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前日譚 Case.8 コーラ

こちらは前日譚の追加となります。

前日譚は先輩彼女(サヤカ)後輩彼氏(ユウ)の二人劇で、本編開始前の時間軸になっております。

「コーラ、買って来ましたよ」


 俺はドン、と頼まれた500mlのペットボトルをテーブルに置く。


「うん。いや、それコーラじゃないよね」


「あ、先輩ペプシはコーラじゃないよ派ですか」


 せっかくコンビニ寄って新商品の強烈炭酸版を買って来たというのに。


「実際に商品名が違う以上、それはもう別製品じゃないか」


「そりゃそうですけど、でも言っちゃえばファミチキもLチキも一緒でしょ?」


「おい、キミは今押しちゃいけないスイッチを押したぞ。はやく謝るんだ」


「一体誰にですか。多少味が違ったところで結局どっちもフライドチキンに違いはないでしょう」


 ファミチキください。あっはいLチキでしたそれください。赤っ恥。


「いやぁ、彼らにその理屈は通じないよ。キミはきのことたけのこの仁義無き戦いを経ても何も学ばなかったのかい」


「そんな過去のことは忘れました。もっと言っちゃえば、からあげくんとファミからもどっちもからあげですよね? 俺は詳しいんだ」


「彼らは現在も余裕で抗争中だからね? ファミからってタイミングの問題か知らないけど、結構置いてないとこない? まだまだ普及したって言えない気がする」


「からあげくんはまず間違いなくありますよね。やはり本家は地力が違った」


 個人的にはファミからの方が、唐揚げを食べてるーって気はする。


「わたしこないだホイミ味買っちゃったよ。ガーリックの匂いが凄かった」


「あれは自宅推奨商品でしたね。開けると匂いが凄いの。匂いテロしてた奴居ましたよ」


 食堂に持ち込んだ奴がこんな匂いのするもの買ってくるんじゃねーよって囲まれてボコられてたな。


 その後釣られて食堂の唐揚げの売上が伸びたかどうかは知らない。


「味も結構いけてたよ。レギュラーメニューになってもいいんじゃないかなあれ」


「俺は食べそびれちゃったんですよね。まだキャンペーンやってんのかな」


「さあどうだろう。期間限定って言ってたから、もう流石にないんじゃない?」


「今度行った時にあったら買ってみよう。なんかレジでレベルアップするらしいじゃないですか」


「そうそう。わたしそれ知らなくて、鳴った時ビクッとしちゃったよ。販売初日だったから後ろのお客さんもおっ? みたいな顔してんの。焦ったわー」


 キョドってる先輩超見たかった。きっとかわいい。


「誰でも一度は聞いたことある音ですしね。たまに着信音にしてる人とか居ますよ」


「なにそれ。メール来るたびにレベル上がるの? SNSの通知音だと鳴りまくって最終幻想並にレベル上がってそう」


「嫌いなやつからのメールは呪われた音にしちゃったりしてね。で、本人の近くで鳴っちゃってすっげぇ焦るの」


 でろれろれろれろりん。毎回聞いてたらほんとに嫌になりそうだな。


「うわぁ。その場面想像するだけで冷や汗モノなんだけど。なんでそんな馬鹿なことをするんだ」


「ノリでしようね。きっと。ノッちゃったんでしょう」


「ノッちゃったんなら仕方ないね。あきらめも付くよね」


 深夜のテンションはこわい。


「その点俺の着信音は無難ですよ。穏やかなメロディで意識に引っかかりません」


「キミの着信音は確か電車の到着音だっけ。でも駅のホームでメール着信したらそれ紛らわしくない?」


 ちなみに「せせらぎ」と「春」である。


「大丈夫。本物の到着音もいつもだいたいどっかで鳴ってますから。空耳か、他のホームの到着音だろうってことで特に気にされませんよ」


「それなんだかズルいなぁ。もっとこう、緊急地震速報の音とかにして周りの人に超睨まれるとかしようよ」


「いやそれシャレになってないやつですからね。地震速報アプリに使う以外で例の音を流すのはやめましょうね」


 外でテスト発報して周りに一斉に凝視されてるバカとか、すげー気まずそうにしてるし。


「キミの地震速報音はヴィッヴィッヴィ!って方? ピロンピロンピロンピロン!って方?」


「半国営放送の緊急地震速報の方ですね。高音なんでこっちの方が気づきやすいかなと」


 どっちかって言うとキャリア提供音の方が聞いててなんか怖いんだよね。不安になる。


「わたしのはキミが設定したから、おんなじやつだよね?」


「です。同じ音源ファイル使ってますからね。一応通知レベルを上げてあるんで、鳴ったことはないでしょう?」


「ないね。これ震度いくつから鳴るの?」


「近距離震度5から鳴るようにしてあります。それ以下はまぁ要らないかなと」


「ふーん。まぁ鳴らないことを祈るよ」


 鳴った時はすみやかに安全を確保できる場所へ逃げましょう。


「そう言う先輩の着信音は何ですか。デフォルトですよねそれ」


「うん。なんにも触ってないね」


「なんで?」


「いやなんでって言われても」


「普通、変えるでしょう?」


「ええー。めんどくさい」


