必ず生き残りましょうね
ダンジョンというのは便利なもので、邪魔だと思っている人間にその攻略を命じれば、大義と対面を保ちながら排除ができる。
「頼みましたぞ、勇者様」
そうその命令を下すだけでいいのだ。
ほとんどの人間が罪悪感を持つことなく、人の命を奪うことができる。
私たちはそんな命令を各々下され、サバイバルを強いられた四人である。
「勇者さまですよね、私は死にたくありませんので組みませんか?」
派閥政治に負けた魔法使いアイラ。
「…」
寡黙すぎるビーストマスターのビーク。
「なんかダンジョンに行けって言われたんですけど、何すりゃいいんですか?」
異世界からの来訪者テル。
そして形ばかりの勇者の称号を与えられた私である。
ビークの連れている大型の猫は、テルにゴロゴロとなついている。
「すげぇかわいいよ」
「…」
遊んでいる間に、私とアイラは今後について話していた。
「ダンジョンというのは、理解していればそれほどひどいものではありません」
何しろ元々ダンジョンというのは、人間がずっと昔にすんでいた場所に魔物が住み着いたもの。
「ただ大昔に住んでいたがつきますから、今の我々が快適に感じるのならば、一工夫も、二工夫もひつようです」
彼女は知識が長けている。
四人が組んだ利点はとても早くに現れた。
「勇者様!」
ダンジョンにいる人々からすると、勇者であるということは信用されやすい。
「…」
ビークの魔獣がくんくんと臭いを嗅いで、食べれそうなものをどんどん見つけていく。
「これとこれは調理が簡単だな、こっちはアクが人間だと難しいかな」
テルが食材と調理の技術を持っているので、食料保存には困らない。
「ありがとうハサップ!」
なんだろう、ハサップって、人名?
「本当にテルさんのおかげで助かってますよ、交換で乾麺を手に入れることができましたが、これをポリポリと食べるのかと思いきやですよ、もちもちとした食感を味わえるとは…」
ダンジョン遺跡ではあまり料理も、食べ物を持ち歩くことは推奨しない。理由は…
「熊が出た!!!!」
食べ物を持っていると狙われる可能性が上がるからである。
ピー!
ビークが口笛で魔獣が飛び出していった。
「みんな行くよ!」
私は剣をアイラは杖をテルはフライパンを片手に、窮地を潜り抜けるのである。
「ここまで安全に戦えると、どうも気が緩みますけ、とりあえずこれから考えるべきことっていうのはたくさんありますが…」
アイラの話の後ろでは、テルが熊は食べれるのか?とビークに聞いているが、薬にはなるので解体を挑戦してみようということになってる。
「今の段階でダンジョンから帰ることもできますけど、そうなりますと、再びダンジョンへ行けと命令が下ってしまうことが高確率であります」
「理想としてはその命令を断れればいいよね」
「そうです!その命令を断れるだけの成果を我々はあげるべきです」
「熊はスペアリブにしたら旨そうだな、ユキとアイラは肉好きか?」
「焼き肉にしましょう」
「煮てもおいしそうだよ」
「とりあえずは、今後どうするかは提案しだいだけど、聞いている限りじゃアイラの意見に俺は賛成」
ビークも賛成らしい、頷いている。
私たちは色々と抱えた上で、このダンジョンに来てしまってる。
私は見栄で勇者を出兵させた、アイラは地方から来た秀才というやつで同期に妬まれ、ビークは今は畏怖の対象であるビーストマスター、テルはおそらく口封じだと思われる。
「必ず生き残りましょうね」
そう、そのために私たちはパーティを組んだ。