お飾り王子1 めんどうなことはすべて臣下に丸投げします
「殿下……東の領地拡大はいかがでしょう」
「うん」
どこの領地を広くしてどこが狭くなろうと、どうでもいいや。早く執筆作業したいのに面倒だな。
「報告いたします」
彼は騎士団長の青年だ。長らく外国にいっていた騎士団が帰ってきた。
このところ平和だって大臣が言ってるからそうなんだろ。
「ご苦労」
「……つきましては、……とのことです」
「いかがなさいますか?」
さっぱり聞いてなかった。どうせこいつがなんとかするのになんで聞くんだよ。
「大臣が決めて」
「承知いたしました」
「それでは」
騎士団長は去った。
□
「団長どうでしたか、報告いったんでしょ」
騎士団長が食堂に訪れると、先に場所をとっていた部下2名が座っていた。
「相変わらずのお飾り王子だったわね。あれでよく君主が務まるもんだわ」
女のような口調だが、彼はれっきとした男で最強の騎士である。
「久しぶりの王都メシ! なに食おーう」
「あいつはいつも元気だな」
部下の男は苦笑いする。
□
お飾り君主で結構。そんなことは僕が一番知ってるさ。
「聖女サマかわよ」
「マジで俺の嫁だわ」
団員が聖女とやらについて雑談をしている。フン、どんなツラか拝んでやろうじゃないか。
「聖女さま!」
ザワザワと観客が聖女の周りに群がる。遠方からオペラグラスで容姿を確認することにした。
彼女は内側に巻かれた水色の髪、清楚で華美にならないこの国の民族衣装を着ている。
こちらへと顔がはっきり向けられ、物憂げな眼差しが見えた。
「なんということだ」
僕は静かに部屋に行く。自室の机にある書きかけの文書の続きを書く。
「書き終えたぞ、さっさとこい!」
「へいへい」
「レアンよ、今回の分だ」
「確かにお預かりしましたよ」
あまりやる気がなかったのに、彼女を一目見てから活動意欲が増した。
なぜなら彼女が僕の小説のヒロインの生き写しだったからだ。