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消えた記憶と異能力者 Ⅰ ブラック、もう戻れない



―――今日はいつもより遅く目が覚めたがもう朝なんだ。

早く起きて学校へ行かないとならない。

しかしなんだか今日は体が思うように動かない。

――というか今何時だ。まあいいか、あと五分寝よ。


「秋和<あきかず>~母さんもう仕事いくけど~戸締まりちゃんとしなさいね~」


「嘘だろ!?」


朝起きて時計を見たら止まってた。母が出勤ということは、父は夜勤明けで今は寝ている時間だ。


俺はマッハで仕度して家から出る。

道中でポニテの女子とぶつかったが、急いでいたため平謝りしてなんとかギリギリ学校に着いた。


「……はよ」


息を切らせつつ、クラスメイトでよくつるむハルアキ、トウセイに挨拶する。


「おう、はよ~」

「おまえが寝坊なんて珍しいな」

「ああ目覚ましが鳴らなくて」


―――電池変えたばっかなのに、もうあの時計寿命なのか?


「それより今朝のニュースみたか?」


いつもは物静かなハルアキが話を切り出した。


「なんだオマエ、いつもスカした顔してるくせに珍しくニヤニヤしてんな。ニュースなんてフツーの高校生が見てるわけねーだろ」

「ま、遅刻ギリギリでニュースなんて見てる余裕あったら、息きらして走らないけどな」


「最近、海外では手術で異能力者を造り出してるだろ?」


―――西暦2060年あたりから生まれつき異能力を持った人間が姿を現し始めたとされている。


「都市伝説みたいなもんだろ馬鹿馬鹿しい……」

「俺も異能力ほしーぜ」


「俺が知る限り、異能力者が誕生した話をしてやろう」

「もういいって」


興味ないのにハルアキは話を続けた。


発端はとある街の地下研究所で、現代の化学によって作った人工生命体へ古い時代の黒魔術で呼び寄せた霊魂だとかが話に出てきた。

彼らはそれらを融合させ、超越された存在を造り出すべく尽力していたらしい。


「そういや廃ビル近くに研究所跡地があるって噂あるんだけどさ、その研究所がどこにあるか探してみねえか?」

「おまえバカかよ……そんな怪しい研究所なんてあるわけないだろ」


オカルト話はもう終わらせたい。


「そういえば最近ユートピニアとライラスが合併したらしいんだが」


俺は話題を変える為に適当な話をふった。


海外の大組織ユートピニアという物流やら貿易やらの会社。

そこの菓子は輸入品で、味は旨いが、外国製の為、体質に合わないのでよく腹を壊していたのを思い出す。


「ユートピニアといえばライラスと合併したらしいな」

「え、マジで?ジェノイサを傘下にしただけじゃなくか?」


「ジェノイサ……なんだそれ」

「おまえ知らねーの、海外からゲームとか来てるだろ」


トウセイは信じられないといった顔で俺をみている。


「海外のゲームしねーしゲーム会社の名前とかいちいち興味ねーよ」

「まあ、あの会社は海外の改造版ゲームとかこっそり流してるとか噂があるがな」


ハルアキはタブレットをいじる。


「ふーん」


「この分だと、中立のフェンセルもユートピニアに取り込まれるか」


また知らない会社名が出てきたな。


「というか中立ってなんだ?」

「ユートピニアは同じく海外の有力会社で、ディストピアスとライバル関係にあるんだ」


「なるほど、そういうことか」


まだどちらにも吸収されていないから中立ということだな。


「そろそろ授業が始まる時間だな」


ちょうど教師が来た。

授業を受けながらぼんやりと空を眺めていると、一瞬だけ青空に黒い何かが見えた気がした。


「この問題を――羅雨流<さみだれ>!」

「はい」


隣の隣の奴が当てられている。びびったが俺じゃなくてよかった。


放課後になり、友人二人と帰宅途中、今朝のポニテとすれ違った。

今朝は慌てていて考える暇もなかったが、あの方向はたしか金持ちとかが通う名門私立ノウイ学園があったな。


「あの、今朝はごめん」

「いえこちらこそ」


互いに軽く会釈して別れる。謝れたのでスッキリした。


「おいなにしてんだおいてくぞー」

「ああ悪い」


