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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ロアとマリアの夜の会話SS~一週間編~

作者: あべかわきなこ

あらすじに書きましたとおり「女領主とその女中」シリーズの後日談というか談にもなってないただのバカップルふたりの会話です。シリーズ未読の方は是非本編シリーズからどうぞ。

 ロアとマリアの日曜日の夜


「マリアの胸、前より大きくなったよねえンブふぅ!」

 ロアの言葉の最後が妙なことになったのは、マリアが頭突きをかましたせいである。

「お布団に入るなりそういうデリカシーのない発言するのやめてもらえます?」

「すみましぇん」

 クリティカルヒットをくらった顎をさすりながら涙目のロアはそれでもマリアのほうをじっと見つめる。

「なんです?」

「マリアはどんどん綺麗になるねぇんブふぉぉ!?」

「あっごめんなさい、大丈夫ですか!?」

 反射的に頭が出てしまったマリアは顔を押さえて縮こまるロアに謝罪した。

「どうして……褒めただけなのに……」

「脈絡もなく急にそんなセリフ吐かれたからびっくりしてしまって」

「そういうところも好きだけど……可愛いから……」

 ロアの言葉にマリアは呆れたように眉尻を下げる。

「さっきからなんなんです? 褒めても何も出ないですよ今夜は」

 今夜は、とわざわざ付け足してくれる点に彼女の優しさを感じたロアは、明日なら良いことあるかも? なんて頭の片隅で考えつつ

「明日からまた一週間始まるでしょ? その前にマリアの可愛さを沢山摂取しようと思って。だから今からマリアを言葉攻めします」

「言葉攻めって」

「マリアの髪、綺麗だよね」

「貴女の髪も綺麗ですよ。最近はきちんと自分でお手入れして偉いですねロア」

 母性あふれる声色に、思わずロアはどきりとする。

「……っそういうのは今日はいいから!」

「ふふ、褒められると赤くなるところは可愛いですね」

「もー! なんで私が言葉攻めされてるの!?」

「可愛い貴女を沢山摂取して一週間を乗り越えるためです」

 今日のマリアには、これ以上何を言っても勝てない気がしたロアだった。




 ロアとマリアの月曜日の夜


「あら、もう寝るんですか? 早いですね」

 入浴を終えたマリアが寝室に入ると、ロアは既にベッドに横になっていた。

「今日ね、ずっと外での作業だったから眠たくて……」

 そう答えるロアの声は既に半分眠りに入っているような穏やかさだった。

 マリアがベッドに入ると、ロアの手がマリアの手を軽く握る。

「待っていてくれたんですか?」

 そうマリアが問いかけたときには既に瞼を閉じているロアに、マリアは苦笑する。

「可愛い人」




 ロアとマリアの火曜日の夜


「今日はギンギンです」

 ロアがベッドでそう呟くなり、マリアは身体半分ほどロアから距離を取った。

「なんで離れるの!? 目が冴えてるって意味だよ!?」

「失礼、何故かそういう風に聞こえませんでした」

 マリアはよいしょと元の位置に戻る。

 今夜は雨。少し風が強まってきたのか、窓の外の雨音が少し大きくなった。

「私、低気圧は苦手だけど、雨の夜は結構好きなんだよね」

「奇遇ですね。私も嫌いではないですよ」

「他の音が何も聞こえなくなって、世界に私達だけしかいない、そんな気分にならない?」

 ロアの言葉に、マリアは思わず口元を綻ばせる。彼女とほぼ同じことを考えていたからだ。

「そうですね。貴女を独り占めできると思うと少し贅沢な気分になりますね」

 そんなマリアの何気ない返答が、ロアにはどうやら相当に嬉しかったようで、彼女は子供のような無邪気な笑顔をマリアに向けた。

「じゃあさ、今夜は眠くなるまでマリアを独り占めにして良い?」

 いつも独り占めみたいなものでしょう? と、このタイミングで言うのは野暮かと思い、マリアはただ頷いた。

 すると

「ちょっと! なに腰に手を回してるんですか!」

 ロアの手がマリアの腰をきゅっと抱き寄せ、なおかつ寝間着の裾の下に潜り込もうとしていた。

「だって眠くなるまで独り占めしていいって」

「そういう意味で頷いたわけでは!」

「もー、マリアってば……」

 眠くなるまで、ってそういう意味で言ったんだよ、とロアに微苦笑気味に囁かれたマリアは、しばらく羞恥で固まってしまった。




 ロアとマリアの水曜日の夜


「ごめんマリア。明日組合長に提出しないといけない企画書がまだできあがってないから、今日は先に寝てて」

 ……そういうわけで、マリアは今ひとりでベッドに横たわっている。

 時刻は23時。いつもなら一緒に布団に入っている時間だ。

 先に寝ていてというぐらいだから、もうしばらく時間がかかるのだろう。

 読書でもして待っていようかとも思ったが、逆に気を遣わせることになるかと思い、こらえる。

 マリアは溜息を吐いて、手持ち無沙汰を紛らわすようにロアの枕を手に取った。


 ――1時間後。

 企画書を完成させたロアが寝室で目にしたのは、ロアの枕を抱いて眠るマリアの姿だった。




 ロアとマリアの木曜日の夜


「……何してるんですか」

 寝室に入った途端、マリアは思わず低い声で呟いた。

「昨日は寂しい思いをさせちゃったからその償いだよ、さあさあ」

