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その手にツルギがある限り!  作者: さんごく


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17/48

呉越同舟。

 季節はもうすぐ冬になろうとしていた。

 雑草は既に枯れてしまっており、落葉樹の葉っぱも全て落ちていた。

 そんなもうすぐ雪が降り出してもおかしくない道を。一台の壊れかけた荷馬車が王都ランダルファへ向かっていた。

「寒いですラハス様」

 長く赤い髪の毛と、深紅の瞳が特徴的すぎる【魔術師】フェミール・アインが。隣に座っているラハス・バレンツの右腕に身体をこすり付ける。

「アッ、ずるいですわフェミール・アイン」

 そう言うと、【聖職者】ミーシャ・クロノスが。肩までで切り揃えた黒い髪を逆立てて、ラハス・バレンツの左腕を引っ張る。

「痛てて、二人共その位にしてくれないかな。前で座っている少年の視線もあるし」

「いい、気にするな。人間、直ぐ発情する。それ、知ってる」

 頭と左目を、黄色く変色した包帯で巻いた。ケイ・カインゼルが片言のスファ―ク語でそう言うと、隣で馬の手綱をあやつるヤビー・コルボに向かって小声で言った。

「『英雄、色を好む』って言葉は本当の事だったんだね」

 ヤビー・コルボは笑うしか無かった。

 この、珍道中がどの様に出来上がったかは、昨日までさかのぼる。


「ええ⁉ さっき出て行った貨客馬車が、今年の最終便ですって‼」

 ミーシャ・クロノスがそう叫んだ!

「どうしたんだい? 君らしくも無い大声を出して」

 そう聞いて来たのはこの国お抱えの【勇者】ラハス・バレンツだった。

「ねぇ、何があったの?」

 そう言って自然とラハス・バレンツの右腕に、体をこすり付けて来たのは【魔術師】フェミール・アインだった。

【聖職者】ミーシャ・クロノスは財布を握りしめて、ランダルファ王国のある方向を指さしてこう言った。

「来年まで待たないと、ランダルファ王国に行けなくなりました」

「ウ~ン」

「フエエ」

「ハアー」

 三人は小ギレイなカフェのテーブル席に座って悩む。

「どうしましょう…」

 ミーシャ・クロノスは頭を抱えて悩んだ。

「このままだとミッション不達成で、【勇者】の称号を取り上げられてしまう…」

 ラハス・バレンツはそう言って悩む。

「そ、その場合私達はどうなるのでしょう…」

 フェミール・アインがそう言うと、ラハス・バレンツはこう言った。

「もちろん『勇者パーティー』は解散だ」

「それだけではありません」

 ミーシャ・クロノスが話に割り込むとこう言った。

「あの私達の住んでいた家からも、強制退去させられてしまいます」

「それじゃあ今までの乱交パ…愛の営みも出来なくなるって事?」

 フェミール・アインが小さな声でそう言うと、二人は大きくうなずいた。

「じゃあそこら辺の農家で馬を三頭買って、その馬でランダルファ王国まで行くっていうのはどうなの?」

 フェミール・アインの至極もっともな提案は、だが残り二人が首を横に振って却下される。

「そのおカネは最初から予算内に入っていましたが。貴女の言う『愛の営み』を乱発したせいで真っ先に飛んで行きました」

「──私達ってそんなにやり過ぎ?」

 今さらの言葉に、ラハス・バレンツは半笑いで答えつつもこう言った。

「ランダルファ王国へ行くのが完全に閉ざされた訳でも無い」

 ミーシャ・クロノスとフェミール・アインが、あきらめの表情を浮かべていた。

「ええ、出来れば避けたいのですが」

「うう、それしか無いのかぁ、確かに海を渡る訳では無いしね」

 翌日。

 ラハス・バレンツ、ミーシャ・クロノス、フェミール・アインの三人は。まだ朝日の昇る前に町を出て行く。目指すはランダルファ王国、移動手段は徒歩!

「ウー、寒いですラハス様」

 そう言って本来の彼女ならば、ラハス・バレンツの右腕にしがみつくところだったが。今のフェミール・アインにはその様な元気も無い。

「仕方がありません。この用なすがたを【勇者】がしている事がおおやけになるのは、ラハス・バレンツ様の名前に傷がついてしまいます」

 そう言ってミーシャ・クロノスがフェミール・アインを窘める。

「そうかなあ、わたしはまるで昔に戻ったようで楽しいのだが」

 ラハス・バレンツがそう言うと。北東に続いている雑草の枯れた道を見る。

「むかしと今を混同しないでください」

 ミーシャ・クロノスがそう言って。十キ・ラム(約十キログラム)はある大きな背負い袋のベルトを直す。

「さて、それでは出発しますか」

 ラハス・バレンツはそう言うと。スキップでもしそうな足取りで、北東へ続く道を進んで行く。こうして最初の一日目は運よく進んだのだが、問題は二日目だった。

「さ、寒い…」

 フェミール・アインが震えていた。

「うん、まさか二日目で大雨を共なった北風に吹かれるとは思わなかったよ」

 ラハス・バレンツはそう言うと。言葉も出せないくらい衰弱した、ミーシャ・クロノスとフェミール・アインの二人を、抱きしめてテントの中で震えていた。

『これはシャレにならない』

 ラハス・バレンツはそう思った、今の状況はそれ程酷いのだ。

 このまま進むのは自殺行為なのは解かっていた。だが、前の街まで戻ろうにも最速で歩いても半日はかかる。

『行くのも地獄、されど帰るのも地獄だった』

 テントの中で焚き火をするのは危険だったが今は仕方が無い。それに、こうもテントの中をすきま風が出入りしていると、空気がよどむ事も無い。

「あ、ヤバい」

 ラハス・バレンツの意識も朦朧として来た。

「まさか、【勇者】パーティーを全滅に追い込んだのが冷たい風雨とは…」

 何とも情けない。いや、我々らしい、か。

 だからこんな幻覚も見てしまうのか、誰かがテントの入り口から中に入って来て。わたしの頬を叩いている幻覚…を……。

 結果から言えばこれは幻覚ではなかった。

 わたし達は偶然あの道を通って来たヤビー・コルボと言う医者と、その護衛? のケイ・カインゼルと言う少年に助けられた。

 もっとも、ヤビー・コルボ氏はスファ―ク語をしゃべる事が出来ず。ケイ少年が片言のスファ―ク語で意思疎通をする関係だったが。

 とにかくいのちは助かった。

 しかも、行き先が同じという訳で乗せてもらう事にもなった。

 我々は何と付いているのだろうか。


 こうして呉越同舟な即席パーティーが出来てしまった。

 もちろんケイもヤビーも荷馬車に乗せているのが誰なのか知っていた。

 知って居ながら乗せているのは、自分達の素性を出来るだけ隠す為だった。

『木を隠すには森の中』

 見るからにあやしい自分達の素性を隠すには、【勇者】パーティーと言うアノ三人組はまさに格好の隠れ場所であった。


エー、すでにプロットから、逸脱しております。

ケイと、ラハスは。もう少し後半で出会うはずでした、が。

あっさりと最初で出会っております。

どどど、どうしましょう。

で、では次回またお会いしましょう。

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