しばらく歩き、今朝話していた廃ビルが見えるあたりについた。


「じゃあ俺はこっちだから」

「おうまた明日」


「なあ今から廃ビル探索いかね?」

「なんで今だよ?」


なにが悲しくて女子のいない肝試しをやるんだ。


「俺じゃなくてオカルトに詳しいハルアキを連れていけよ」


「あいつの家は陰陽師で怨霊退治に忙しいだろーからな」

「なわけねーだろ」

「まあ冗談はさて起きたまたま今思い出したんだよ。今からあいつ呼び止めてもしょうがねーじゃん?」

「まあそうだが」

「おまえ……幽霊とか怖いのか?」


「いや、幽霊より生きてる人間のほうが物理的にこえーよ」


廃ビルとか絶対、不良とかたむろしてるしな。


「まあそうだよなーまあ今度クラスメイトと夏に肝試しでもするか。おまえも参加しろよ絶対な約束だかんな」

「あー大人数ならまあいいか、じゃあな」


あいつと反対方向へ歩き、廃ビルのそばを通る。

そこで俺の意識は完全に途切れた。




「Mr.Z<ゼシーラ>かい。……準備は整った」


―――――――



目が覚めたらビルの近くで倒れていた。自分が誰なのかなにをしていたのか、すっかり抜けていて思い出せない。家に帰る途中に光のようなものがパチパチと輝いてけたたましい音がしていた。


ひとまず手に持っていた鞄の中身を見てみる。俺の名は利科秋和。

―――名前はわかったが、家はどこだろう?

どうしてこんなことになったか、それを考えるより先に家に帰るべきだ。


すごいことがあったというのに、俺は妙に冷静になる。

なにかないか鞄をあさると、携帯があった。


いや、迷子になっても安心なGPSとか小学生じゃないんだから設定してるあわけないな。


「おっ秋和くんじゃないかどうしたこんなところで」


名前を知っているということは記憶をなくす前の知り合いだよな?


「今帰るところです」

「そうかそうか~おじさんも今帰るところだよ。せっかくだし一緒に帰ろうか?」


「そうですね」


―――道中で知り合いと思わしき近所の人に声をかけられ、なんとか家にたどり着いた。


話の辻褄を会わせるのに苦労したが、あの場でうろついていてもしかたないしな。


扉を開けると、家の中は暗い。留守か、仕事か?

よくわからないが、ここが俺の家なのは間違いない筈だ。


玄関の電気をつけて、リビングへいく。扉を開くと異臭がして、電気をつけると男女が十字を描くように倒れていて、二人には剣が刺さっていた。


つい先程やられたばかりだっいうほどに傷口から溢れている真っ赤な鮮血。


そこには白のワンピースを着た銀髪の少女。

視線が引き合うとその場がぼやけ、彼女は姿を消した。


この状態は俺の両親が死んだということだが、記憶のない俺にはわからない。

人が死んでいて驚いた。というくらいの感覚だ。


ひとまず俺は二人に刺さっている剣を引き抜く。

あの少女の服に血はついていなかったようだ。

しかし家にいたということは犯人を見ていたに違いないので探すことにした。


警察に通報すると俺が事情聴取されるだろうが、記憶をなくしているのと、時間が惜しいことから止めた。


二人にはもう息がなく、そのままにするのもあれな為、遺体に布をかけておこう。


俺は犯人の手がかりとなる剣を持ち出すため血を風呂場で洗って、鞘の代わりになりそうなものを探した。

すると鞘がリビングに投げ捨てられていた。

携帯は使わないだろうし、居場所がバレると色々まずい。

俺は剣だけ持って、帽子をかぶり裏手から夜逃げのように家を出た。


――― 冷静になってみたらやはり通報すべきだったと後悔したが、証拠品として警察に剣を持っていかれたら困る。


表を歩くと歩道されるため、暗い路地裏をひっそり歩く。

まるで異能バトルアニメの主人公になった気分だ。


夕飯も食べていないのにあまり空腹にならない。この剣からは変な気が漂っているする。


オカルトを馬鹿にしていた俺がそんな不思議な現象を見て、不良を恐れていたのにいかにもな場所を深夜徘徊。


廃ビル―――このあたりで誰と話していたんだっけか。


俺はこの先どうしたらいいんだ。

なんで記憶にない人間が殺されてその仇をとろうとしている?


