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「新聞部が? 新学期なんですからオカルト以外にもネタがあると思うのですが」
怪訝そうな顔でひなたが訊ねる。カレーパンを頬張ると、一瞬で幸せそうな表情に戻っていったが。
「七不思議について調べていた部員に怪我人が出たみたいで」
「夜の学校に忍び込んで暗闇で転んだとかではないですよね?」
「どうなんだろう? その人によると、階段の数を数えていたら、何かに躓いて転落したみたい」
目をキラキラと輝かせて聞き入る深雪と、「落し物では」と冷たい視線を送るひなた。二人の温度差に軽く笑ってしまう。
「はぁ、夜の学校に忍び込んでみたいものですわ」
「え、本当に?」
「ええ、夜の学校……ああ、なんて素敵な響きなの」
恍惚の表情を浮かべる深雪。夜の学校に忍び込みたがる女子って珍しいのではないだろうか。少なくとも私は目的がなければ行こうとも思わないだろう。怪奇現象を信じているわけではないが1人は少し怖い。そうだ、深雪さんならば。
「あの、実は今度夜の学校に忍び込む予定なんですが、一緒に行きますか? 見つかったら一大事だし、安全を保障することはできませんが」
「行きます!」
がばっと両手を掴まれる。輝いた瞳がすぐ近くにあった。
「なっ、駄目です! 私も行くのです!」
深雪の手を無理やり引きはがして、ひなたが手を取る。頬がほんのりと赤い。手も少し熱い気がする。
「わ、わたしは行っちゃ駄目ですか?」
目を左右に泳がせたかと思うと、潤んだ上目遣いで訪ねてくる。なんだこの、構ってほしい猫みたいな表情は。反則でしょ。
そっと手を離し、ひなたの頭の上に片手を乗せる。癖毛だからか、柔らかい。
「モフり加減が絶妙ではないか。わしゃわしゃさせろ」
「わしゃわしゃって何です? ちょ、や、やめてなのですっ!」
問答無用でひなたの頭を撫で繰り回す。そうか、この子は猫に似ていたんだ。
「うー! もうしつこいのです!」
耳まで真っ赤にしてポカポカと桃香を叩いて暴れるひなた。そんな姿も猫みたいで可愛く思えてしまう。猫への愛は《正義》なのだ。
「もう、痛いってば。ひなたも一緒に行こうね」
「べ、別にわたしは非科学的な現象を信じているわけではないのですよ。七不思議なんてただの噂です。そ、そう。それを解明しに行くのです」
「あはは、ありがとう。ひなたが来てくれると心強いよ」
「ま、任せとく、ですよ」




