女の子って大変なんだな
「ねぇ浩太。ちゃんと先生の話を聞くのよ?
あとは――」
「分かったって! もういいから!
じゃあ行ってくるから! 」
僕はうるさい母の話を無理やり終わらせ、玄関を後にした。
今日は待ちに待った「第三回星空の会」があるのだ。
じかに見る『天体ショー』に僕の胸は躍る。
それに天気は快晴。天気予報によると夜も快晴らしい。
絶好の天体観測日和に僕は思わず顔をほころばせた。
がらりと部室のドアを開けると、そこには顧問の先生――加藤の姿しか見えない。
「先生こんにちわ。
部長は――やっぱり無理でしたか? 」
僕は部屋を見渡しながら質問をした。
星が大好きな部長。
実は彼女はこの「星空の会」に出席したことはない。
理由は両親が反対しているからだ。
女子が沢山いる部活ならともかく、うちの部は部長と僕の二人のみ。
そして顧問が若い男と来ている。
年頃の娘をもつ両親が警戒しても仕方がないのだとは思うけど……あんなに星を愛している部長がこの会に出席できないのだ。
がっかりしている部長の姿が目にうかぶ。
「残念だけど、仕方ないよ。
部長には後で写真をプレゼントしてやろうな」
加藤はそう言うとおもむろに椅子から立ち上がった。
「そうそう。今回はちょっと趣向を変えてみることにしたんだ」
にかりと加藤が笑う。
そのなんともいえない含みの帯びた笑顔に、僕は思わずどきりとした。