公認勇者。
ケイ・カインゼルとヤビー・コルボが、臨時で【勇者】ラハス・バレンツのパーティーに入ったのと、ほぼ同じ日にミナ・シェリルも行動を始めていた。
「ここから先がこの八十年間誰も入った事の無いダンジョンなの?」
「はい…そのはずなのですが…」
【冒険者組合】の受付嬢、ミシェル・ハーツはそう言って自分達の足もとを見る。
「この足跡、あきらかに子供のモノよね」
「………」
子供のモノと思われる足跡が出入りしているのを見て、ミシェル・ハーツはため息をつく。
「ここのダンジョンは何処まで調べられているの?」
そうミナ・シェリルが聞くと、ミシェル・ハーツは慌てて紙の束を調べる。
「ええっと、八十年前の『地図』では二百メール(約二百メートル)先で、落とし穴に落ちてしまい。部隊の半数が何がしかの怪我を負ってしまいまして、【衛士隊】はそれ以上の『探索』を止めてしまいました」
八十年前の落とし穴か、さすがにそのままでは無いと思うけれど。子供って意外と残酷だからもっと凶悪なワナにも注意が必要ね。
そう思いつつミナ・シェリルは、杭や板を乱暴に打ち付けただけのダンジョン入り口に手をのばす。
「行けません! どんなワナが仕掛けられているのかも解からない所に、安易に手を出したら──」
そう言って、ミシェル・ハーツはミナ・シェリルに駆け寄ろうとする!
「だいじょうぶよ、ここはただの入り口ドアだから」
そう言ってミナ・シェリルは『偽装されたドアノブ』を引っ張る。
「キャアアアアア!」
ミシェル・ハーツは落とし穴に落ちて行った。
「ミシェル・ハーツごめんなさい、まさか“前衛”が扉を開くと“後衛”の足もとに『精密に』カモフラージュされた落とし穴が開くとは。思ってもいなかったわ」
ミシェル・ハーツが落とし穴に落ちた為に出来たすり傷に、包帯を巻きながらミナ・シェリルは謝罪した。
「いいんです、私は【新米冒険者】の皆様に『こういうトラップが在るのです』と言って来た。そのトラップにマンマと引っ掛かりまして、経験をつみました! これからは“更に”しんけんにこういうトラップをお教え出来ます!」
ミシェル・ハーツがガッツポーズをとる。
「そのポジティブな考えかたは、私も好きだわ! がんばってね‼」
そう言うとミナ・シェリルは、今度こそミシェル・ハーツに手を振って。ダンジョンの中へと消えて行く。
しばらくの間手を振っていたミシェル・ハーツは、ミナ・シェリルの持つ【明かり】の魔法を込められていた、【魔法の道具】が闇へ消えるのを観察すると。小さな声でこう言った。
「【逃げた小鳥が鳥かごへ向かいました】これからの指示をお伺いします──解かりました、私はこれより【冒険者組合】へ戻り。【小鳥】が来た形跡を消して来ます」
ミシェル・ハーツは生気の無い声でそう言うと。腰に下げたダガーナイフ引き抜くと、フラフラとした足どりで【冒険者組合】へ向かった。
この城塞都市ランダルファでは、塔に住む人々を『上の民』そして、かつての坑道に住む人々を『下の民』と呼んでいるが。では、普通に地面を踏みしめて生活しているは何と呼ばれているかと言えば。これまた普通に『民』または、『中の民』と呼ばれていた。
「これはまた、立派な【魔物】を仕留めましたね!」
ヤビー・コルボがそうラハス・バレンツに通訳すると。
「襲い掛かって来た【魔物】をパーティーメンバー全員で、倒しただけです」
そう言って頭をかくと、ヤビー・コルボはこう言った。
「我々五人の力を合わせれば、このような【魔物】を倒す事なぞ容易い事です!」
周りからどよめきが起こる。
「しかし、もう少し大きな荷馬車があれば。ライオンの下半身を、引きづら無くて良かったのですがねぇ」
門番に『とんでもない獲物を仕留めて来た【冒険者】が来た!』と言われて、慌てて駆け付けた【鑑定士】がそう言うと。ラハス・バレンツにヤビー・コルボは通訳した。
「もう少し傷が少なければ、私は破産するところだった」
ラハス・バレンツがギョッとして、自分達が倒した【魔物】を見る。
確かにライオンの下半身は、かなり傷んでいる。
「解かりました、今度は傷つかないように運びます」
ヤビー・コルボは【鑑定士】にこう言った。
「私達はスファ―ク国の【勇者】です。これからもこの様な獲物に出会うでしょう。次こそはより完ぺきな獲物を渡して見せます!」
ヤビー・コルボがそう言うと、回りからどよめきが起こる。
「あれがスファ―ク国の【公認勇者】か!」
「──確かに【公認】されるだけの腕は有りそうだ!」
「認めなければなるまい、国が【公認】するだけのチカラが在る事を!」
「ヤビー・コルボさん? 何だか周りの人々から【公認】と、口々に言われているんだが。どういう意味だい?」
ラハス・バレンツがそう聞くと、ヤビー・コルボはこう言った。
「【勇者】と言うのは今まで自然発生する者と決まっていたので。【国公認の勇者】と言う者を我々は知らんのじゃよ」
ラハス・バレンツは、今さらながらショックを受ける。
確かにそうだ【勇者】の称号は本来誰が言うでもなく、その行ないによって得られるモノだとケイレル教官も言っていた。スファ―ク国では半ば当たり前に、わたしを【勇者】と呼んでくれているが、一つ国境を越えただけで誰一人わたしを【勇者】とは言わない!
「認めるべきだな、わたしはまだまだ【勇者の卵】だと言う事を」
ラハス・バレンツがそう言った時、女性の悲鳴が響いた‼
ウアー結構時間がかかった。
何が書きたいのか分からなくなっていた。
そう言う訳で旅の話を、だいぶ削りました。
では、次回お楽しみに。




