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その手にツルギがある限り!  作者: さんごく


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それぞれの旅立ち。

「寂しいのう」

 ヤビー・コルボはそう言うと、ワイングラスにワインを入れ一気に飲み干した」

「…」

 ケイ・カインゼルは、辺り一面雪で白くなった外を窓からぼんやりと見ている。

「確かにワシらが今どういう立場におるのかを、確かめに行くのは正しい判断なのは解かる、しかしただじっとしているのは寂しい」

「…」

 ケイは外の景色を見るのを飽きたのか。ミナ・シェリル自身から手渡された、【鉄製】のシミターを鞘から抜くと、三日前の事を思い出す。


「え? これはいったいどういう事ですか? ミナ師匠?」

 ミナ・シェリルがケイに渡してよこしたのは、真新しい一本のシミターだった。

「私には一つの夢があったんだ。一度でいいから自分で育てた【弟子】に、この手でツルギを渡してみたいって」

 ミナ・シェリルは満面の笑みを浮かべてこう言った。

「合格だ、ケイ・カインゼル。今日から帯剣を許す! これからも【剣と魔法】の修行を続けてくれると私は嬉しい」

 おれが合格? 元チルドレン・ギャングの頭が?

「ミナ・シェリルでもおれは──」

 そこから声が出てこなかった。自分が元チルドレン・ギャングの頭であってもそれでいいのか、でもその後の言葉が出て来ない。ミナ・シェリルから合格と言われた時からめがしらが熱い。

「ケイ忘れるな、その手にツルギがある限り、お前は【剣士】である事を。私はお前の過去をほとんど知らない、だからお前は胸を張ってもいいんだ! お前はこのミナ・シェリルから実力で認められたのだと!」

 ケイ・カインゼルの目から涙が流れた。

 悲しい、苦しい、痛い。そう言う感情で涙を流した事はあっても、人から認められて泣いた事は今日が初めてだった。

「ミナ師匠おれは誇ってもいいんですか? 二十八歳でも喜んでいいんですか?」

「当たり前だ」

 ミナ・シェリルはそう言った。

「そのツルギはお前の努力の成果だ、誰に何を言われてもいいじゃないか。そのツルギの重さがお前の勝ち取ったモノの重さだ」

 ケイ・カインゼルの目から大粒の涙が出る、だが両手はしっかりとツルギを抱きしめていた。誰からも奪った物ではない、このおれが自分のちからだけで勝ち取った存在。

「ケイ、鞘から抜いて見ろ」

 ケイ・カインゼルは、言われた通りに鞘から刀身を抜く。

「あ、凄く綺麗だ」

 ツルギの良し悪しなんて、今のケイには解らない。だがこのツルギが美しい事は解かる。

 まるで『ツルギのカタチをした木を伐り倒した』年輪のような波紋が綺麗だった。

「ダマスカス鋼で出来たシミターだ。私の知る限り、極東の更に先に存在する島国で使われているツルギ以外では、これ以上の『鉄製』ツルギを私は知らない」

「! そんなに貴重なツルギ何ですか?」

 ミナ・シェリルは恥ずかしそうにしながらこう言った。

「ヤビー・コルボから聞いているだろ。私は修行させる事が苦手なんだ、実際ここまでついて来たのはお前が初めてでな。チョット奮発してしまった」

 ケイ・カインゼルは、改めて自分の受け取ったツルギを見る。

 これでチョット? 冗談じゃない。これは収集家が見たら、金貨数百枚をその場で出す位の逸品だ!

「ありがとうございますミナ師匠、このツルギは大切に使います」

 ミナ・シェリルは満面の笑みを浮かべてこう言った。

「ああ、大切に使ってくれ!」


「ンあ、どうしたんじゃケイ?」

 ヤビー・コルボは外へ出て行こうとする、ケイ・カインゼルを見てそう言った。

「ああ、チョット用を足しに行こうと思って。便所へ」

「あのなぁ、嘘をつくならもうちょっとマシな嘘をつけ」

 ヤビー・コルボはそう言って、ケイ・カインゼルの姿を改めて指摘する。

「どこの世界にそんな重武装で便所へ行く奴がおるか。何じゃそのレザーアーマーは、そして腰には水筒を二つもぶら下げおって。何処の世界の便所へ行く気か? そして何よりも、背中に背負ったシミターを何処で使う気か⁉」

 刃渡り百セチ・メール(約百センチメートル)はあるシミターは、ケイ・カインゼルの身長百五十セチ・メールには、まだ長すぎる為に。やむを得ず使う時には背負うしか無かった。

「とにかくワシら二人にはおとなしくミナの帰りを──。おおぅ、何やらワシも便意を催して来た。ケイ、チョット待ってオレ、ワシも便所へ行く為に着替えて来る!」


「ラハス・バレンツ様、確かにこの命令書は有効です。ですが私には解りません! 何故我が国と半同盟関係にある、ランダルファ王国に居ると噂を流されただけの【魔王】エメクと、【勇者】が戦わなくてはならないのかが!」

 フェミール・アインが、その勝気な性格で、自国の国王バロル・スファ―クを糾弾する。

「気を付けてよ、フェミール・アイン。貴女の発言によっては、ラハス・バレンツ様のいのちが、危ないのですからね!」

 フェミール・アインは口に手を当てると、回りに聞き耳を立てている人物がいないかを確かめる。

 今彼らの居る場所は、王都から三日かかる交易街で知られる。ウード街の中心部にある、大きな噴水で知られる公園だった。

 幸いにもその様な人物はいなかったが、フェミール・アインの発言は少し過激だった。

「──以後気を付けます」

「それでは今日の宿を探しに行こうか、後数刻で夕方になりそうだし」

 今まで(自主的に)蚊帳の外にいた、ラハス・バレンツはそう提案する。

「まぁ、もうその様な時刻ですか?」

 ミーシャ・クロノスが、少し驚いてみせる。

「やだぁ、もうそんなに経っていたのですか? 早くしないと大部屋を貸し切りに出来なくなってしまう!」

 フェミール・アインがそう言うと、ラハス・バレンツは冗談を言った。

「え? 小部屋を三つでは無いのかい?」

 ミーシャ・クロノスとフェミール・アインが、ラハス・バレンツを白い目で見る。

「結局三人一緒に寝るのですから小部屋なんてとっても意味ありません」

「アーァ、ご主人様にはジョークの才能が無いのですから、これ以上寒くしないでください」

 そう言って二人は、ラハス・バレンツの腕を引っ張って宿屋へ向かった。


さぁて、ここからが本当の始まりです。

序章が長すぎましたが、まぁ、それはそれで。と言う事で。

──さて、どのような話にしようかな。

か、考えてはいるのですが、何処へ向かうかで、ストーリーは変わるので。

では、次回お楽しみに。

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