同窓会
カランコローン
「いらっしゃいませ」
「あの、これ返却に来ました」
「はい。確かに承りました」
先週いらした田村様。
確か先週は、指輪をしていらっしゃらなか
った。
もしかして、プロポーズされたのかしら。
勝手に妄想して喜ぶ店員の私…
おっといけない。
次のお客様。
カランコローン
「いらっしゃいませ」
本日のお客様
長い黒髪に綺麗な白いお肌。そして高身長
でスタイル抜群‼︎
なのに、前髪を長く伸ばし顔を隠し白いお
肌にクロブチの眼鏡。
そして背がお高いのにとっても猫背。
そんなお客様をチェンジいたします。
「本日は、どのような感じにいたしましょう
か?」
「あのっ、今日同窓会があるんです…なので
同窓会でも浮かない感じてよろしくお願い
します。」
「はい。かしこまりました」
私がにっこりすると少し安心したような表
情のお客様。
では、まずは髪型から。
こちらのお客様前髪を切ってもよかったの
ですが切らずにオープン。
おでこの形がいいので髪を横に流しましょ
う。
どちらかと言えばワンレン風。
それだけでとってもセクシー系に早変わり。
う〜ん。
とってもお似合い。
お顔がセクシーなのでお洋服は、あまり派
手にならないよう清楚系で。
スタイルがいいから何を着てもモデルさん
みたい。
う、うやらましいじゃありませんか‼︎
入店時とは全くの別人かと思うくらいの、
とても素敵な仕上がりになりました。
眼鏡は、度が入ってなかったので外した方がお似合いかと思います。
と、おすすめしておいた。
そして鏡の前へ。
鏡の前でびっくりするお客様。
こんなに私が変われるなんて。もっと早く
に気づくべきだったって笑顔でお店を出て
行かれた。
背筋もピンと伸ばして。
…ー…ー…ー…ー…ー…ー…ー…ー…ー
私の名前は小夜川百合江 さよかわゆりえ
二十二歳。
本日同窓会。
学生の頃の私は、とにかくおとなしく男子
と話す機会なんてほとんどなかった。
ごく親しい女子としか話さない感じで。
でも、恋は一応していた。
中学二年生の時。
バレンタインにクラスの人気者太田君にチョコをあげようとしたんだ。
そしたら、きもいよって言われて受け取っ
てもらえなかった。
なんて苦い思い出がある…
男なんてみんなそんなんだと思っていたら、
中学三年生の時、隣の席の男の子がこっそ
り、私の忘れ物に気づいて消しゴムとか貸
してくれた事があったな。
シャー芯もくれた事もあった。
あの時、私きちんとありがとうって言えて
たっけな?
恥ずかしくて、軽くお辞儀程度だったかも
しれない。
今更だけど、それは失礼なことをしたなっ
て反省…
確か城田君って名前だったな。
懐かしい。
三年生の時、実は城田君が気になっていた。
でも、きもいよって太田君みたいに言われたらと思って、おもいをしまい込んだんだった。
そんな事を考えながら歩いていたら少し早
く同窓会会場についてしまった。
とりあえずお手洗いでも行っておこう。
トイレから出るとちょうど仲良しだった
明美ちゃんが立っていた。
「あー、ゆりちゃん久しぶり」
「あけちゃ〜ん、元気?」
なんて挨拶を交わし私達は、始まるまで会
場の隅の方で情報交換なんかをしておしゃ
べりをしていた。
時間が経つに連れてどんどん人が入ってく
る。
そして時間になりみんなで
乾杯ー‼︎をした。
私は、あまりお酒が強くない。
でも、みんな飲んでいるし少しくらいいい
よね!
すっかりほろ酔い。
もう結構出来上がってる人もいる…⁈
ってか、もとからあの人は明るいキャラだ
った。
大きな声で手を叩いて笑っていたのは太田
君。
酔ってるんじゃなくて昔からあんな感じだ
ったっけな。
どうやら、順番にテーブルを周りみんなで
写真撮ってるみたい。
でも、私達のテーブルになんてくるわけな
いかっ。
なんて油断してたら、来た…
私を見るなり太田君。
「えっと、誰だっけ⁈」
なんて言って来た…
ですよね…
私なんて忘れ去られていて当然…
すると、
「めっちゃ美人‼︎こんな同級生いなかったよ
な⁈」
隣にいた男子に話しかける太田君。
すると明美ちゃんが
「小夜川百合江だよ」
って得意げに言った。
すると太田君。
「えっ、小夜川ってあの小夜川?えっマジで
あの小夜川⁉︎」
なんて言っている。
「あのって言うのは失礼だろ」
隣の男子に言われて太田君…
「あー、ごめん」
って言ってくれた。
それからみんなで写真をとり、また別のテ
ーブルに移動して行った太田君とそのお友
達。
あのって言われちゃったけど、一応私の事
覚えていてくれたんだな…
ってかさ、なんかチラチラ太田君がこっち
をみてくる。
なんだろう…
またきもいよって言われてしまうんだろう
か…
二回も同じ人にキモがられる?
今日来ない方がよかったかな…
続く。