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学ぼう! 丸木村の歴史!!

朽木斬継の襲撃から一日経った今日、僕は村の資料館を訪れていた。

訪れた目的は単純明快、丸太至上主義について調べるためだ。


「大体、丸太至上主義って何なんだ…… 」


 最近、付近のものが丸太過ぎて違和感が薄れていたけれどやはりこの丸太至上主義は異様だ。

 丸太の至上主義なんてまるで意味が分からない。

 それに丸木村の人達が何故ここまで盲目的に丸太至上主義を信奉しているのかも全くもって理解出来ない。

 だから、その真相を知ろうとこうして足を伸ばしたのだ。


「それじゃあ、行こうか」


 資料館の木製ドアを開くと埃と材木が混じった様な匂いがした。

 どうやら来館者自体はそれ程多くは無いらしく、辺りはシーンと静まり返っている。

 周囲を見回すと日焼けした写真や丸木村の地図が展示されていた。


「案外丸木村って小さいんだなあ」


 衛星写真に写る丸木村は思ったよりもずっと小さく、寂れて見えた。

 写真の右下には赤字で五年前の日付が示されている。


「あれ、五年前のこの村は今よりずっと寂れてる……?」


 そう言えば丸太至上主義を導入してから爆発的に活性化したのだったか。

 となると丸太至上主義が導入されたのは極々最近と言う事になる。


「いやいや、無い無い無い」


 突飛な考えを否定するように一人で頭を横に振る。

 たった数年で丸太至上主義を認知させた挙句、丸木村の住人のほぼ全員を丸太の狂人に変えてしまうなんて真似が出来るとは思えなかったからだ。

 しかし、村長の手によって実際そうなっている訳で、その事実に薄ら寒さを覚えた。

 そのまま順路に従い今度は丸木村の歴史紹介のコーナーに移動する。

 そこに記述されているのは相変わらず寒村としての丸木村ばかりで、丸太のディストピアとしての丸木村の姿は見当たらない。


「……【神樹祭】?」


 幾つかある記述の中でも【神樹祭】と言う文字が目に入った。

 委員長がこの村の神樹である丸木杉を常用していると聞いたから目に着いたのかもしれない。……神樹でチェーンソーと戦うなよと思わないでもないけれど。


「えーと、何々。『【神樹祭】はこの村独特の風習で、古来から行われている伝統的な祭事である。村の人々は祭具殿の中に奉納されたこの村のみに自生する特殊な杉、丸木杉に祈りを捧げて村の団結を確認する』……」


 七夕、のようなものだろうか。

 よく分からないが丸木村ではかなり重要な祭りの様に感じられる。


「おやおや、奇遇じゃあないか。樹君」


 ふと、背後から声を掛けられた。

 ピクリと肩を跳ね上げながら声の方向へ向き直ると、そこには一人の中年男性の姿があった。

 その人物はこの村の村長にして丸太至上主義を導入した張本人、樹々茂その人だった。


「この村の歴史の勉強かね。実に良い心掛けだ」


「……は、はい」


 目の前に丸太至上主義を打ち立てた狂気の男が居ると思うと何だか妙な怖気を覚える。


「【神樹祭】。素晴らしい催しとは思わないかね。村社会 の息付く丸木村の象徴と言っても過言では無いだろう。村人達が集まり一つの木を囲み、祈り、団結する。実に村社会らしい営みだ」


「そう、ですね」


「しかし、こんな話を知っているかね?」


 そこまで言うと村長は声のトーンを数段落とした。


「その昔、【神樹祭】を前時代的だと廃絶しようとした村人がいた。その村人はそれだけで他の村人からの反感を買い、村で生活が出来なくなってしまった。…… 実に悲 しい話だ。村は連帯意識が強い。そしてマイノリティーを排除しようとする傾向もまた強い。余計な心配かも知れないが、君も心しておきたまえ」


 ゾクリと、背筋が震えた。

 それはまるで僕が丸太至上主義に対して抱いている反発的な感情を看破しているかのような物言いだった。

  何もかもを見透かされているかのような気がして徐々に血の気が引いていくのが分かる。


「ところで……君の丸太は何処かね? 姿が無い様に見える」


「ッ!!」


 そこには僕を歓迎してくれた丸太のような温かみのある村長はいなかった。

 そこにいるのは氷のように冷たい視線を向ける村の絶対的な支配者だった。

 ――格が、違い過ぎる。


「せ、先日の朽木との戦いで損耗しているので今は手元 に無いです」


「成る程……。君は立派に丸木人としての務めを果たしているらしい。実に素晴らしい事だ。これからも丸木村の益々の繁栄の為に励むと良い」


「は、はいっ」


 僕の返事を聞くと村長は機嫌良くその場を立ち去って行った。

 それと同時に僕はその場に崩れ落ちる。


「はぁ、はぁ、何なんだ……一体。丸木村に一体何が起きているんだ」


 ビッショリと張り付いた汗が体温を奪い去ったせいだろうか。

 手足がどうしようもなく震えて暫く止まってくれなかった。

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