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その手にツルギがある限り!  作者: さんごく


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ラハス・バレンツ:序章五。

【ファイアードラゴン】ペテルギスが、大きく、そして辺りに響くような声で吠える!

「まったく、最近の“子供”は自分の気に入らない事があると、泣くか暴れるかしか出来ないのかしら」

 そう言ったのは、今年で二十一歳になる。赤い髪と、赤い瞳を持つフェミール・アインだった。

「本当にそう、どんな教育を親にされたのかしら?」

 つぶやきにしてはいささか大きなでそう言ったのは、右目と左目で色の違う【オッドアイ】の持ち主である黒い髪を持つ彼女も又、今年で二十一歳になるミーシャ・クロノスだった。

「良いでは無いか、そのような事を言われていると知ったら。ますます『意固地』になってしまうよ?」

 この場でただ一人の人間の男性である。昨日で二十歳になった金髪碧眼の、ラハス・バレンツが二人をたしなめた。

「ですが、ラハス様。──」

 まだ何か言いたそうな二人だったが、ラハス・バレンツはそれを止めた。

「彼らドラゴン達は、この世界の食物連鎖の頂点に立つ生物です。もちろん自分達もソレを知っているのですから、傲慢になるのも仕方がありません」

 ラハス・バレンツはそう言うと、刃渡り一メール(約一メートル)の青銅で出来た。ブロードソードを【ファイアードラゴン】に切っ先を向けてこう宣言した。

「それでは自他共に『自分達こそ最強』と思い込んでいる、あの世間知らずなドラゴンに、『現実』と言うモノを突きつけて。サクッと殺してしまいましょう」

 ラハス・バレンツは、傲慢気回り無い言葉でそう言うと。二人の女性に散開を命じた。

【魔法戦士】として育てられたこのパーティー唯一の男性である、ラハス・バレンツは、ソレが当然であるかのように最前線に立つ。

【聖職者】として育てられたミーシャ・クロノスは、メイスと言う金属製の棍棒を持っている為に。前方でも後方で支援を行う事も出来るように、やや前方寄りの位置で【遊撃兵】として、ラハス・バレンツの後ろ姿を見る位置に付く。

【魔術師】フェミール・アインはそれが正解であるかのように、一番後方で【呪文】を造っていた。

 ラハス・バレンツも【呪文】を造っていた。

【魔法戦士】である為に複雑な【呪文】は造れない、と言うか相手が造らせてくれない。

 遠方からの攻撃は、【弓兵】か【魔術師】の仕事だった。それがこの世界の常識になっていたし、前衛が【呪文】を掛けようと集中しているのを、黙って見ているバカは居ない。

 そしてそれは【ドラゴン】にとっても常識だった。

【ファイアードラゴン】ペテルギスでも、今自分の前にいる人間の男が、【呪文】をかけようとしているのはすぐに解かったが、それが逆に混乱を招いた。

「余程自分の魔法に自信があるのか、それとも単に目立ちたがり屋なのか?」

 ペテルギスはこの男はどちらなのかすぐには分からなかった。

【いかずち、我がブロードソードに入れ】

 ラハスはそうつぶやいた後、左手の人差し指と中指でソードの平をなぞる。

 次の瞬間、ラハス・バレンツの持つブロードソードが光始める。

【不可視の盾は、ラハス・バレンツを守る】

【聖職者】ミーシャ・クロノスがその職業に相応しい【魔法の盾】で、ラハス・バレンツを守る。

【氷の投げやりは、『邪竜』を貫く】

【魔術師】フェミール・アインが、遠距離から【氷系】の魔法で。ペテルギスへ最初の【一撃】を行った!

『しまった! 目の前の男に注意を向け過ぎた!』

 だが既に遅すぎた。【氷系の魔法の槍】が、ペテルギスの硬い皮を簡単に突き破った!

 ペテルギスは絶叫を上げてのたうち回る。

『何なんだ、こいつ等の連携のよさは! 今までの【冒険者達】とはまったく違う‼』

「フェミール・アイン。これではわたしが目立たないでは無いか」

 ラハス・バレンツはフェミール・アインに、愚痴をこぼす。

「だってその【ファイアードラゴン】が、隙だらけなのですもの」

「だってではありません、フェミール・アイン。【勇者】パーティーで後衛の行ないは全て、【勇者】を引き立てるモノ。そのことを『今夜は朝まで』寝ずに教えてあげます」

 フェミール・アインは、顔を真っ赤にしてこう言った。

「はい、朝までよろしくお願いします」

「そして、ミーシャ・クロノス。貴女はその事を良く知って居るので、フェミール・アインとは別に朝まで可愛がってあげます」

 フェミール・アインのお説教を、ちょっとうらやましく思っていたのが顔に出ていたミーシャ・クロノスは、その言葉を聞いて笑顔でこう言った。

「ハ、ハイ、朝までですね! ありがとうございます‼」

 ラハス・バレンツは二人にそう言うと、改めて【邪竜】ペテルギスに視線を送ってこう言った。

「さて、ペテルギス。ここでお前の役目は終わった、さっさと消えて無くなれ!」

 ペテルギスは恐怖に襲われた! このままでは殺されてしまう‼ だからペテルギスは、ドラゴンが禁忌としていた事を破ろうと考えた。

 それは一部のドラゴンは、『人』と会話が出来る。という事だった。

「どう…」

 だが、そこまでで、会話の機会は失われた。

【ファイアードラゴン】ペテルギスの、首と胴体は切り離された。

「──全てが遅い、遅すぎる!」

 ラハス・バレンツはそう言って、ブロードソードを鞘に入れる。

「ねえ、ミーシャ・クロノス。あのドラゴン、最後の鳴き声がおかしく無かった?」

【聖職者】である、ミーシャ・クロノスはこう答えた。

「世の中には知らない事も多いものよ。フェミール・アイン」


「報告は以上ですケイレル教官、詳しくは二週間後までに報告書で──」

「その報告書は要らない、ラハス・バレンツ。緊急要件が出来たので、そちらの方の解決を最優先でたのむ」

 いつもの余裕をかなぐり捨てて、必死に書類をめくるその目には、この数日まともに寝ていないのか。殺意すら見えるようだった。

「これが命令書だ、一週間で準備を整えて至急かつ速やかに活動してくれ」

 ラハス・バレンツは書類をパラパラとめくって、ある一文を読んで珍しく眉をしかめる。

「この命令書は本当に我々への物ですか? 部署を間違えていませんか?」

「間違いなくお前達への命令書だ、多少不満があっても国王の署名もある」

 最後の書類には確かに国王の署名がある。ラハス・バレンツは、多少の不満があったがソレを飲み込むと、ラハス・バレンツはケイレル教官に敬礼して教官室を出て行く。


 書類の最後にはこう書かれていた。

 ──ランダルファ王国へ赴き、魔王エメクを暗殺せよ──


さて、これで序章は終わります。

これからが、本編です、長ったぁ。

でも、序章でここまで長いと、本編はどうなるのやら。

では、次回お楽しみに。


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