ケイ・カインゼル:序章八。
「とはいっても、ケイ・カインゼルよ。実のところお前に教えられる【魔法】は、わしにはたった一つしか無いのだが…」
ケイは。ヤビー・コルボのその言葉を、両手を上げたままポカンと聞いていたが。それでもうれしかった。【魔法】を使える、ただそれだけでいい。
「派手さは無いぞ?」
ヤビー・コルボはそう言った。
「おう‼」
ケイ・カインゼルはそう答えた!
「【炎の矢】や【氷のつぶて】のような『見栄えの良い』モノでは無い!」
ヤビー・コルボはそう断言した。
「お、おう!」
ケイの言葉に、若干の失望感が漂う。
「ハッキリ言うと、お前さんには教えたく無かった」
ヤビー・コルボはとても残念そうにつぶやいた。
「…いったいおれに何を教えるつもりなんだ?」
ヤビーはケイを手招きする。恐る恐る近ずくケイとミナ・シェリル。
「なぜ一緒についてくるか、ミナ・シェリル」
それを聞いたミナ・シェリルはこう答えた。
「だってドクター、あなたが教える【魔法】次第で、私が教える【魔法】も変わりますから」
ヤビーはあたまを抱えつつ。ミナが聞き耳を立てている中で、ケイに教える【呪文の種類】を教える。
「──ええ?」
ケイ・カインゼルは驚きの声をあげる。
「素晴らしいです。ドクターヤビー・コルボ!」
ミナ・シェリルは感嘆の声をあげる。
「アーア、言っちゃったよ。わしもまだまだ青いなぁ」
ヤビー・コルボは、さっそく後悔の念を放つ。
「そんな家宝みたいな【魔術】を教えるなんて、ヤビー。本当に良いのか?」
「──構わん! わしも男だ! これも餞別だ!」
「餞別ってヤビー、あの坑道街を出て行く気なのか⁉」
ケイ・カインゼルはヤビーを見る。するとヤビー・コルボは少し寂しそうに笑った。
「ケイよ、わしも若くない。最後の最後はやっぱり、故郷で死にたいんじゃ…」
ケイ・カインゼルは、その時初めて『老いる』という事を考えた。
『故郷で死ぬ』
ケイはあの坑道街で、死を迎える事を望むだろうか?
まだ分からない。何故なら世界の広さにまだ、馴染めてさえ居ないのだから。
数十年後まだその時に、命があったら考えれば良い。
「う~ん。ドクターヤビー・コルボが、そちらの【魔法】を教えるのなら。私は【身体強化】を教えるべきね!」
ミナ・シェリルはそう言った。
「【身体強化?】それはいったいどの様な【魔法】だ?」
ケイ・カインゼルがそう聞くと、ミナ・シェリルは一個の石を手に取る。
「ふん‼」
ミナが指にチカラを込める。すると、手の中の石があっさりと砕けた。
「わかった? これが【身体強化】の【魔法】よ!」
そう言ってミナは、五つに砕けた石を暖炉に放りこむ。
「すっげぇ」
ケイ・カインゼルは、素直にそう褒めたたえる。
「あんまり褒めないでよ、実は私この【魔法】あんまり得意じゃあ無いのだから」
「えええ⁉」
ケイは今度こそ大声を出しておどろいた。石を片手で砕くだけでも驚きなのに、その【魔法】が不得意だと言う事にだ!
「ケイ、昼間私の言った事おぼえている?」
「もちろんだ! おれはちっこいとか、軽いとか色々言われて──そうか!」
ミナはニコニコしながらこう言った。
「この【魔法】を覚えれば、ハンデは無くなる。そう思わない?」
ケイ・カインゼルはただうなずくだけだった。
ケイ・カインゼル編8話、でした。
これからケイの、反撃の一歩が始まります。
では、次回お楽しみに。
あ! ポイントと、感想を送ってくれた方。
たいへん感謝申し上げます。
またくださいね。では、本当に次回お楽しみに。




