大きな声で高らかにそう宣言した。
「それは良かった」
ラハス・バレンツは安堵のため息をついた。
「あの見た目は少年には、恩があるから。おまえ達を【殺す】のに若干の気分の悪さが在るかも知れなかったが。今現在のお前達を殺すのに、微塵の後悔さえ無い!」
ラハス・バレンツはそう言うと、左の腰に下げているブロードソードを引き抜いた‼
次回お楽しみに。




