表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lament for U.N.O  作者: tetori
1/7

エピローグ 上

「最後まで苦しんで逝っちゃったね」

 間違いなく顔を見るのはこれで最後になるだろう。見慣れた寝顔。

 不意に視界が涙で歪む。隣の少女は、嗚咽を漏らして俺の腕にしがみついている。

 火葬場。告別の時。こんな日が来るなんて、思いもしなかった。

 棺の中の少女の遺体に花を――少女が好きだった橙色のジニアを、手向ける。様々な思い出が――その子との思い出が、蘇ってくる。

「安心して。俺達は受け止めた。見ただろう、受け止めた俺達を、最期に。だから――」

 俺は優しく、まるで幼子に諭すような口調で。

「…ゆっくりお休み、オーエン…」

 別れの言葉を、告げた。

 涙が頬を伝って零れ、少女の頬に落ちる。

「お休み――大切な人」

 俺は遺体の手をそっと握る。死後硬直のせいもあって、生きていたときのような暖かさはもちろん、柔らかさがない。当然のことだけど、もう会えないのだ。

「俺はキミの願いを叶えるよ。みんなと。だから、安心して」

 大好きだった。大切だった。生きていて欲しかった。幸せになってほしかった。隣にいて欲しかった。

 なのに。

「きっとまた、死後の世界でも、来世でも、会おうね」

 少女は、死んでしまった。

 オーエンは、死んでしまった。

 全ての物語は、そこで幕を閉じた。



 「そして誰もいなくなった」という本を知っているだろうか。

 アガサ・クリスティーが最盛期に書いた、有名なミステリ小説だ。

 U.N.オーエンと名乗る人物から、様々な経歴、年齢、性別の10人に1つの島への招待状が送られてくる。

 そうして起こる、不可解な事件の物語が、それだ。

 そんな小説を俺が知ったのは、もう10年も前になる。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