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Lament for U.N.O  作者: tetori
7/7

エピローグ 下

0−2

「どうすんだ、これから」

 裕二が俺とナルミにそう問う。

 火葬は終わり、侑菜と梨香の遺骨は同じ墓に収められた。

「…俺達は、あの子の願いを叶えなきゃならない」

 あの子は――侑菜は、最後にこう言った。「私が苦しんだ分だけでも、生きて、幸せになって」、と。

 この先何があるかわからない。俺を支えてくれていた侑菜は、もういない。

 でも、それでも。


「生きる。そして幸せになる。死ぬなんて、誰も赦さない」


「…そうだな。生きるしかない」

 裕二もナルミも頷く。

 もう夕方だった。いつもは、侑菜と勉強をしてる時間。でも、侑菜は――。

「…椋くん、ごめん…ちょっといい?」

 ナルミがそう言うと同時に背中に手を回し、俺の胸に顔を押し付けた。

「…ナルミ」

 裕二が小さく名前を呟いた。裕二にもわかったんだろう、この気丈な子が、どれくらい脆く、どれくらい無理をして耐えていたのか。

 ナルミは肩を震わせて泣いている。俺は背中に手を回し、ナルミの気が済むまで泣けばいいと思った。


「…俺はここを離れる」


 ナルミと裕二が、俺の言葉に硬直する。

 昨日からずっと考えていた。ここには、思い出がある。だから、俺を縛る。

 だったらいっそ新しい場所に行って、自由にやろうじゃないか。たまには墓参りには帰るけど、侑菜が願ったように幸せになるには、ここではできないと思うから。

 けど、ナルミと裕二の口から、それぞれ俺が予想しなかった言葉が発せられた。

「…私も…一緒に、行くよ」

「…なんだかな。なんでこう…考えることが同じなんだ?」

 …考えることは同じ、か。いいかもしれない。3人で、どこかへ行ってしまおう。

「…そうだな、まずどこへ行く?」

 侑菜と梨香の墓にはジニアが――「友への思い」が花言葉の花が――手向けられていた。

 侑菜は、この花が好きだった。ずっと俺達のことを思っていたんだろう。自分が辛いのに、他人のことばかり考えて。

「…南へ行こうか。俺は寒いの苦手なんだ」

「…私、も」

 南、か。いいな、みんなで働いて暮らそう。みんなで一緒に幸せになろう。

 しゃらん、という鈴の音と共に、オーエンが現れる。

「お前も行くか?」

 俺が聞くと、オーエンは、にー、とだけ答えた。――そうだな、お前も一緒だ。

「…行こう。新しい生活の幕開けだ」



 過去を乗り越え、死者の思いを背負って。

 俺達は、生きていく。

 そうするしか、ないから。

 それが、願いだから。

 希望を殺すのは残った人間だ。

 前を向かなきゃいけない。侑菜が、教えてくれた。

 助け合わなきゃいけない。梨香が、教えてくれた。

 だから俺達は、生きる。


 幸せに、なる為に。

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