普通の殺し屋 一話 14の神様が集う日
俺は生まれたときに親に捨てられるという悲劇的な立場だった。
物心ついたときにはすでにまともでなく、罪悪感なく人を殺すことができたのだ。
自分は生きているかも危うげで、たんなる殺し屋という名のゲームをしているのだろう。
そのイカれた臭いを嗅ぎとってか、組織のボスであるリイスという女が孤児院から引き抜いて育ててくれた。
「姐さん、任務終ったぜ」
「お~さんきゅーさんきゅー」
彼女は人を殺した報告なのにまるで購買でパンをパシらせたような反応をする。
さすがは殺屋のボスだと賛辞の一言をおくる。
「パトンテン、明日は楽しいことがあるよ」
「丁度夏休みの時期だな、慰安旅行でも連れてってくれんのか?」
青い海、白い砂浜など俺には不似合いな場所だ。
「まあ明日を楽しみに早く寝ろ」
そう言われて、さっさと寝た。
「で、今からどこ行くんだよ」
ただ街中を歩くだけで、何も楽しい事はない。これならターゲットを狙う最中のがまだいい。
そうため息をつくと、いきなり頬に液体が飛んできた。
バサアアア、というカラスの翼の音。
転がった肉に、これは水でなく血だったのかと理解する。
「いくら殺し屋でも死体が頭上に降るのは鳥糞に当たるより確率少ないっしょ」
「まさかこれが楽しみなことだったのかよ?」
こんなつまらないものを期待していたのかと拍子抜けしてしまう。
「いいや、この廃城にいくのさ」
「ジャポネスに城なんてあったのなー」
玉座の間に入ると、そこには数名の男女がいた。
「おせーよ!」
豹柄の服を着たギャル女がナイフをこちらへ投げる。
さっと避けたリイスは、にっこりと笑う。
「いやーごめんね~」
「それで、僕たちはなんでこんなところに?」
白衣を着た長髪男が質問を投げ掛ける。
「これから君たちには殺しあいをしてもらいます」
「なんか映画であったなそういうの!」
ざわつく中、空気の読めないバカ系の女が手を叩きながら笑う。
「まあ死なない程度に12人で戦って、主神を決めてもらう」
リイスは三つある玉座の真ん中である銀へ座った。左隣の銅に俺を座らせると、金を指差した。
「主神?」
「神話にいただろう。ユヒテル、ジウスが」
「……あれはクジで決めたんじゃなかった?」
黒髪の陰気な女が言う。
「よろこべ、お前達は神々に選ばれた。」