学園ペアリデス 一話
「今日からここでオレのスクールライフが始まるんだな」
莫知勇斗13才、一般家庭に生まれた普通の男子中学生。
父の仕事の都合で日本有数の名門校である観岸学園へ転校する事になった。
それにしてもパンピー平リーマンなのによくこの学園に入れたなあ。
「……通れないんだけど」
「あ、ごめん」
桃髪の女生徒が通っていく。校門の前で立ちっぱしてたオレに非があった。
しかしピンク髪でクール系とは珍しい。なんて下らないことを考えていると鐘が鳴った。
■■
「転入生の莫知勇斗さんです。皆、仲良くするように」
「はーい」
転校生がきたことも自分がそれになったことも今日が初なので、マジでこういう台詞を言われるんだなあと感心した。
「莫知勇斗くん」
「あ、はい」
金髪の女教師がやってきた。
「放課後、職員室にクラス担任の片桐先生がいるから会いにいってね」
「はい」
そういや学園ルールについて何も聞かされてないしなあ。
■■
「やあ来たね」
白衣を着た不健康そうな白髪教師が煙草を吸いながら待っていた。
「話って聞いたんですけど」
「あー普通は入学のときに皆に言うんだが、この学園にはバーチャル対戦がある」
今流行りのバーチャルリアリティーゲームの事だろうか。
「そういう遊び場があるんですね?」
「遊びではなく生徒全員強制参加だ」
学園がゲームを強制参加なんて意味がわからない。
「参加したものは卒業に必要なポイントが貰える。まあ出席日数よりこっちが特だ」
「はあ……」
かいつまみすぎて何がなんだかわからん。
「まあなんだ。簡単にサクッと話すと大会で優勝したら学費免除、大起業クラスの就職先を手配とか破格の賞金が貰えたりする」
なるほど、学費免除だけでなく賞金、就職先も斡旋してくれるなら参加しないわけないよな。
「怪我人や病気がある生徒は例外だが、基本皆戦うのさ」
「はあ……参加するにはどうしたらいいんですか?」
バーチャル対戦と言われてもピンと来ないな。
「まずペアを見つける。ルールとして異性でなければいけない」
「女子生徒にはハンデになるからですか?」
「ああ、戦う時に男二人で組んだらそっちが有利だ。戦では先に女を狙えば大体勝てるからね」
「公平に勝負ってことですね」
後は実力で決まるってことか。
「ペアって言われてもなあ……」
「おらああ!!」
「はああ!!」
対戦場へいくと早速戦っている2組がいたので、観察してみる。
クール眼鏡の男子と元気そうな女子、爽やか系の男子とおとなしそうな女子のペアが戦っている。
自分とは対照的な相手と組んだほうがいいのか?
「ちっ!!」
「今回は引き分けってことにしといてやるわ!!」
どうやら時間切れで強制終了らしい。
「なんだお前やるのか?」
「いや転校してきたばっかりで見学にきたんです」
名札をみると中等部3年が蒼葉広十と白八夕緒、2年が紅工寺と赤理目百合七だ。
それぞれ同じ学年がチームを組む確率が高いようだ。
「その様子だとペアもいないみたいね」
「よし、先輩から新人にアドバイスしてやろう」
眼鏡がきらりと光る。
「は、はあ」
「こらー!!女子の後ろでPCいじっていた眼鏡がかちゃりと格好つけてんじゃねーぞ!」
彼女は眼鏡にデコピンした。グーパンより痛そうなのは気のせいか。
「とりあえず恋人とは組まないほうがいいぜ。こいつなら見捨てられるって相手にしな」
蒼葉先輩が見かけによらず辛辣な事を言った。