「先輩。その何でもめんどくさいで片付けるのやめましょう」


「キミも割とよくめんどくさいって言ってるけど」


「今言ってるのは先輩ですから。俺のことはいいんです」


「なにその男らしすぎる居直り。棚上げっぷりが半端ないですよ?」


 先に言った者勝ちの理論です。諦めてください。


「ほら、スマホ出してくださいスマホ。なんか素敵な奴に変えてあげますよ」


「ええー。いいよ別に。あんまピコピコ鳴るとうるさいし」


「ピコピコってファミコンですか。ああ、最終幻想の音源使います? 戦闘勝利音とかいいですよ」


 ちゃらららっちゃっちゃっちゃちゃっちゃらー。


「それさっきのレベルアップ音となにが違うの。イヤだよそんな恥ずかしいやつ」


 注目度抜群ですよきっと。


「じゃあ配管工の残機が増える音とか。あっコイン拾った時の音とかいいですよ。ゲームっぽくないし」


 ぴろりろりん。ちゃりーん。


「いや思いっきりゲーム音だからね? メール来るたびにちゃりんちゃりん鳴らしてたらお金溜まりそうだけども」


「んー。じゃあここはいっそ発想を大きく転換して動物の鳴き声シリーズで攻めましょう」


 メールが来るたびに動物音。逆にないわー。


「なんでメール音でいちいち攻めなくちゃいけないのさ。どこを攻めるんだよ」


「まずは定番こけっこっこー!」


「うるさい」


「お次は馬でひひひーん!」


「なにごとだよ」


「それじゃヤギでめえええええええ!」


「うーんメールには近づいたかな」


「ここはライオンでがおー!」


「そろそろ意味わかんなくなってきたぞ」


「じゃあアルパカはどうだふぅぅ~ん……」


「何その物凄く切なげな鳴き声。アルパカってそんな鳴き声なの?」


 以上、なんとなく動物ものまねレパートリーがやりたかっただけでした。


「アルパカそもそもあんま鳴かないそうです」


「へー。よく知ってるねぇ」


「アルパカ、好きですよ俺。かわいいじゃないですか」


 つべとか動画一時期めっちゃ見たし。


「あの長い首がいいの? かわいい……のかなあれ」


「長い首もいいですし、こっちみんなって表情もたまんないですね。ほら、間違いなくかわいい」


 アルパカかわいい。


「うーん。一度キミとはかわいいの定義を確認し合ったほうがいいのかもしれない」


「そんなに変なこと言ってますかね? 愛嬌があってかわいいと思いますけど。ほら、これとかどうです」


 五頭ぐらいが固まって顔をこちらに向けている、いわゆるアルパカの写真をスマホの画面に表示する。


「だからこっちみんな。問題はね、キミがわたしにかわいいって言ってくれてるのはどういうかわいいなのかってことなんだよ」


「あー、そう言う心配ですか。大丈夫ですよ人間に関しては普通に可愛い子が好きですから。ほら、先輩のお友達のユキコさんとか可愛いですよね」


 清楚系美人っていうのかな。おっぱいも大きい。


「あ?」


「おっと先輩スマイルスマイル。その顔は流石に可愛くないですからね」


 大丈夫。先輩の魅力はいつも元気かわいいとこですから。方向性が全く違う。


「くっ……」


 そんな悔しそうな顔してるけど、先輩だって十分かわいいですって。


「いやまぁユキコさん普通に彼氏居るじゃないですか。そう言う対象じゃないですって」


 泥沼とかホント勘弁。なにもいいことないよ。


「キミがそう思ってても、向こうがそうとも限らないって可能性もあることをキミは忘れないほうがいいよ」


 またまた、ご冗談を。俺はそんなにモテたことはない。


「え、ユキコさんってそう言う人なんです?」


「ユキコは違うけどね。そういうことは多分しないと思うよ。黒い噂とか全く無いし」


「ですよね。そう言う感じ全然なかったからちょっと焦った。てか今更俺が先輩以外の人になびくとか本気で思ってるんですか?」


「いいえ? これっぽっちも」


 先輩渾身のドヤ顔である。かわいい。


「ならいいじゃないですか。ここで不安がられたらマジ説教でしたけど。一安心ですね?」


「だとしてもだよ。驕る平家は久しからずって言うでしょ」


 何故ここで平家物語。シブぅい!


「素晴らしい心がけだと思います。俺も見習わないといけませんね」


 まぁ何見習ったらいいのかよくわかんないけど。


「でしょ。ほら、今日はいつもと違う感じで迫ってきてくれてもいいんだよ?」


 普段やり慣れてない流し目とか。先輩やる気満々である。


「そういうのは言われてやるものじゃないでしょう」


 しかし俺くんの華麗なスルー。


「ちぇ。じゃあ今日は普段あんましないベタベタモードを試してみようか」


「ああ、あの先輩がすっごく寂しくなった時にやるやつですね」


 ひっついて離れないから実はトイレにいくのが地味に大変という。


「おいィ? 羞恥プレイは頼んでないんだが?」


「これも、普段はしない奴の一つですから」


 とりあえず、先輩を後ろからやさしく抱きしめるところからはじめよう。

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