第三回星空の会
「先生。今度の『星空の会』はやっぱりペルセウス流星群ですよね? 」
僕こと笹田 孝太は天体望遠鏡の手入れをしながら質問をする。
「ん? そうに決まってるだろ?
なんてったって今世紀最大の天体ショーだしな。
早く見てみたいよなぁ」
このうっとりとした声で返事をしている人物こそ、僕の担任であり天文同好会の顧問、加藤 健一だ。
人懐っこい笑顔が女子に人気の23歳。
ひそかに加藤のファンクラブなるものまであるらしい。
――以外に『イケメン』なんだよな。
そして――数ヶ月前に亡くなった僕の飼い犬、ケンタの生まれ変わり……。
最初のうちはからかわれているんじゃないかと疑ったけど、加藤の話す内容はケンタ以外知らないようなものが多くて、認めざるを得ない感じだ。
そんなことを考えながらぼんやり加藤を見つめていると、呼んでもいないのに僕の後ろに来てあごを頭に乗せた。
「……先生? ちょっとやめてくれませんかね」
僕は自分の頭にある先生の顔をどかそうと手を伸ばしたけど、加藤の手にあっさり捕まってしまう。
「こうしてると落ち着くんだよな~。
俺、コウの匂い好きだし」
「ちょっ! 仮にも今は部活中ですよ!
こんなところ誰かに見られたらどうするんですかっ! 」
僕は加藤から逃れようともがいたけど、力の差は歴然でまさに蛇に睨まれたかえる状態だ。(あれ? 違うか?? )
「おいこら! ケン――っ! 」
『ケンタ』と叫んでる途中で加藤は僕からすっと離れた。
彼は部室への唯一のドアをじっと見つめて「残念」と小さく呟く。
「? なんだよ残念って」僕が思ったその時、部室のドアが勢い良くがらりと開いた。
「遅くなりました~ 」
息を切らせて部長――佐々木 美也子先輩が入ってきた。
ちなみに天文同好会の部員は僕と美也子先輩の2人だけだ。
「じゃあ部員もそろったし、そろそろ来週に迫った星空の会の話でもするか」
加藤がプリントを僕と美也子先輩に配る。
そこには『第3回星空の会』と書いてあった。