 一方、にこにこの笑顔で首だけをもたげたロアは、ベッドの真ん中にどんと、大の字で転がっている。

「そんな真ん中で寝転ばれたら私が眠るスペースが……」

 そう言いかけて、マリアはロアの意図をようやく理解した。

「いや、流石にそんなこと、私しませんよ!?」

「なんで!? 昨日は私の枕を抱いて寝てたのに本物の私は抱いてくれないの!?」

 言い方……と頭痛を覚えながら、冷めた表情でマリアは頷く。

 しかしロアは諦めない。手足をバタバタさせてアピールした。

「私を枕だと思って! さあぎゅっと! おいで!」

「無理ですってば」

 マリアはやれやれとベッドの端に腰掛ける。すると

「あっ、ちょっと!」

 がばりとロアはマリアを抱き込んで倒れた。

 少し拗ねたような声色でロアは言う。

「ぎゅって返してくれたら離れまーす。それまで離れませーん」

「……」

(……あれ?)


 結局、その夜マリアがロアの背中に腕を回すことはなく。

 けれど密着して眠るという不思議な眠り方になった。



 

 ロアとマリアの金曜日の夜


 この夜、すでにふたりはベッドに横たわっていた。

「今日は待ちに待った花金です」

「そうですね」

「明日は多少寝坊してもいい……つまり?」

 期待を込めたロアのまなざし。しかしマリアは目を伏せる。

「今日はもう寝てもいいですか。眠たくて」

「やだーーーー! やだやだ今夜するって決めてたのにーー!」

 楽しみにしてたのにー! と続けるロアに、落ちてきそうな瞼をどうにかこらえ、マリアは意識半分で言う。

「明日の朝すればいいじゃないですか……愛してるよゲーム……」



 ※愛してるよゲームとは、お互いに愛してるよと言いまくって照れたほうが負け。というゲームらしいです。




 ロアとマリアの土曜日の夜


「……ちょっとずるくないですか? 始める前に一言言ってくださいよ」

 不満げなマリアを見下ろしながら、それでもロアは退かなかった。

「だって昨日マリアが言ったんじゃない。明日の朝すればいいって」

 ロアが企画した「愛してるよゲーム」に、マリアは一発目で負けたのである。

 今朝起き抜けのマリアにロアが愛を囁いて、マリアが赤面して、負け。

「負けたほうは勝ったほうの言うことをなんでもひとつ聞く」というルールになっていたので、今、マリアはロアに組み敷かれている。

「それで私は何をすればいいんですか。あんまり変なお願いはやめてくださいね」

 マリアの言葉にロアは目をそらし黙り込んだ。

「どうして黙るんですか。やましいことでも考えてました?」

「そんなことないよ!そう言うマリアこそそんなこと言って期待してたりして!」

 マリアは顔を赤くして反論する。

「してませんよ失礼な! 大体貴女はいつも急なんですから、もうちょっとこちらの都合とかも考えてほしいものです!」

 その言葉を受けてロアが急に神妙な顔になる。

「……それって愛してるよゲームの話? それとも別の話してる?」

「どっちもです!」

 即答され、ロアはよろけ、そしてマリアの隣に背を向けてシュンと横たわった。

「……ごめん。マリアがそんな風に思ってたこと気づけなくて……今度からは前もってちゃんと言うね。1週間前から都合とか聞いたほうがいいかな……」

「え……いや、そこまでじゃなくてもいいのですが、もうちょっと前振りが欲しいというか……」

「だって前もって準備すると緊張しちゃうんだもん……。マリアも多分そわそわするでしょ」

 う、と今度はマリアが言葉に詰まる。

 気まずくなって、しばし沈黙が流れる。そして

「……愛してますよ」

 突然、マリアがそう呟いた。「え?」とロアが振り返る。

「……さっきはああ言いましたけど。前もって準備すると妙に緊張してテンションが上がってしまう貴女の短所もすべてひっくるめて。愛してます」

 すると、ロアは目じりにうっすら涙を浮かべて破顔し、

「あのね、今日のお願い、マリアにも『愛してる』って言ってほしいなって思ってたんだ」

 その無垢な言葉と表情に、マリアはバツが悪そうに視線を逸らす。その頬は少し紅潮していた。

 ロアはそんなマリアの頬を両手で覆い、こつんと額をくっつける。

「やっぱり今日はマリアの負けだね」

「そうですね。今日は完敗です」

 互いに微笑んだ後、ロアはちゅ、とマリアの耳に口づけた。マリアは知っている。耳へのキスは彼女の欲情のサインだ。

「……やっぱり少しはそちらも期待していたのでは?」

 マリアのその言葉には、ロアは曖昧な笑みで返すほかなかった。

小説を上げるならやっぱなろうだろ、と思って随分久しぶりに投稿しましたが他愛のないもので恐縮です。


「女領主とその女中」シリーズ本編は全部読んだけど「なんでこんなにいちゃついてるのこのふたり」と思った方は私が趣味で出した同人誌「ロアとマリア~Honeymoon~」のあらすじを一度確認してみてください(https://akayane.booth.pm/items/2663384)←冊子本編はR18指定ですご注意を。


もしくはpixivに上げている https://www.pixiv.net/artworks/87773946 このへんから漫画(こちらは全年齢です)を読んでもらったら本編シリーズ後のふたりのいちゃつき具合がわかると思います。

シリーズ履修してくださった方は是非是非。

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