軽率な「ライドシェア」は質の悪化で交通事故多発へ! 国は課題を事前に精査せよ!
筆者:
「タクシー」と聞いて思い出すのは、
初めて行った場所でタクシー代をケチって歩いて挙句の果てに道に迷って、結局電車に乗りなおした上でタクシーにも乗って損したことがあるのを思い出しましたね(笑)。
(待ち合わせ時間には辛うじて間に合いました)
ということで、本日もよろしくお願いします。
質問者:
(いや、初めての場所の上に方向音痴なら最初からタクシー乗れよ……)
今回はライドシェアについてのお話の様ですが、そもそも何が問題なんですか?
タクシーが捕まりやすくなるかもしれないんですよね?
推進している政治家の方はライドシェアの規制緩和は“ノーリスクハイリターン”とまでおっしゃっているようなのですが……。
筆者:
まずは現状の法案の状況について整理してみましょう。
現在の道路運送法では、「有償」で自動車を使用して人を運送する事業を旅客自動車運送事業と定義して、旅客自動車運送事業を行う場合には、国土交通大臣から許可を受けることを求めています(いわゆる白タクと呼ばれる)。
この点、運送提供型ライドシェアはこの白タクに含まれ、運送サービスを提供する事業者が、ユーザーに対し、有償で運送サービスを提供する存在です。
現状では違法なのでこれを規制緩和しようという話が出ているわけです。
ちなみに「無償」で自動車を使用して人を運送するボランティアのような事業に関しては合法とされています。
現在の日本でも「notteco」というアプリがあり、それでのマッチングサービスがあります。
ただ、無償での相乗りという条件はちょっと厳しく実際は気軽にマッチできるものではありません。
質問者:
どうして有償では法規制がされているんでしょうか?
筆者:
そもそも、今回は“ライドシェア”という名前ではあるのですが、タクシーの規制緩和をして以前失敗をしているんですね。
小泉純一郎政権時代の2002年に実施された道路運送法改正法案による規制緩和で、タクシー業界は混乱に巻き込まれた。事業者や台数は急激に増加し、それに伴いドライバー1人ひとりの売り上げは急降下したようなんです。
あまりにもそれまでのタクシーの方が苦しんだことから「タクシー破壊法」という二つ名まで付いたそうです。
質問者:
なんだかタクシーの数が増えると競争が起きてサービスの質が向上しそうなものですが……。
筆者:
残念ながら実際には、「タクシー運転手としてのプロ意識」が低い方が増えたために実際は質が下がったようなのです。
『読売新聞』2006年8月26日の記事では、タクシーとハイヤーが原因となった交通事故は2002年から2005年にかけて「6.2%」増加したと、運転技術にも問題があります。
仙台市内ではタクシーが増えたことで、乗り場でのマナー悪化や乗客の奪い合いで事故も多発し国会でも取り上げられました。
こうした、サービスの低下からタクシー離れが進み、全国各地でのドライバーの収入が減少を受けて、2009年10月には「タクシー適正化・活性化法」によって供給は抑制されることになりました。
2015年2月、ウーバーが福岡市と周辺市町でライドシェアサービスの実証実験を開始しましたが、国土交通省はすぐに「白タク」と判断し中止させている状況で今に至っています。
質問者:
なるほど……しかし、今になってどうしてこのライドシェアなどの規制緩和の動きになっているのでしょうか?
筆者:
日本全国のタクシー会社で働く運転手の数は、23万人あまりで(23年3月末時点)、コロナ禍前の4年前からおよそ20%減少しています。
この減少は運転手の高齢化に加えて、新型コロナによる収入の減少などで離職がさらに進んだためとみられています。
更に運送業の「2024年問題」というものがあります。
これについてはまた別に詳しく解説しますが、簡単に言えば労働時間の規制によって2024年4月からタクシーの運送能力が下がるのです。
(そもそもこの制度に問題を感じますが)
また、インバウンド需要の増加によって外国人がタクシーを利用し日本人がタクシーを使えないといった現象が起きています。
(これも、電車などの公共交通機関を使うように促せばいいような気もするけど……)
さらに地方の過疎化や高齢者の免許返納、公共交通機関の廃止・定期便減少などによって“地方の足”についても課題になってきています。
それに対しての問題解決案としてテクノロジーの技術が進歩しています。
2002年の規制緩和の失敗の大きな一因は需給のミスマッチによるサービスと価格の崩壊でした。
対応する方策の一つとして、相乗りの導入も同時に検討しているようです。
この制度は、「notteco」のような配車アプリにより、目的地が近い利用者同士をマッチングしてタクシーを配車し、1台に複数の利用者が相乗りすることで、
1人当たり運賃の低廉化と旅客運送の効率化を図る構想のようです。
質問者:
なるほど、喫緊の課題の上にテクノロジーでの解決が期待されているわけですね?
筆者:
しかしながら、単にテクノロジーの進化では解決できない問題も山積みしているのです。
大きな問題としては安全面です。
というのもウーバーなどのプラットフォーマーは、登録ユーザーやドライバーの不適切な行為について責任を負う場合があるが基本的には運転者が賠償する必要があるといった問題があまして、(規制を緩和した国家についても何の賠償請求も受け付けない)
運転者に保険などの面が依存していくわけです。
世界のライドシェアで安く乗れるのは、運転者が業務用の保険に入ってないからというのが大きい面もあり、その分安全面が犠牲になっているのです。
日本の自動車保険も種類によっては同乗者に対応していないものがあるのでそういった規則についてはどうするのか? といったことの議論がまず必要です。
※自動車損害賠償保障法(自賠法)では、自動車で人身事故をおこして、人に怪我を負わせるなどの損害を与えた場合には、「運行供用者」が責任を負うこととされています。
質問者:
確かに、タクシーの数が増えても安全面が担保されなくては意味がありませんね……。
筆者:
また、このライドシェアについて
届け出制にするのか?