わけがわからなくなった。やはり家に帰って警察に事情を話すべきか――――


「ねぇ君!」


背の高い白のロングコートのピンク髪の女性が声をかけてきた。周りに人はいないし俺だよなどうみても。


「あー俺を呼んだんですよね」

「うん君だよ」


腕を組みながら頷く。


「何か用ですか?」

「君、異能力者だろう」


なぜ、いきなりそんなことを言われたのか頭が真っ白になった。


「なんで……」

「あはは、面白いこというね。背中に背負ったモノから臭うんだよ」


こいつ、まさか噂の――――


「言っておくけど、ボクは異能力者ではないよ?」


―――先手をとられて黙るしかなかった。

まるで心を呼んだように俺が聞こうとしたことを完封されていく。


「君、ライラスに入らない?」

「……たしか大組織の傘下だっていうあれですか?」


どこかで聞いた何かの社名だ。その人物の名を思い出せない。


「君はいまヤバイ事に首を突っ込んでいるわけだろ?」


組織に入るなら、力をかそうという。


「……実は両親が死んでて犯人さがしに家を飛び出したら警察に通報してなかったんです」


長いものには巻かれろ。 というわけで組織の本部に連れてこられた。


「改めて、ボクはフェンセルのトップ。B<バラ>だ歓迎するよA<アル>くん」


「コードネームってやつですか」


―――なんか本格的だ。


「騒ぎが起きる前に君の家の事は揉み消しておいた」

「色々助かります」


「おっ新入りか?」


蝶ネクタイに青いシルクハットの派手な格好の青年が現れた。


「始めまして」

「おお、オレはF<ファイ>だ。よろしくな」

「F~そろそろ始まるよ~」

「これから仕事なんだ悪いな」


どうやら彼は見たまんまマジシャンでアシスタントが呼びにきた。


「副業っていいんですか?」

「うん、君は顔変えないと無理だろうけど」


ですよね。


組織に勧誘され、挨拶まわりがてら内部を案内される。


「というか俺はこれから何をしたらいいんですか?」

「ただそこにいるだけでいいよ」


「え」

「冗談はさておき、その背中にあるやつを寄越してくれない?ラボで検査するからさ」


「あ、はい」


俺は竹刀ケースに入れていた剣をバラに渡した。


「へーやっぱ剣か」


あまり驚いている様子はないが、どうやら俺のもっていたものが何なのか明確に判断できていなかったようだ。


まあ物騒なものだし、俺が持っててもしかたない。ラボの人に任せれば犯人を特定できるだろう。


「ボクが言うのもなんだけど、君ホイホイ人についてきちゃダメじゃね?長生きできないよ?」

「あーですよね」


ぶっちゃけここがライラスだろうとうさんくさい偽組織だろうとあまり関係ない。

もし犯人で、俺も殺す気なら路地でサクッとやられてただろうし。


「今日はもう遅いし、仕事の話は明日、他の皆集めてするからさ。部屋で休むといいよ」

「あ、はい」


バラが部屋を出ようとドアノブに手をかけた瞬間。

部屋の窓ガラスがすべて粉々に砕ける。


「アル!デスクの下へ潜れ!!」


バラはテーブルでガラスを防ぐ。


「あれれ~どこかな~」


「ちっ……もう嗅ぎ付けてきたか」


バトル物お馴染みのあれか、機密を狙う敵がくるのか!?


