幼馴染
「いらっしゃいませ」
本日のお客様。
二十二歳。
清野 こむぎ様
お化粧、お洋服のチェンジなし。
リンパマッサージをご希望です。
スッピンになると唇の色が薄いのがお悩み。
でも、大丈夫。
血行を良くしてあげれば唇の色が出るんで
す。
口紅塗った?
くらい色が出ます!
なぜこちらのお客様口紅を塗りたくないか
って⁉︎
それは、彼にいつもノーメイクで会ってい
るからなんです。
幼馴染でよく夜にゲームとかするそうで、
最近幼馴染に恋してる⁉︎って気がついたそ
うなの。
交際は、していないけど上手くいったらい
いなってお話ししてくださいました。
だから、風呂上がりの艶々ガールを目指し
ているそう。
マッサージは、凄いんです!
むくみをとるし、お肌も艶々になります。
では、開始します。
まずオイルを塗ってマッサージ。
お客様気持ち良さそうです。
「素敵なBGMですね。眠くなりそう」なん
て言ってくださった。
マッサージすることによって細くもなるか
ら最高ですね。
た〜っぷりマッサージできました。
お客様も大満足のよう。
すっかり唇の色もいい感じ。
ノーメイクでもばっちりです!
そこで次は部屋着。
かわいい猫ちゃん部屋着を購入。
猫耳ヘアバンドもご購入。
もうすぐその幼馴染のお誕生日だそうで、
その彼には、ワンちゃん部屋着をプレゼン
トされるそう。
なので可愛くラッピング。
ツヤツヤになり笑顔でお店を後にしたお客
様。
…〜…〜…〜…〜…〜…〜…〜…〜…
オレの名前は、野木 秀人 ひでひとこむぎとは、幼馴染。
今でもお互いの部屋を行き来する仲だ。
最近までオレは彼女がいた。
でも、どの子とも長く交際が続かない。
なぜかは、本当はわかっている。
でも…
でもそれじゃダメだと思ってきた。
何をごちゃごちゃ言ってるかって。
そう。
オレは、ずっとこむぎが好きなんだ。
でも、そんな狭い世界で生きていってもい
いのかと迷いがあった。
だから、あえて別の人との交際をした。
しかし、結局はこむぎが一番なんだ。
こむぎも、最近まで彼氏がいた。
きっとオレなんて眼中にないんだろう。
うちに来ては、酎ハイをガブガブのみ雑魚
寝するんだから…
でも、最近こむぎの様子がおかしい。
いや、もしかしたらオレが意識し過ぎてる
のか⁈
あー、わかんねぇ‼︎
なんて頭を抱えてたら…
こむぎ⁈
今日は、金曜の夜だから明日二人共休み。
だから、こむぎの家でオールでゲームしよ
うってなったんだけど…
なんだよ、そのかわいい猫着。
耳までついてんじゃんかよ‼︎
入り口で唖然としてると、
「あ、ヒデ!いらっしゃい。ヒデ今日誕生日
じゃん。はい。プレゼント!これに着替え
て!」
なんて渡されたのは、
犬‼︎の服?
こむぎ…
今更だけど何がしたいんだ…
ま、自由なのがこむぎのいい所でもある。
オレは、言われるまま犬になった。
着替えて早々に
「ヒデ似合うよ。お手」
なんて言われた…
お手?
あぁ、犬だから…
とりあえずお手をしてみた。
「ワン!」
と言いながらこむぎの手のひらにお手をし
た。
「偉いよー。」
こむぎは、オレの頭を撫でてテーブルにあ
ったお菓子を口に入れてくれた…
「なんだよ‼︎こむぎは、暇人か!」
クスクス笑うこむぎ。
「うん」って言いながらかわいい笑顔をこち
らに向けてきた。
こむぎ…
やっぱりかわいいな。
とりあえず乾杯をしてゲームをはじめた。
いつも通り楽しくゲームしてたんだけど、
なんか違和感…
ん⁈
今日のこむぎ、座り方あぐらじゃないな…
なんなんだ。
しかもゲームで負けた方は、動物のモノマ
ネをすることになっていた。
「にゃ〜ん」
なんてその格好で言われたらもうやばいだ
ろ…
オレは猫派。
もしかしてこむぎ…
いや、待て待て。
落ち着け。オレ…
とにかくゲームをしながらこむぎの様子を
伺う。
「なぁ、こむぎ。」
「ん?」
ゲームに集中しつつも二人で会話を進めた。
「オレ、彼女できた」
ガタッ。
こむぎは、ゲーム機を落とした。
あれ⁈これは動揺してんのか⁇
脈ありか?
まだ画面を見ながら固まってるこむぎ。
そして、ゲーム機を拾いながらこむぎはま
さかの発言をしてきた!
「あっ、そうなんだ…よかったじゃん。私も
実は彼氏できたんだよ」
なんて言うじゃねーか‼︎
だから、最近かわいかったのかよ!
オレじゃない別の奴に恋してたのかよ⁉︎
それから二人共顔を見ずにゲームに集中。
なんだ。
そうだよな…
しばらく沈黙の中ゲームに没頭した。
早まらなくてよかった。
深夜十二時
実は、今日こむぎの誕生日なんだ。
オレたちは、誕生日が一日違い。
さっきのオレの彼女できたって言う嘘話か
ら、空気が重くなってしまった…
嘘ってバラすか…
でも、バラした所でこむぎに彼氏がいるの
は、現実だ…
バラした所で状況は、変わらない。
ゲームの手を一旦とめてこむぎに誕生日お
めでとうって伝えた。
こちらを見ずにありがとうと答えるこむぎ。
一応プレゼントも用意していた。
「こむぎ、誕生日プレゼント。後ろ向いて。
こむぎの好きな猫のネックレス。安もんだ
けどダイヤがついてんだぜ。ま、本物のダ
イヤは彼氏に買ってもらえよ」
そう言いながらネックレスをつけてあげた。
するといきなりの猫パンチ⁉︎
泣きながら何度も猫パンチしてくるこむぎ。
「何だよ、こむぎ…ネックレス気に入らなか
った?」
「ううん。そうじゃない。そうじゃないけど
なんで彼女いんのにいっつもあたしとゲー
ムしたり、優しくすんの?」
「えっ、こむぎだって彼氏いてもうちに来て
ゲームしたりすんじゃん」
「もう、こんな関係やだ」って泣き出すこむ
ぎ。
「じゃあ、幼馴染やめる?」
「やだ‼︎」
「困ったな…なら…ならさ、いっそ恋人にで
もなるか!」
「えっ、でもヒデ彼女できたんじゃん」
「あー、あれうそ」
「はぁ⁇なんで嘘なんかつくんだよー‼︎もう
ヒデのバカ‼︎泣いて損した」
「なんでそもそも泣くんだよ。こむぎだって
彼氏いるんだろ」
「あれはさ、だってうそだもん…」
「はあー⁇、マジかよ。」
お互い強がってただけだった。
「オレたちバカだな」
「うん」
涙をぬぐうこむぎが顔をきれいにしてる猫み
たいでたまらなくかわいかった。
「こむぎ?」
「ん?」
「好きだよ」
「わたしもニャン」
猫の手も添えて恥ずかしそうにニャンなん て…
思わずこむぎを抱きしめてそれからながー
いキスをした。
すれ違っていた年月を埋めるかのように。
続く。