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ヒトに恋した怪物たちへ  作者: キョウさん。
ヒトに恋した一匹狼
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はじまり

本作はサービス終了したMMORPG、エミル・クロニクル・オンラインの影響を多大に受けています。




 産まれたとき、4本の足で歩くのがあたりまえだと思ってた。

 それが世界のすべてで、生き物なんだと思ってた。



 産まれてから、毛と皮だけが包まれるものだと思ってた。

 それがわたしたちで、生き物なんだと思ってた。



 

 産まれたあと、幸せだけが続くんだと思ってた。

 どうしてそう思ってたかは、もうわかんないや。



 ふたつの足で歩いて、いろいろなものを身につけて、わたしの親を奪った生き物。

 森の主さまが”ヒト”だって教えてくれた生き物。こわくて、やばんで、近寄っちゃいけないよって言われたからずっと逃げてきたけど、ヒトってすっごく頭がいいんだ、ギザギザのついた罠にかかってすぐにわたしなんか捕まっちゃって、動けなくなっちゃった。


 これからわたし、どうなっちゃうのかな。

 ヒトはこわいって聞くから、きっとこわいことされちゃうんだ。 


 足音が聞こえてきて、必死にもがくけどそのぶん痛くてつらくて、まっしろの毛皮が真っ赤になっていって。お目々を取られちゃうのかな、毛皮をはがされちゃうのかな、爪を折られちゃうのかな……すごくこわくなって、わたしはもう息をするのも忘れちゃってた。




 だからその”ヒト”が、わたしに優しくしてくれたときも動けなかった。



 ギザギザの罠を外してくれて、弱ったわたしの傷を治してくれて。

 ヒトってすごい、お手手が光ったとおもうと、あっというまに痛くなくなったの。


 あなたはヒトじゃないの?

 ヒトはこわくてやばんで、あぶない生き物なんじゃないの?

 あたまがぐるぐるして、鳴き声ひとつも出せなくて。


 お口を動かし何かを言って、手を振り去るその背中。

 お空にひとつぶ雨が振ってきたから、わたしの上に傘置いて。

 頭につけた羽飾り、わたしと同じ銀の髪。

 聞きたいことはいっぱいあったのに、歩ける足が歩けなかった。


 それからお日様が沈んで昇って、また沈んで、ずっと。

 助けてくれたり、こわかったり、

 ヒトってなんなんだろう、って考えて。

 


 ずっとずっと想って想って、日に日に想いは募っていって。

 だから確かめたくなった、見に行きたくなった。

 わたしもヒトに、なりたくなった。


 ずっと持ってたもらった傘、ちょっと傷も増えてきたけど。

 もらったものはかえさないと、それがヒトのルールなんだって。

 森の主さま、ごめんなさい。



 だいじにだいじに傘を抱えて、想いのたけがはちきれそうで、

 走れば視界が高くなってって、

 わたしは二本の脚で、森を駆け出した。

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