素早く動くなにかが窓からここへ、軽々と上がってきた。


「オーイ~バラ~かわいい幼馴染みが長期出張から帰還しましたよ~」


なんだライラスの人か――――――って窓破壊すんなし。


「……よんでますけど」


デスクの下でこっそり話す。


「君が出ていないっていって」

「いや、もう遅いです」


デスクの下を覗く、おぞましい眼<まなこ>が二つ。


「うわああああああ」


デスクを持ち上げ、投げすてながら逃げるバラ。


「おいおいなんの騒ぎだ~」


帰還したファイとチャイナドレスのアシスタントがやってきた。


「あら、β<ベティ>じゃない久しぶりね」

「おひさ、D<ディラ>ちゃん~」

「こいつは幼馴染みというか昔から腐れ縁でまあ、ござる丸の天狗姫みたいなどこまでもしつこく追いかけてくるストーカー」

「ストーカーとは失礼な!」

「まあまあ、二人ともアイツも困ってるところだ落ち着けよ」


「うん、あーっと……私は聞いての通り海外で出張して、今帰還したわけなんだけど君誰?」


「今日ここに入ることになった秋和です」

「新入りかー組織についてはどこまで聞いた?」


「とりあえず中立組織というくらいでよくわかってません」

「まあ、かくかくしかじかで犯罪もみ消した」

「……ついに前科モンが出ちゃったか」

「いやいや、俺はやってませんから!」


「奴等が動き出したみたいだ」

「ふーんまあ積もる話はそのくらいにして……」


積もっていないがベティは急にファイ達のいるほうへ銃を発砲した。

弾丸は二人の間をすり抜け、背後にいた誰かを撃ち抜く。


「こいつらを始末するの手伝って」

「やれやれ尾行はしっかり撒けっての!」




武器を持った男たちは銃を乱射してくる。ファイは背後に周りステッキで気絶させ、ディラが気絶した野郎を持ち上げ窓から投げ捨てた。


「くらえええ!!」

「あぶないしゃがんで!」

「うおっ」


背後から鈍器を持った男が迫っていた。咄嗟に避けられたが危なかった。


向こうで平然と椅子に腰かけているバラの眼前にナイフが飛ぶ。


「バラさん!!」

「やれやれ……か弱いレディにそんな物騒なもの向けるなんて」


バラはニヤリと微笑むと、ひとさし指をナイフの先端へ。


「【バッドブラッド〈我が血を流さず〉】」




指先に触れるギリギリでナイフが逆回転し、敵の右肩へつき刺さった。


それを恐れおののいた残党は撤退しようとしているが、残らずベータが始末してしまった。


「……片しとくね」


ディラが倒れている男達の頭に光線を浴びせ、窓から投げ捨てた。


「……殺したんですか?」

「いいや、半殺しにして記憶を消して下のトラックで敵方に送り返してあげるだけだよ」


「そっそうなんですか」


―――やっぱここただの物流会社じゃなかった。


「どうした今さら組織抜けるなんて言わねーよな?」


ファイがステッキをくるくると回転させながらこちらを見ている。


「いえ俺はとにかく目的があるんで……」

「ふーん?」



―――だがあまりにすべてが出来すぎている。

記憶をなくした事も、両親が殺害されていたことも。


それでもいい。行動したかった。あの少女を探せと、俺ではない別の意思がつげていた。


これは純粋な探究心、あるいは―――


「ドクターB、結果が出ました」


研究員が剣をガラスケースのようなものに入れて持ってやってきた。


「で、なにかわかった?」

「はい、まずこの剣の成分は自然界には存在しません。そして形状は実用には不向きで、見映えを重視した物となっています」


実物があるのに図をモニターで添付した。


「このように持ち手の部分にイバラのようなトゲを模した装飾があり握りにくいため、おそらく手で触れる際には刃と持ち手の繋ぎ目から延びる輪を持つ必要があります」


たしかに拾うときトゲのようなものがあった気もしたが慌てていてあまり考えていなかった。


「まあどんな形状にせよ異能者なら手で持たずに浮かせて使えるだろうね」




犯人は武器を浮遊できる異能力者、だからあの場には少女だけがいたということか―――――

だがそれなら少女が犯人だとしてもおかしくはないな。


あの少女、ただの一般人なわけがない。

なんらかの組織に入っているのだろうか。


「あのすいません」

「なんだい?」


「俺新人なんで組織とか派閥について知っておきたいいんですけど」