違反点数があっても良いのか?
トラブルが起きた時の為の車内を録画出来るドライブレコーダーの有無など、
きちんと細部まで決める必要があるでしょう。
またタクシーを運行する2種免許の営業車ナンバーは毎年車検を受け、3ヶ月毎の定期点検を受けなければならなかったり、
運転手はアルコールチェックをして0.00でなければ出庫できないなどの規則があります。
これまでは、これらをクリアした人たちが「タクシー運転手」として質が担保されていたわけですが、「規制緩和」というのはその分リスクも伴うわけです。
質問者:
確かにどれも重要な内容ですね……それのままでしたら結局規制緩和はしないということと同じになるでしょうし……。
筆者:
仮にこれらの質が担保されないとなると
運転者の氏名や所有者氏名、交通違反歴、どういう保険が入っているかなどを
誰でもわかる様な国が認定した表示が必要になると思います。
つまり信用スコアのようなものが必要になり殺伐としてきます。
そして結局スコアが低い人は配車アプリではじくようなシステムもできると思うので結局のところ台数が増えないのではないか? と推測されてしまいます。
質問者:
なるほど、安全が無くなるかややこしくなるかの2択という状況になりかねないんですね……。
筆者:
安全が担保されなくては常に二大不安がつきまといます。
1つは本当に目的地に行ってくれるのか、2つめはぼったくりに遭うんじゃないか……と、そうなるとスコア制度になっていくのだと僕は思います。
質問者:
しかしながら、どうしてこんなややこしいことを、やろうとするのでしょうか?
筆者:
毎回同じようなことで恐縮なんですけど、純粋に政治家の想定能力が足りないことが1つ。もう一つは利権でしょうね。
利権というのはウーバーなどの外資を日本に参入しやすくしてキックバックを貰うのでしょう。。
しかし、海外ではドライバーの取り分の低下や効率も悪化するなど、ライドシェアビジネスの根本的な課題が浮き彫りになりつつあります。
このことから、海外ではライドシェアの規制が再度増えている傾向にあるのです
こうした背景を鑑みると僕はちょっとライドシェアというのは早いと思うんですよ。
質問者:
どういうことでしょうか?
筆者:
シェアすること自体は時代の流れとして間違っているわけでは無いと思うんです。
例えばシェアハウス、ブランド商品シェア、自転車のレンタルシェア、別荘のレンタルなどがあります。
しかし、交通の質の低下はタクシーに乗っていない人に対しても被害を及ぼすためにうかうかと外を歩くこともできなくなってしまうんです。
ですが、タクシーをシェアする社会というのはちょっと近未来だと思います。
最低でも完全自動運転が実現して、無人でありながら安全で運動技術の担保されたり、詐欺などが起きない環境を確立してからだと僕は思っています。
毎日新聞の23年10月20日の記事によりますと
『ホンダは19日、自動運転車両を使った無人タクシー事業を2026年初頭に東京都心で始めると発表した。米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)やGM子会社と新会社を立ち上げ、共同で実施する。』
ということもあるようですから、自動運転によるライドシェアはそう遠い未来ではないように僕は思っています。
この無人タクシー事業の実証実験の後に検討しても問題は無いように思えます。。
質問者:
なるほど、コンセプトとしては間違っていないということですか……。
筆者:
やはり、なぜ規制があるのか? ということを考えていくとこの問題が分かってくると思います。
例えば、法律知識が無い人が弁護士にならないようにするためや
医学の知識のない人が医者にならないのと同じように
現行の法律では過剰な競争を抑制するとともに、タクシードライバーになるために法令・地理試験(東京、神奈川、大阪など一部限定)の合格や運転技術の試験を課しているのです。
国民の交通の安全を担保するためにタクシーの規制は存在していると言っても過言ではありません。
質問者:
しかし思うんですけど、交通インフラの問題が深刻化しつつあるからこのライドシェアの議論が過熱しているんですよね?
これについてはどう解消したらいいんでしょうか?
筆者:
僕が思うにタクシー事業者の給与低下やドライバーの環境を整えるのが解決策だと思います。
タクシーが捕まらないのはドライバーが少ないからだろうし、ドライバーが少ないのは勤務条件が悪いからでしょう。
地方インフラが衰退しているのは民営化してしまったせいです。
バスや電車の地方インフラは採算を度外視して公営化に戻したほうが良いように思えます。
この点に政治は力を入れて予算を割いたほうが良いように感じます。
仮にタクシー関連で規制緩和をするのであれば、現在は2種免許の受験資格が『20歳以上かつ普通免許保有歴2年以上』、特別な教習を修了すると『19歳以上かつ、普通免許保有歴1年以上』という規定ですが、もう高校生から講習を受ければ受験ができるようにするとかそういう感じですかね。
質問者:
なるほど……自動運転までは確かにお金を払って人員確保するしかないですね……。
高卒の方も運転手にすぐなれる可能性があるのは大きそうです。
筆者:
自動運転の実証実験も積極的に行うべきでしょうね。
数が増えても質が担保できなければ何も意味が無いので、少なくとも現在検討されそうな“ライドシェア”というのはかなり危険だと僕は思っています。
少なくとも色々なリスクや論点があるために見切り発車だけはすべきではないですし、ライドシェアが「ローリスクハイリターン」とさも良い事のようにおっしゃる政治家の方々は勉強不足か利益誘導のために言っているようにしか見えないというのが僕の見解です。
ということでここまでご覧いただきありがとうございます。
今後もこのような日本の政治・経済、国際情勢などの問題についてエッセイを書いていきます。よろしければ今後もよろしくお願いします。