猫物語
初投稿ではありますが、次投稿するかは決まっておりません。
率直な感想をお願いします(`・ω・)ノ
私はルナといいます。月夜に出逢ったから月からとってルナという名前をつけられました。
主人はこれからシゴトのようです。スーツと呼ばれている黒い布をまとっているときは必ずでかけていってしまうのです。あ、あ、もう行ってしまうのですか!?もっとカリカリを入れてからにしてください!
「どうしたんだ? わかったわかった。すぐに帰るから」
あ、あぁ…...まあしょうがないですね。これから何をしましょう。今日の外は丁度いい具合に晴れているようですし、出かけるのも悪くはないですね。さっき食べ損なった朝食の代わりになる物を見つけられるかも知れません。そう考えると商店街に行くのが良いでしょう。
町を歩いているとだんだんと喧騒が近づいてきているのがわかりました。商店街に着いたようです。シュフと呼ばれている人たちがあちらこちらで話す声がここまで届きます。
「あれ、クロちゃんじゃないか。今日は顔を見せに来てくれたのね」
私のことをクロちゃんなどと呼んだこの女性は魚屋の夫人であるそうです。私にはルナという立派な名前があるというのにそれを知ってもらえないというのは、なかなかに切ない気持ちにさせられるものです。ですが、この魚屋夫人は私によく昼餉を御馳走してくれるので許しましょう。
「ちょいとお待ち、煮干しをあげようじゃないか。えーと確かここらへんに。あったあった。ほらクロちゃん、たーんとお食べ」
食べながら私は今までの日常について少し振り返っていました。商店街で散歩していると面白い発見や新たな疑問などが出てきて楽しくなってきます。デンキと呼ばれているのが通称で本当の名前はガイトウというのだとか、なぜ人間は一日中寝ていてはいけないのか、本当に次から次へなにかしらの気づきがあるのです。煮干しを食べ終わったことですし、そろそろ場所を移しましょう。
くゎあぁ、と欠伸を噛み殺していると不意に声をかけられました。
「久しぶりルナ、これから集会があるみたいなのだけれど貴方もどうかしら」
彼女はレイ。私の主人に拾われる前からの知り合いで、真っ白な体毛にスレンダーな体をもっていて気品を感じさせる猫です。
「そうだな。最近行っていなかったのだし顔を出しましょうか」
「ええ、きっと喜ぶはずよ」
その集会所はすぐそこにありました。
「みんなルナが来たわよ!」
レイが声をかけると猫たちがあちこちからニュルッと出てきました。その中にはルナがよく知っている顔もみられます。
「やあ、ルナ久しぶりじゃないか。どうしたんだい」
そう声を掛けてきたのはケンタです。茶色い毛に包まれた脂肪を波打たせてよいしょっとでも言うように塀から降りてきた彼は、さらにこう続けました。
「あれ以来、来ていなかったからボクたちも少し寂しかったんだよ」
「そうですか。それはすみませんでした。主人の家の居心地が思いの外良かったもので」
「そうなんだ。優しそうな主人で良かったね」
「えぇ。優しいのは優しんですが......家に居ることがあまりないのが玉に瑕ですね。もう少しシゴトというものを減らせばいいでしょうに」
「人間はボクたちみたいに簡単にはならないんだよ。集団で動かないといけないんだ」
「ケンタは今は情報屋をしているのよ」
「なるほど。だからそのような知識を持っているのですね」
「うん。やっぱり商店街に住んでると色々と噂話が聞けるんだよね」
そう言った彼は依頼があるからと路地裏へ消えていきました。その後、残された私達は近況などを語り合い親交を深めました。特に印象に残ったのは隣町のぶちねこの話ですね。その猫は鳥を捕まえるのがマイブームらしいのですが、ある日公園でカラスを捕まえていると群れになって復讐しにきて半殺しにされてしまったそうです。私はするつもりはないのですが、もし自分がそんな目に会うとするとゾッとします。
私達は雑談めいた集会を終えるとそれぞれ思い思いの場所へ散りました。私もまた同じように路地から出ていきます。しばらく移動をすると絶好の昼寝スポットに到着します。主の家の屋根の上です。外にここに来るのは鳥くらいしかいないので邪魔をされることはないのです。また、この周辺の建物はヒラヤと呼ばれる小さいものだけなので日当たりも良好です。やっぱり、私のお気に入りの昼寝場所はここですね。んっんんんんあぁぁ〜〜。それではおやすみなさい。
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あれ、ここは......?これは夢の中でしょうか。周りを見ると商店街の近くのようですが、いつもと様子が違いますね。なんだか建物が綺麗ですね。おや、あれは?辛そうな黒猫がいます。体の汚れがひどいので拭き取ってあげたいのですがなぜか触れません。それどころか私が目の前にいるのに気づいた様子もないです。もしかすると、これは......昔の私かも、知れませんね............。もう少し綺麗ではいたつもりですが.......こんなひどい様子だったのですね。怪我もしていて痩せ細っているので痛々しいです。これが2年前のあの日だとするときっと野良犬に襲われて逃げ切ったところでしょう。
「はぁ。お腹が空いたなぁ」
私、いや、彼はそう言い脚を引き摺り歩きはじめました。
周囲の家には明かりが灯っているので7時位なのでしょう。夕飯時のいい匂いを察知したのでしょう、彼はふらふらと走り始めました。そして車道に出ると同時に木材や鉄パイプを積んだ軽トラックが交差点から飛び出してきました。
「危ないっ!」
どこか聞き覚えのある声が響きました。彼は道路に身を投げ出した一人の男に抱きしめられ助け出されました。
「あいててて。大丈夫ですか、お嬢さん」
痛みを我慢して微笑んだその男は主人でした。性別を間違えられたのには腹が立ちますがあの格好良さはやはり憧れますね。
「首輪は......してないか。野良猫かなぁ。よくみたら怪我もしてるし。とりあえず怪我が治るまでは家で飼おうかな。名前でもつけるか。そうだな............月が綺麗だし......ルナなんてどうだ」
「ニャー」
「ハハ。喜んでもらえて良かったよ」
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んにゃーおぉぉ。ふぅ、よく寝ましたね。なんだか懐かしい夢を見ました。辺りはすっかり夜の帳が降りています。家に帰りますか。
私専用になっている開き戸から家に入りましたがやはりというべきか、人の気配はしませんね。薄暗い家の中は静寂が支配しています。
主人はすぐ帰ると言った日は必ずと言っていいほど遅くに帰ってきます。ザンギョウをジョウシに押し付けられたと酒を呑みつつ愚痴をこぼしていました。本当にしょうがない人です。主人が帰ってくるのを待つことにしましょう。お腹も空いていますがきっと帰ってすぐにご飯をくれるでしょう。
窓から夜空を見上げるとあの日と同じ大きな満月が輝いていました。
またお会いできる日をお待ちしてます!( ´・ω・)シ