アースドラゴン。
「ハ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ、」
ミナ・シェリルは走った。
首から下げた【明かりの魔法】の掛かった水晶のペンダントは、ミナ・シェリルの足が地面を蹴るたびに揺れ動く。
首の下から照らされるミナ・シェリルの顔には、悲壮感に包まれていた。
「何で、こんなところに、【大型のドラゴン】が、居るのよ!」
ミナ・シェリルの後ろから【ドラゴンの鳴き声】が大きく響く!
ミナ・シェリルはかつての冒険で、まだ成長しきれていない【ドラゴン】と戦って、勝った経験はあった。
だがそれも、一人で戦って勝った訳では無い。
アノ時は『臨時に組んだパーティー』が一緒だった事と、その時の獲物がその【ドラゴン】だった事が勝因だった。
だからこそミナ・シェリルは逃げていた。
『一対一』で【ドラゴン】を相手にするのは、頭のイカレタ奴か【勇者】の仕事だった。
そしてミナ・シェリルは、そのどちらでも無かった。
「ナ、何だか。同じ場所を走っている、そんな気がする⁉」
ミナ・シェリルは、疲労困憊した頭で。そんな事を考えていた。
坑道が、突然広くなった。
新鮮な空気が、前方から流れて来る。
ミナ・シェリルは、強烈な既視感を感じる。
「──こんなことを考えるのは、よっぽどのひねくれ者か、サディストよ!」
ミナ・シェリルの前には、大きな空間が広がっている。
空間はお碗を伏せたような構造をしていて、直径百メール(約百メートル)はあった。
天井には明かり取り用なのか、二十メール程の穴が開いていて。月明かりがさし込んでいた。
そしてその真ん中に、大型の【ドラゴン】が鎮座していた。
ミナ・シェリルは壁にもたれかかって、水筒から水を飲む。
よく見るとその【ドラゴン】は、おとぎ話に出てくる【ドラゴン】とは、若干違った。
首は普通の【ドラゴン】より短かった。
その代わり前脚が大きく発達しており。ツバサも飛ぶには短い。
「これが【アースドラゴン】と言われるタイプか」
ミナ・シェリルは誰に話すでも無く、そうつぶやいた。
『ホウ、良く知っておるなあ、人のメスよ』
「え?」
ミナ・シェリルが周りを見るが、人はいなかった。
『どこを見ているか、人のメスよ。私だ、わたし!』
ミナ・シェリルは恐る恐る【アースドラゴン】を見る。
「あなた、人の言葉が喋れるの?」
ミナ・シェリルの顔に驚きの表情が浮かぶ。
『当たり前であろう、この大きな頭の中には人間より、遥かに大きい頭脳があるのだぞ?』
そう言って【アースドラゴン】は、大きく発達した前脚の爪で自分の頭を突く。
「──ドラゴンってみんな、人の言葉が喋れるの?」
ミナ・シェリルはそう言って、カラになった水筒を背負い袋に突っ込んだ。
『ウーム、そうでもない。喋ろうにも『声帯』のカタチが人の言葉を喋れる構造をしていなければならない。ちなみに私の口も人の言葉を話せるようには出来ていない』
そう言いつつ、この【アースドラゴン】は流ちょうに『人の言葉』を操っていた。
「その割に、私の耳には貴方の声は【オーク】の発音より、綺麗に聞こえるわよ?」
ゴツゴツとした壁に背中を圧しつけて、ミナ・シェリルは呼吸を整える。
『【オーク】だって命ごいはする、例え声帯に無理を掛けようとも、な。そして人のメス、私の声を褒めてくれるのは嬉しいが、私は鼻で声に似た音を出しているに過ぎない』
ミナ・シェリルはチョットびっくりした後、よく【アースドラゴン】鼻の穴を見る。パクパクと動く右鼻の穴はよく見ると、確かに人間の口に見えなくはない。
「左側では話せないの?」
ミナ・シェリルの素直過ぎる問いかけに、【アースドラゴン】は行動で示した。
『もちろん話せるわ、でも何故か左鼻の穴で意思疎通しようとすると、【メス】扱いされるのよ』
その高い声で女性のような言葉使いをされると、確かに【女性が呪いでドラゴンに姿を変えられた】様に聞こえる。
「さてと、それじゃあ始めますか!」
そう言ってミナ・シェリルは、愛用の『鋼』で出来たシミターを構える。
『あぁ、やはり貴女もそう来るのですね?』
【アースドラゴン】はそう言って少し落胆する。
「仕方が無いじゃない、何度走ってもここへ来てしまう。そして【アースドラゴン】の後ろの壁には小さな門がある。だったらあなたを倒して、その門を潜らなければ『外』には出られない。違うかしら?」
『確かにその意見に間違いは無いな、ここ以外に出口は無い!』
ミナ・シェリルは、ツルギを構えて【アースドラゴン】にこう言った。
「【魔法戦士】ミナ・シェリル、参る‼」
前言を撤回する。ミナ・シェリルも充分イカレていた。
2時間遅れてしまったので、明日にします。
それにしても1843文字ではもう何とも思いません。
では、皆さん。またお会いしましょう。




