夜襲。
その姿を見た【アサシン達】には、あきらかな動揺が感じられた。
このランダルファ王国に存在する、『闇』その一団とされる【チルドレンギャング】を束ねていた『生きた伝説』が、今。自分達に牙をむけていた。
「殺れ」
この【アサシン達】を束ねている。声から察するに十代の【リーダー】が部下の【アサシン】をけしかけようとする。
だが、誰も動こうとはしなかった。
「どうした、相手は一人だぞ! 何を怖気づいているか‼」
【アサシンのリーダー】はイラついた声を発する。だが、誰も動こうとはしなかった。
「おい、来ないならこちらから行くぞ」
ケイ・カインゼルがそう言った時、【アサシン達】に明らかな動揺が伝わった。
実のところ【アサシン達】には実戦経験がほとんど無かった。
もしあってもそれは“事故”のようなモノだった。
だが、ケイ・カインゼルのソレは違った。
彼は生きるため、そうしなければ殺される為に自分の手を汚した。
決していばれる事では無い。最初は夜も寝られない日々が続いた。
ケイ・カインゼルは今も思っている、『殺さなければ自分が殺されていた』のだ!
ケイは深く深呼吸をして【呪文】を唱えた。【身体強化!】
【身体強化】は自分の体に流れる【オド】に、更に【マナ】を押し込むようなモノだった。
当然の事ながら、身体に無理をさせなければならない。
「ぐうう!」
ケイ・カインゼルの身体から、筋肉と骨格にきしむ音が聞こえる。
だが、やらざるを得ない。
数的にあちらの方が数は多い。そいつらと戦うのであれば、それ相応のムチャは覚悟が出来ている!
「ウオオオオオオオ‼」
カインゼルの身体が臨界点を超える! 痛みや軋みはまだあるが、それらを抑えるのは【脳内薬物】の仕事になった。
「聞いていないぞ! ケイ・カインゼルが【魔闘士】だなんて‼」
この中で一番齢を取っている(それでもこの男の年齢は十五歳位か)男は、ケイ・カインゼルを見て恐怖した。
ケイ・カインゼルを事実上この世から消した──。そう豪語していた五人の男女は知って居たのか? この男がこれ程強い相手だと!
知っていて我らを送り込んだのなら『傲慢』だ!
知らずに我らを送り込んだのなら『怠慢』だ‼
「エエイ、相手は一人だ! 数的優位でカインゼルを倒せ!」
【アサシンのリーダー】がそう叫ぶと、他の【アサシン達】もうなずく。
二組の【アサシン達】が連携して攻撃に移る。
二組六人の【アサシン達】の攻撃は、普通の【達人】ならば倒せてもおかしく無い攻撃力を、発揮させる──そう、普通の【達人】ならば。
ケイ・カインゼルがシミターを両手で構えた。
身長百五十セチ・メール(約百五十センチメートル)のケイでは、今持っているシミターは大きすぎる。
その為、どうしても両手で持たなくてはならない。
そしてケイ・カインゼルは『師匠』である、ミナ・シェリルが行う【シミター】の稽古を毎日見ていて。その千差万別な動きに魅了されていた。
──もし、武器を選べられるのなら。シミター使いになりたい!
ケイ・カインゼルはそう思い。木の棒でミナ・シェリルの動きをなぞる程、心酔していたのはミナ・シェリルと、ヤビー・コルボにとっては公然の秘密だった。
【魔闘士】ケイ・カインゼルがシミターを構えるのと、【六人のアサシン達】が毒を塗ったナイフでケイ・カインゼルに襲い掛かるのは、ほぼ同時だった!
最初に襲い掛かった【アサシン】と、二番目に襲い掛かった【アサシン】が右手首を切り落とされたのはほぼ同時だった。
だが、剣の達人であっても。残り四人のナイフはかわせなかった。そう【普通の剣の達人だったら】
ケイ・カインゼルは腰を落として回転をして、後ろから襲い掛かった【二人のアサシンの足を蹴る!】
【鉄のように固い】ケイの『水面蹴り』をくらった、【アサシン達】は足首を本来あり得ない方向に曲げられてのたうち回った。
「な⁉」
三秒にも満たない時間で四人の【アサシン達】が倒された!
「ひぇぇぇ⁉」
残った二人の【アサシン】が大慌てで仲間の元へ逃げ帰った。
「ケイ・カインゼル! お前は一体何なのだ⁉」
仮面の下に、あぶら汗を流して【アサシンのリーダー】は。辛うじてそうつぶやいた。
「さあ?」
ケイ・カインゼルはどうでもいい、そう表現する様におどけて見せた。
「貴様、ふざけているのかぁ!」
【アサシンのリーダー】がそう叫ぶと。ケイ・カインゼルは心外そうにこう言った。
「何を言っている、おれをこうしたのは他ならぬお前達じゃあ無いか」
そしてこう続ける。
「そしておそらくこの宿屋の裏口から入った、お前の可愛い部下を情け容赦無く殺して回っているのは。スファ―ク国の『公認勇者』ラハス・バレンツだ!」
そう言った瞬間。宿屋の頑丈な正面玄関を突き破って出て来た、少年の死体には頭が無かった。
「な⁉」
【アサシンのリーダー】が何事かと問おうとした時、その人物が『スファ―ク語』でこう言った。
「人がせっかく心地よく寝ていたのを邪魔したのはお前達か‼」
また間に合わなかった。
あちこち直していたら、時間が無くなりました。
しかしこのお話しは、どの様に終わるのでしょう。
では、皆さんお休みなさい。




