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その手にツルギがある限り!  作者: さんごく


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遠雷。

【魔力】で作られた【落とし穴】はその【魔力】を止めた瞬間、自然に盛り上がって行った。

「【勇者様】ご無事ですか?」

 地面が完全に元の姿に戻りラハス・バレンツと、脳みそを【電流】で焼かれた【グレーター・グリフォン】の死骸が転がる荒れ地に。ミーシャ・クロノスとフェミール・アインが駆け寄る。

「大丈夫だって」

 そう言って手と足を動かしてみせるラハス・バレンツ。

「それに今はわたしでは無く、この戦いで真の勝利者となった…」

 そこまで言ったラハス・バレンツ声を、フェミール・アインの叫び声がかき消す。

「キャー‼ケイ君その姿はどうしたの‼」

 シミターの鞘を杖代わりにして、『この戦いの真の勝利者』ケイ・カインゼルが。よろけながらその姿を現す。

 平地でももうすぐ雪の季節になるため、全身は見えないがそれでも。顔など布で覆っていない場所はひどい状態だった。

 ケイ・カインゼルの健康的な褐色の皮膚は、内出血の為に所どころうっすらと紫色をしていた。

「あぁ、…皆無事みたい、だ…ね……」

 そう言った瞬間、ケイ・カインゼルは釣っていた糸が切れたように。地面に崩れ落ちてしまった。

「ミーシャ彼の治療を頼む、死なせるなよ⁉」

 ラハス・バレンツがそう言うと、血の気を失い真っ青だったミーシャ・クロノスは。今度は真っ赤な顔でこう言った。

「当たり前です! この少年の命何があっても助けて見せます‼」

 そう言ってフェミール・アインの腕の中で、死んだように眠っているケイ・カインゼルのところへ向かおうとした時に。逆立った真っ白な髪を持つ初老の男性が、ミーシャの肩をポンッと叩いた。

「安心せんかい、あの子にはワシがついておる」

 突然現れたその初老の男性に、一瞬緊張がはしる。

「何せあの坊主は、このワシに命を三回も救われておるのだからのぉ」

 そう言ってヤビー・コルボは、スタスタとケイ・カインゼルの元へ歩いて行く。

「──貴方はいったい何者ですか? ケイ少年からは『流れ者の医者』そう紹介されただけですが」

 ラハス・バレンツがそう言うと、フォッフォッと笑いながらこう言った。

「そう、その通り、ワシは流れ者の医者。ヤビー・コルボじゃよ」

 未だ警戒を解いていなかった、三人の中の二人、ミーシャ・クロノスと、フェミール・アインが。その名前に反応した。

「「ドクタージェノサイド‼」」

「ほう、若いのに良く知っておったの?」

 ヤビー・コルボが大きく笑い出す。その声は地の底から響いているようだった。


「ケイ・カインゼルが消息を絶って十ヶ月になるが、未だに消息が分からね」

 トム・ハックス達が造った新しいギャング団、その会議室でイライラしながらそう言った。

「さすがにもう死んじまったんじゃないか? どこかの坑道の奥底でよぉ⁉」

 自分の筋肉と、チョビ髭をこよなく愛するハンス・ログが退屈そうに。ウロウロするトム・ハックスがこの会議室を何回まわるのかを、レクター・ドルフと賭けをしていた。

「じゃあ、何で【衛士達】がまだここら辺を探している?」

「さあ? そこまでは私も解かりません」

レクター・ドルフが何処か突き放すようにトム・ハックスに言った。

「それじゃあ困るんだよ!」

 そう言ってトム・ハックスは歩くのを止める。

「チェッ!」

 ハンス・ログが小さく舌打ちをした。

「それでは私と、チョッポで調べて見ましょうか?」

 背中まで伸ばした黒髪をわざとらしくかいて、レクター・ドルフは口元を隠す。

 ──賭けは、レクター・ドルフが勝ったようだ。

「お、お、お、俺今回はう、動けない」

 大きな耳を持つチョッポが、どもりながらそう言った。

「ああん? 何だってえ?」

 トム・ハックスが脅すように。ギリギリ“美形”に入る顔を歪ませた。

「おや、珍しいですね。どなたかと逢っているのですか?」

 レクター・ドルフが糸のように細い目を開く。

「お、俺の部下がが、凄い相手とい、今交渉してる!」

 チョッポがむねを張った。

「その人物って言うのは、信頼出来るのか?」

 チョッポは首を振る。

「信頼したら殺されるより恐ろしい事になる! でも、名前だけは言える」

「──そいつの名前は何て言うんだ?」

 トム・ハックスが小さな声でチョッポに聞いた。

 チョッポは芝居がかったしぐさで辺りを見回して小さな声で言った。

「──【魔王】エメク──」

【まじない師】キャリー・マスは眉間にシワを作った。

 ──『死神のカード』を引いたからだ──


ヤビー・コルボがドンドン、ヤバい奴になって来ました。

おっかしいなぁ、ただのわき役だったはずなのに。

──さて、どうしたら良いものか?

では次回、お会いしましょう。

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