予想範囲内。
ラハス・バレンツは大きなあくびをして立っていた。
その百八十セチ・メール(約百八十センチメートル)の身体は、博物館で飾られる大理石の彫刻を思わせた。
だが、その金髪碧眼の凛々しい顔には『決して動かない彫刻』ではありえない、鋭い目付きがつけられてあった。
ラハス・バレンツが左手に持っていたモノを、【アサシンのリーダー】に投げつけた。
一瞬受け止めようとした【アサシンのリーダー】だったが。ラハス・バレンツが投げてよこした“三つ”の物体が何かを悟った彼はその場から逃げた。
ほかの【アサシン達】も、ソレが何かを知ると慌てて逃げる。
【丸い人体の一部】三つが道路に転がった。
ラハス・バレンツが、右手に持つ青銅製のブロードソードを構えて。その鍛えられた肉体をさらしてこう言った。
「さあ、次は誰がわたしの相手をしてくれるのかな?」
「……」
ラハス・バレンツと、『本来の目的』であるケイ・カインゼルを見比べて。【残りのアサシン】が、皆同じ答えを感じた。
【アサシン達】はケイ・カインゼルを取り囲んだ。
「フッ後悔するなよ?」
ケイ・カインゼルがそう言った時、【一組のアサシン達】が動いた!
毒の塗られたナイフを、逆手に握るとソレを大きく振りかぶった【一人目のアサシン】
同じく毒を塗られたナイフを、ケイ・カインゼルの左わき腹に、突き刺そうとする【二人目のアサシン】
更にケイ・カインゼルの後ろから、身体ごと突っ込んで来る【三人目のアサシン】
三人共別々の攻撃方法を見せる【アサシン達】
そのうちのどれか一つでも当たれば、ケイ・カインゼルを葬れる三者三葉の連続攻撃。
だが、視神経さえも【強化加速】しているケイにとっては、その様な動きは『脅威』では無かった。
ケイ・カインゼルを中心として、突風が吹いた!
【アサシン達】が悲鳴を上げた!
鮮血と共に三人の【アサシン】の右手首が飛んでいった。
余りの神速と、正確な攻撃に【アサシン達】は後退して行く。
「後退するんじゃない! このままでは我々はリンチで殺されるんだぞ!」
彼らにもそんな事は、百も承知だったが。だからと言ってこのままでは『標的に』殺されてしまう! 逃げる事も、だからと言って襲い掛かる事も出来ずに。ただ時間だけが過ぎて行く。
「えぇい! 使えない奴らだぜ‼」
金髪に青い瞳を持っているが、ラハス・バレンツ程の顔を持っていない。トム・ハックスが悪態をつく。
「やっぱり俺が行った方が良かったんじゃねぇか?」
「いえ、もしもの時を考えて私も行きましょう」
筋骨隆々とした身体と、鼻の下に伸ばしたチョビ髭を持つハンス・ログと。ストレートの黒い髪の毛を背中まで伸ばした、閉じているかの様に細い目を持つ。レクター・ドルフが発言する。
「──無駄でしょう。あのお方はこの十ヶ月で我々の誰と戦っても、『勝てる』存在になっております」
この中で唯一の女性、キャリー・マスが顔の目から下を白い布で覆いつつ、大きな水晶球に【魔力】を流して今現在行われている【カインゼル襲撃】の現在状況を見せていた。
「す、すすす。すみません、【魔王】エメク様。この様な時刻に大勢でききき、来てしまって」
低い身長に大きな耳と鼻を持つチョッポが、灰色のローブを着た『ここの主人』に謝っている。
「なに、構わんよ。ワシも退屈していたところだ」
そう言って【魔王】エメクは、謝り続けるチョッポを遮った。
【魔王】エメクの、何処にあるのも解からない、『屋敷』にこの五人が招待されたのは、偶然では無かった。
どちらかと言えば。チョッポの不適切な発言が原因だった。
あそこで【魔王】エメクの名前を出したのはチョット問題だった。
「まあ良いさ、どの道誰かを“勧誘”しなければならないのだから」
それに、中々楽しい『生中継』が見られたのも良い。
『ケイ・カインゼル。随分と立派に育った者だ!』
【魔王】エメクは思う。
『だが、そろそろ本来の目的に、戻ってもらわなければならない』
そして、アノ女にも自分の本来の任務に、戻って貰わなければならない!
『くつくっく、』
【魔王】エメクは笑う。今の所、誤差の範囲内で物事は進んで行っていた。
【魔王】は確信する。
『全ては計画通り! 私の研究は正確に我が考え道理に動いている!』
【魔王】エメクは言った『計画通り』だと。
だが、と僕は聞きたい「その余裕が知りたい」と。
何故なら、僕は「そんな計画を知らない」からだ!
では、次回お楽しみに。




