表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

夢なのかもしれない

「……先生……!!」


 僕は車から降り、建物を眺める。

 僕の目の前にはあのマンションがそびえ立っていた。


「約束……したからな」


 先生はそう言うと優しく僕の頭に触れる。



 僕は思わず涙が出そうになった。


 だって。

 だってここは、ケンタと一緒に良く来た『秘密基地』だったから。



 マンションが出来る前までは、広々とした空き地で、ちょと高台に位置しているから星を見るのにうってつけの場所だったんだ。

 僕とケンタの秘密基地。



「このマンションを見たとき、なぜかここに住まなくちゃいけないって思ったんだ。

――何故かは最近まで知らなかったんだけど……『秘密基地』だったんだな……」


 ぽつりと呟くその言葉は僕に向けてなのか、加藤自身に向けてなのか――またはその両方なのか。

 相槌なんかを打ってあげれば良かったのかもしれないけど、僕は驚きでいっぱいだったから、ただマンションを見つめていた。


「コウ? とりあえず中に入ろうか?

セッティングもしなきゃいけないし」


 加藤がそう言い、僕をマンションの中に促す。


 

 僕は夢でも見ているんじゃないだろうか?

 ぼんやりと歩く僕はなんだかふわふわとした、現実的じゃないような感覚に陥っている。

 

 あ、そうか。

 

 これ、きっと夢なんだ。


 そう。夢。


 夢。


 夢か。


 ……。



 ――もし、夢だとしたら……どこから何処までが夢、なのかな?




 そんなことをぼんやり考えていたら、加藤の顔が僕の目の前にいつの間にかあって驚いた。



「なっ! なんですかっ! 」


 僕は加藤の肩を両腕で突っぱねる。


「それを言いたいのはこっちなんだけどな」


 加藤はやれやれといった感じで僕から離れると肩をすくませた。


「観測ののセッティングするから手伝ってくれって言ってるんだけどな」


「観測……あっ! す、すみませんっ」


 僕はあたふたと天体望遠鏡のケースを開ける。

 すると中身は既になかった。


「あれ? 」


「おい。コウ。

それはここに出してあるってば」


 加藤はくくくっと笑いながら「いつもの観測用の用紙の方だよ」と僕に教えてくれた。



 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