必殺。
【魔法戦士】が大上段に構えたバトルアックスを、ラハス・バレンツの脳天に振り下ろした。
「おっと!」
ラハス・バレンツは、両手で構えたブロードソードで斧頭を受け止めると。切っ先の先端を下斜めにしてそのまま滑らせてかわす。
『参ったな、バトルアックスだけで『命のやり取り』をして来た奴だぞ、こいつは!』
ラハス・バレンツは心の中でそうつぶやいた。
刀身でバトルアックスの一撃を逸らしたラハス・バレンツは。切っ先を下に構えた状態から力を入れて上段の構えに変えると、ブロードソードを相手の左肩に振り下ろす。
だが【魔法戦士】もその攻撃は、織り込み済みであった。
ラハス・バレンツのブロードソードが当たる瞬間、左足をサッと自分の後ろに滑らせると。頑丈に造られたブロードソードを空振りさせる。
革製のブーツが床をこする音を立てて、ラハス・バレンツと【魔法戦士】は体を左右に動かして牽制し合う。
『こいつ、上手い。まるで隙が無いじゃないか!』
ラハス・バレンツは思わずそう思う、しかもただ上手いだけでは無い!
『隙あれば、手、足の一本でも切り落として『生け捕り』にしようと考えている。まるでわたし自身を相手にしている感覚だ!』
そこまで解かるぐらいに【魔法戦士】と、自分との『差』が無かったのだ。
だからこそラハス・バレンツは、【魔法戦士】を攻めあぐねていた。
これが初見であったのなら『だまし討ちの手』は色々と在ったが、それも今では使えない!
こちらの考えている事は向こうも考えている。
当然、向こうも同じ考えを持っている!
此処で、うかつな動きをすれば『勝機』は簡単に、【魔法戦士】の元へ移ってしまう。
「それだけは嫌だな」
ラハス・バレンツはそうつぶやいた。
此処までの勝負を簡単な“ツマズキ”で失うのは『自分自身』が許せない!
だからと言ってこのまま続けるのは、時間の無駄になってしまいそうになる。
せっかく、『この町の暗部』である『チルドレンギャング』の本拠地を、教えてもらったのに。【ダンジョン地下三階の第一の部屋】で、これ以上まごまごしていては。我々三人の命の恩人である『ケイ少年』に、合わせる顔が無かった。
しかもその『チルドレンギャング』に、今回倒すべき標的である。【魔王】エメクが絡んでいるのだ!
『やるか!』
ラハス・バレンツはそう小さな声で、囁く様な声を出して一人つぶやくと。ブロードソードの切っ先を下げた。
【青銅製】のバトルアックスを、【魔法戦士】がラハス・バレンツ頭に振り下ろす! だが、当たらない。
ラハス・バレンツの着用しているヨロイは。腹部やガントレットにだけ、プレートアーマーを重ね着した。チェインメイルのハーフホーバークだった。
チェインメイルだからと言って、ヨロイがプレートアーマーより軽い訳では無い。
だが、全身にプレートアーマーを付けた相手より、圧倒的に有利になる事があった。
チェインメイルのヨロイの方が動きやすいのだった。
プレートアーマーのヨロイが、間接部分にしか可動部分が無いのに比べて。
チェインメイルは、金属製の服感覚で装着出来る(先ほども言ったが、だからと言って軽い訳では無い。事実、プレートアーマーもチェインメイルもその重さは二十キログラム程あるのだ!)。
ましてや【魔法戦士】のメインウェポンは、バトルアックス。先端に行く程重くなる造りだった。
本来、片手で使うブロードソードを。両手で持ちながら下段の構えで構える、ラハス・バレンツと。
当たり所が悪ければ『鉄製』のヘルメットさえ割る事が出来るが。長時間振り回すのには向いていない、バトルアックスと言う武器を選んだ二人の差であった。
十五分後。
【魔法戦士】は遂に片ひざを付いてしまう。
『精根尽き果てた』と言う感じで、バトルアックスを杖のように付いて荒い息をする。【魔法戦士】はもはや満足に動く事も出来なかった。
「わたしの勝ちだな」
そう言ったラハス・バレンツも、息を荒げていたが。まだ戦えるだけのスタミナを残していた。
【魔法戦士】はうなだれる。最早どの様な手も残されていないかのように。
だが、【魔法戦士】にはこの状態になっても【起死回生の手段】がその手に残っていた。
ソレは余りにも小さい武器だった。そして、余りにもあり触れた武器の為に、ラハス・バレンツはおろか、ミーシャ・クロノスやフェミール・アインでさえも忘れてしまっていた。
【魔法戦士】が、その手のひらに乗る程の【必殺】の武器を構える。
──そして。
やあっと書けたぁ!
全然書けなくなった時は、どうしようかと思ってしまいましたよ!
と言う訳で第34話でした。
次回お楽しみに。