「それなら一般書室に職員用に資料があるから見ていいよ」


ということでさっそくみにきた。


【ライラス】――貿易会社。主に海外との橋渡しをしている。


【フェンセル】――現状ユートピニア、ディストピアスとの関係は五分。


ライラスはここだな。そういえばバラはライラスに勧誘したくせに、自分はフェンセルの職員だって言ってたな。どういうことか後で聞いてみよう。


【ユートピニア】――ディーツに拠点を置く。海外最大手とされている。


【ディストピアス】――裏社会で知らぬものはいない闇の企業。


こういう敵対組織はドラマだと実は水面下では組んでるとかあるパターンだよなあ。


【ジェノイサ】――近年ユートピニアの傘下となった。しかし以前はディストピアスの傘下と噂されている。


【マイネージョン】――過激派組織。異能力者がいるとも噂されている。


マイネージョン、たしか日本の大頭領を暗殺しようとした組織だ。数年前にニュースになった覚えがある。



リーダーの名は灰十というただの高校生だった少年。事件をひきおこしてからも、消息不明で警察もお手上げだという。



読んでみたが、どれもニュースで取り上げられまくったことだ。

一般向け資料室にはあまり極秘なことは載っていない。


目を通すのはこのくらいにして、皆のところへ向かう。


「おいお前、新入りのクセに俺らに挨拶もなしか?」

「てめーフラフラしたガキのくせにいきなりあらわれて随分バラさんに気に入られてんじゃねえか」


なんかベタなやっかみ、かませ系の奴等すぎて笑いそうになるが、事実なので黙っておく。


「だっせーな、やめろよ」


少年が現れ、二人をにらむ。


「んだガキ……」



「おい馬鹿!よくみろよ……あのバッヂはジェノイサの幹部だぜ……」

「ちっ!」


「……ありがとうございました」

「別に感謝しなくていーよ通行の邪魔だっただけだし」


といって小学生くらいの少年は去った。今時の小学生は堂々としてるんだな。と年よりくさいことを思った。



「……!」

「どうかした?」


ちょうどいいところに目の前にバラさんがいたから、きになっていたことを聞いてみる。



「バラさんは中立フェンセルのトップなのになぜユートピニアの傘下であるライラスにいるんですか?」

「あー近々ディストピアスを倒すためにユートピニアと組もうかな、というわけでまずはライラスの見学みたいな」


もっと渋られるかと思っていたら結構あっさり教えてくれた為、拍子抜けした。


「え、でも、もしもその争いでディストピアスに勝たれるリスクを考えたら中立のままでもいいんじゃないんですか?」


大人社会の派閥争いは無縁の学生の俺にはわからないが、安全な中立のままでいてはだめなのだろうか。


「中立はどちらとも美味しい関係に見えて、孤独だよ。孤高の組織なんてザラにいるし、上にいくにはいつまでも真ん中をフラフラしてらんない」


意外と野心的なんだな。


「それに正義は必ず勝つっていうじゃん?」

「は……はい?」


「まあどこぞの過激組織みたいなのは正義を履き違えているけどね」


どこぞの過激組織とは、マイネージョンのことだろうか。


俺はもう1つ気になっていたことがある。

バラさんは勧誘してきた昨日の晩、自分は異能力者ではないと言った。

しかし、とんできたナイフを指で弾く力を使っていた。


あれはどういうことなんだ。たんにバラさんが嘘をついたのか?

でもさすがに貴女は嘘をつきましたか?なんて聞くのは失礼だよな。

あんまり重要ではなさそうだしもう忘れたことにしよう。


―――そういえば異能力者が使った剣は研究所で安置されるのか?


「例の剣<つるぎ>ってあのまま保管されるんですか?」


いや、持ち主の手がかりになるとかで解剖コースもありそうだな。


「これはまだ予想の段階だけど、あの剣が特殊な材質なことからそれを持っていた者が固有の能力で作ったのだろうね。いわゆる神話にでるような伝説の宝刀の類いではなさそうだし特に重要なものでもないね」


あの剣そんなに価値はないのか。


「剣には価値はないけど、その能力者には会ってみたいね」

「え……!?そいつは物騒な殺人犯なんですよ!?」


「自然界に存在しない貴重な材質、ぜひとっつかまえて解剖してやりたいね」


剣じゃなくてそっちが解剖コース!?

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